業務日誌(2002年8月その1)

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8月8日 クレサラ相談と生活再建(2)

 一昨日の続きです。

 一応生活費を捻出できるだけの収入があっても、債務整理をしただけでは生活が再建できるとは思えない方もけっこういます。

 そもそもサラ金に手を出してしまうというのは、病気や失業といった特筆すべき事情のある方を除いては、やはり「収入の範囲内で生活する」能力の欠如している部分があるといわざるを得ません。

 まあ、人間というものは、お金が手元にあれば使ってしまう性であるともいえますので、一概にそのような方を責める気もしません。そのような人間の性につけこむサラ金の商法というものもいかがなものかと考えます。

 とはいえ、債務整理をするまでに追い込まれてしまったからには、少なくとも貸し主との約束を破ることは事実であり、何らかの形で借金を全部または一部踏み倒すことになるのは事実です。

 不義理をすることになるのは事実なのですから、自らの金銭管理能力が不十分だったことについては自覚して、今後二度とそのような失敗がないように更生してもらわねばなりません。

 ところがそのような自覚が不十分である方が結構多いものです。

 例えば、破産申立の際には、申立書添付の陳述書には「どうして借金をすることになり、借金はどのような用途に使用したのか、返せなくなったのはなぜか」について、書くことになっています。

 ところが、この陳述書を作成するために、「最初の借金はなぜするはめになったのですか」「借金は実際何に使ったのですか」と事情を聴取しても、「生活費のためです」と答えるのみで、具体的な説明が一切できない方がいます。。

 厳密にいうと、「生活費」という出費はありません。

 光熱費や食費といった出費の総称が「生活費」であるわけで、生活費の何に使ったのかと聞かれれば、具体的な費目があるはずでしょう。

 さらにいえば、ある時点まで、収入の範囲内で生活ができていたのに、あるとき突然借金をしているからには、特別な出費があったか、収入が何らかの事情で減少したかといった事情があるはずです。

 こうした事情が何一つ説明できないようでは、自らがなぜ債務整理する羽目になったのかについて、自分自身で原因が分析できていないことになります。原因を分析できていないのでは、また同じ失敗を繰り返すことになりかねないのです。



8月6日 クレサラ相談と生活再建

 最近、扶助協会の相談や四谷・神田のクレジット・サラ金相談で「いったいどうやって生活するの?」と言いたくなるようなケースに遭遇することが増えています。

 借金で首が回らないのは別に驚きません。それが原因で法律相談に来られているわけですから。

 問題は、たとえ借金の支払いがゼロになったとしても、そもそも生活費を満たすだけの収入がない状態の方がいることです。

 弁護士が引き受けられるのは、債権者の取り立てに対する矢面に立って依頼者の生活の平穏を守ることです。その間に依頼者には生活を再建してもらい、債務整理を行っていくということになります。

 弁護士が債権者の防波堤になっていても、その間に依頼者の生活が成り立つ見込みがないのであれば、残念ながら弁護士が問題を解決することはできませんから、依頼を引き受けられないことになってしまいます。

 この場合、私はとにもかくにも相談者に対し、持病や高齢を理由に生活保護を申請してもらうことをアドバイスし、生活保護のめどをたてるように強く指導します(持病もなく、高齢でもない方は何とかして仕事についてもらう以外にないですが)。生活保護のめどが立たない限り、受任はしないと言わざるを得ません。

 なぜなら、生活再建の可能性がない状態で安易に引き受けても、結局は依頼者は収入がないわけですから、債務整理を始めながらさらに借財を作ったり、あるいは最悪の場合弁護士に依頼しておきながら夜逃げしてしまったりしかねないからです(これでは私も責任を全うできません)。



8月2日 落雷・停電・立ち往生

 いやー、本日の都内の雷雨はすごかったですね。

 実は私は午後5時に町田で境界紛争事件の相手方との現場打ち合わせの約束が入っており、3時半過ぎの小田急線新宿発の急行列車に乗っていきました。

 乗った時点で既に雷が鳴り始めており、空はまるで夕暮れのような暗さでしたが、発車してから状況はますますひどくなり、落雷と豪雨の轟音でおちおち寝てもいられませんでした。

 そして、成城学園駅の直前。いきなり車内の電灯が消え、エアコンも止まり、列車が止まってしまいました。何でも変電所に落雷し、停電したとか。

 いったんは復旧して成城学園駅までたどり着いたのですが、そこで再び停電。今度はさっぱり復旧しません。何でも2カ所の変電所がやられたとか。

 「バッテリーが上がってしまうから」と列車のドアは閉められ、エアコンは止まっており、窓を開けても車内はどんどん蒸し暑くなっていきます。こりゃ困った。待ち合わせ時間に到底間に合わないぞ。

 依頼者に電話で連絡を取ろうとした矢先、事務所から電話が入りました。何でも、相手方代理人も同様に電車が止まって立ち往生しているとのこと。

 結局30分以上立ってからようやく復旧し、現地には30分遅れで到着しました。



8月1日 「家具リース」業者にご注意

大阪の「家具リース」業者が出資法・貸金業法違反で摘発されたというニュースがしばらく前にありました。

 この「家具リース」業者というのは、ヤミ金融の中でも相当コアな業態ですので普通の方はあまり知らないかも知れませんが、堂々と新聞の折り込みチラシに広告を入れてきたりもするそうです。

 こうした業者の手口とは、多重債務で首が回らなくなっている債務者の自宅に行き、家財道具一切を10万円なりで買い取る「売買契約」を結びます。そして、その業者がその家財道具一式を債務者にリースする旨の「リース契約」を結ぶ、というのが多い形態のようです。

 実態は単なる10万円の貸金と変わりません。今時家財道具にはほとんど価値はありませんが、ある日突然家財道具を持って行かれることへの恐怖感から債務者は「リース料」(実際には貸し金に対する利息)を支払い続けます。この「リース料」が明らかに暴利です。また、リース契約という形態を取っていることから、いつまで「リース料」を払っても家財道具は永遠に帰ってこないということになりかねません(そのように主張されることもあります)。

 具体的な事例が裁判にもなっており、裁判所は明快に「単なる貸金(金銭消費貸借)であり、利息制限法違反の契約」と判断しています。

大阪地方裁判所平成13年9月27日判決
 いずれの場合においても,被告が原告から家財道具を買い取り,その買い取った家財道具をリースするという,リースバック契約の外見が認められ,被告もリースバックである旨供述する。しかし,リース契約においては,リース料を支払終わっても原則として物件所有権がユーザーに移転することはなく,原告と被告との間のリース契約書にも所有権が移転する旨の特約はないところ,上記ア(ウ)の各契約書の目的物は,いずれも上記ア(イ)の各契約書の目的物と同一であることに照らすと,上記ア(イ)のリース契約書に基づく「リース代金」支払後に家財道具の所有権は原告に移転したと認められ,リース契約とは異なる取扱がなされている。また,同一の家財道具であるにもかかわらず,2回目の売買代金及びリース料が1回目より高額であり,家財道具の客観的価値をきちんと査定して売買やリースがなされたとは到底考えられない。したがって,本件各契約は,リース契約あるいはリースバック契約の形式を取ってはいるが,その実質は,金銭消費貸借契約であるというべきである。

 こうした家具リース業者は、最近大阪から全国的に広がりつつあるようです。

 ちなみにこれが問題になる少し前、私のところに知り合いから「顧問弁護士になって欲しい」という依頼が来ましたが、話を聞いてみるとまさにこの「家具リース」の手伝いをしているとのことでした。私は彼に「明らかに貸金業法違反の行為だから足を洗った方がいいよ」と言って丁重にお断りしましたが、今頃どうなっているのやら。