業務日誌(2005年6月その1)

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6月13日 フィッシングサイトと著作権法違反

 Yahoo!JAPANのサイトを真似て作ったフィッシングサイトの開設者が逮捕されたとのことですが、疑問なのは、なぜ「著作権法違反」容疑なのかと言う点。

 第一に、そもそもフィッシングサイトの問題点は、詐欺的に個人情報を取得する点でしょう。しかし、現在の刑法では「情報」の窃取あるいは詐取を罰する法律がありません。個人情報保護法等の制定時に、どうしてこのような犯罪を罰する規定を加えていないのか、立法の不備に疑問が生ずるところです。

 従って、別な犯罪にかこつけて何とか立件せざるを得ないという捜査機関の苦渋は理解できますが、うーん、それにしても、「著作権」ですかね?

 Yahoo!のロゴで著作権というのは、ちょっと極端のような気もしますし、トップページのデザインなら、かのlivedoorもそっくりさんです。個人的感覚としては、不正競争防止法違反あたりの方がまだしっくりくるんですが………




6月11日 見学旅行

 昨日から司法修習生の弁護修習の見学旅行につきあって一泊してきました。

 見学旅行先は、機会によってまちまちで、とってつけたような見学先になってしまうこともあるのですが、今回はねむの木学園に見学に行きました。

 有名な肢体不自由児が中心に生活する福祉・教育施設ですが、ダンスのレッスンの現場をみせてもらったりしまして、短い時間でしたが結構私でも感じる部分がありましたので、見学先としてはかなり意義のあるところだったと思います。

 夜は焼津のホテルに泊まり、毎度のことながら深夜まで修習生と酒を酌み交わしながら語り合いました。こういう機会がないと、本音の話はできません。法科大学院を前提とする新司法修習では、実務修習期間が短くなり、こうした機会もなくなってしまうようですが、淋しいものです。




6月9日 会社更生法と過払い債権

 【更生会社への過払い利息請求認めず:最高裁判決

 会社更生法適用を受けたライフに対して過払い利息の返還請求をすると、決まって会社更生法適用前の部分については拒否してきます。それがとうとう最高裁まで争われて判決が出ましたが………まあ、会社更生法の趣旨からは、債権届出期間内に届け出られなかった以上駄目だという単純な結論に帰着するんでしょうね。奇しくも裁判長は、倒産事件の権威だった才口さんです。

 ただ、過払い債権という奴は、債務整理を弁護士に委任して、弁護士が取引経過を開示させて利息制限法引き直し計算をしない限り、顕在化しません。こうした顕在化しない債権について、実際に届出を期待することは不可能だという点が考慮されなかったのは残念です。




6月5日 私事雑感

 他人のトラブルの解決を生業とする法律家は、他者の痛みに共感できる能力が必要です。

 ………と言ってみても、法律家も生身の人間ですから、他者と全ての感覚を共有できるなどというのは、実際には不可能だろうと思います。

 たとえば、交通事故でよくある後遺障害の「むち打ち」。私は偶然、5年前に自分が追突されて、けっこう1年ほど症状を引きずり、最近でもやはり疲れやすいとかいう目に見えない後遺症は残っていますから、そのような目に遭っていない人よりは、むち打ちになった人の得体の知れない苦しさは共感できるつもりです(最近はこれが髄液の消失によるものという仮説もあるようですね)。

 思い切り私事ですが、長男が生まれるまでは、やはり親になった者の気持ちはわかったつもりになっているようで、実際には芯からはわかっていなかったような気もしています。育児というものが、親の膨大な時間を無償で提供することでようやく成り立っていることは、自分が当事者になるまではわかりませんでした。「親バカ」という言葉がありますが、長男が生まれるまでは、親バカにだけはなるまいと思っていたものの、実際には、親バカにでもなっていなければ、育児なんぞ到底続けられない感じで、自分の子供を無条件にかわいいと思える人間の本能というものはやはりすごいと思わざるを得ません。

 と言っても、すべての立場を経験することはやはり不可能ですから、法律家としては、後は想像力を鍛えるべきか、それとも知らないことは知らないと開き直って人と接していくべきか、思案するこのごろです。