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(第1回〜第16回)
作:UEHA(no.3)
☆☆☆☆☆☆☆
「ナイスショット!」
3人の日本人はできたばかりのゴルフコースにいた。デップリと太ったおじさんが、今振り回したドライバーをキャディーさんに渡す。
「次は外務大臣だろ?」
「はい、今の総理大臣のショットを参考にして、頑張ります」
ほっそりしたおじさんがクラブを選ぶ。
「しかし、こうして大空の下で運動するというのは、気持ちの良いものですな」
もう一人の男は意味もなく汗をかいている。
「これも自衛隊の宿舎予定地にゴルフコースを計画した総理大臣のおかげです」
ゴルフボールをセットした外務大臣が言う。
「しかし、自衛隊の方はどうしますか? なかなか人が集まらないようですが……」
「内務大臣は言うことがきびしいな」
総理大臣は外務大臣の素振りを見ながら言った。
「そういえばこの前、アメリカのマッサカサマが何か言ってきていましたな」
外務大臣は素振りを止めて総理大臣の方を見た。
「しかし、まあ何とかなるでしょう」
「そうそう、外務大臣の言う通り」
総理大臣は面倒臭そうな顔をして内務大臣の顔を見た。
「まあ、取りあえずはせっかく、こんな景色のいい六甲山にゴルフコースを作ったのだから、楽しみましょうよ」
「そうですな。せっかく来たんですから」
内務大臣もまんざらでもないと言う顔をする。
「さあ、次は私の番ですよ!」
と、前のホールでチップインバーディーをとった外務大臣が言う。
「しかしなんだな、君は外務大臣という職についているせいか、ゴルフが上手いな」
外務大臣はドライバーを握りながら総理大臣の方を向く。
「いえいえ、総理ほどじゃありませんよ」
「私もゴルフについては研究中ですが、外務大臣ほどになるには、後十年はかかりそうです」
「まあ、内務大臣も頑張りたまえ」
☆☆☆☆☆☆☆
「シーザー様、シーザー様、大変でございます」
「どうした、兵士A」
「どうしたも、こうしたも、ありません」
「何があったのじゃ、兵士A」
「今、東方遠征から帰ってきた兵士の報告によりますと、はるか東方の世界の端の半島にて、国が起こった、とのことでございます」
「はるか東方というと、カンという国のことではないのか、兵士A」
「いえ、私もそう思いまして、その兵士に問いただしたところ、カンという国よりもさらに東、とのことでございます」
「ほー。で、その国の名は何というのじゃ、兵士A」
「コックリ、と申すようでございます」
「なるほどな。東といえば太陽の出てくるところ。我々の求める聖地かもしれん。よし、行ってみるか、兵士A」
「えっ、私が、ですか。……それよりも、ここに東方遠征のお土産がございます。ご覧になってはいかがでしょうか」
「うむ、そっちの方がおもしろそうじゃな。よし、それを持ってこい、兵士A」
「は、これでございます」
「……これは何じゃ、兵士A」
「はい、私も詳しくは存じませんが、タケというもの、だそうでございます」
「しかし、こんなにいっぱいあるが、何に使うのじゃ、兵士A」
「はい、これはどうやら東の国、つまりカンでいうところの紙、とのことでございます」
「とすると、これは本かノートのようなもの、ということになるな。……確かによく見れば、何か黒いインクで書いてあるな。……このミミズがぬたくったような黒線がカンの字か、兵士A」
「はい、そのようでございます」
「で、この本には何が書いてあるのじゃ、兵士A」
「持ち帰った兵士の話によりますと、このタケというものにはシバ=センというものが記した『四季』、という書物の写しが書いてあり、『四季』とはカンの歴史書のことだそうで……」
「カンでは歴史書に季節を意味する名前をつけるのか。……まあよい。すると、このタケの山にはカンの歴史が書いてあるというのか、兵士A」
「はい、そのようでございます」
「で、お前はこのけったいな字を読めるのか、兵士A」
「……いえ、まったく……」
「ではこれを誰が読むのだ、兵士A」
「……誰も読めないようでございます」
「では、わしは読めないではないか、兵士A」
「…………はい……」
☆☆☆☆☆☆☆
アメリカでは、リンカーンが演説をしていた。
「私が、あの有名なアブラハム=リンカーンである。皆のもの、よく聞け。これから、後に有名になる演説をする。それは、お前らにとって、とても好都合なものだ」
寂れた南部の田舎町で、約十人の観客と、五十七人のさくらが騒ぐ。夕暮れ時、寂しい風が砂を巻き上げる。
「アメリカでは、長年、イギリスによる支配制政治が行われてきた。これによって、我々アメリカ人は重い税金などに苦しめられてきた」
「そうだ、そうだ」
「なぜ、我々はイギリスに苦しめられてきたのか。そう、我々は政治を持っていないからだ。だから、我々は政治を造ろうではないか」
「おおーーー」
「我々は持つのだ。人民の人民による人民のための人民によって造られる人民だけの人民を中心とした人民が輝く人民を思いやれるような人民の信頼を得らるる人民が育つような人民が頑張る人民が一杯いる人民の人民による人民のための政治を持つのだ」
リンカーンは机を叩く。ドンという音が響き渡る。
「かっこいい」
観客の一人であった少年は、たまたま風景画の写生に来ていただけだったのだが、そう思い、僕が政治を造ろうと考えるのだった。
その少年の名はアドルフ=ヒットラー、その人であった。
☆☆☆☆☆☆☆
マリー=アントワネットは朝の会議を開き、パリの民衆の声を聞いていた。
「わしら、パリ市民は重い税金のため、食べるものが買えず困っています。どうにかしてください」
ヴェルサイユ宮殿の一室は、豪華絢爛に着飾った1人の女性と、それとは対照的に何年も着古したカビ臭い洋服を着たパリ市民数人、そしてこの宮殿の警護兵が十人ほどでにぎわっていた。
「あら、何も食べるものがないですって。それなら、ケーキを食べればいいじゃない」
「そんな……わしらは毎日食べているパンさえ困っているというのに、ケーキなんて……」
「かわいそうに、ケーキも食べられないなんて……。分かりました。食べ物に困っているパリ市民には、このマリーがケーキを配付します」
パリ市民がどよめき、目の前にいるマリー=アントワネットに感謝し、拝み出した。
「おお、何と慈悲深い王妃だ。フランス王国の誇りだ。ああ、ありがたや、ありがたや」
☆☆☆☆☆☆☆
諸葛亮は外国から来た書物を読んでいた。もちろん原文のままだったが、諸葛亮はすらすらと読んでいた。書物を3冊ほど読み終えると、諸葛亮は大きく伸びをした。
「ふゎーゎーゎーわっ、とととっと……。ふう、危ない、危ない」
眼の疲れからか、思わず涙が出る。と、そこに諸葛亮の召使いである馬謖がやって来た。
「そんなにお泣きになってどうかなさいましたか」
「おお、馬謖か。いや、何でもない。ちょっと伸びをしただけだ」
「そうでございましたか。ならよろしいのですが。 ところで今日の昼食はどうなさいましょうか」
諸葛亮は服の袖で涙を拭いていたが、「昼食」という言葉を聞くと、人差し指を動かし、馬謖の方を向いた。
「そうか、昼食か……ふっふっふっ……よし! 今日の昼食は私が作ることにしよう」
「そっそんな。……そんなことをされたら、私が怒られてしまいます」
「そう言うな、馬謖よ。今、私が読んでいたのは、外国の料理の本なのだ。やはり、そういう本を読んでいると、自分で作ってみたくなるものなのだ。 実を言うとな、私は料理には、ちょっとばかり自信があってな。馬謖の分も作ってやるから 」
「……分かりました。では、ご自由にお作り下さい。しかし、火を扱う場合は本当にお気をつけてくださいね」
「はいはい、分かっておる。案ずるな」
「しかし……」
馬謖はまだ困惑の顔をしている。
「ところで、馬謖よ。料理の材料を買って来て欲しいのだが」
「はい……。何を買ってくれば 」
諸葛亮は机の上の本をパラパラとめくる。
「ええっと、これとこれとこれと 」
そして、机の端の方にあった小さな半紙に書き出す。
「聞いたことのない材料ばかりですね」
馬謖は、そう言いながら半紙を受け取ると、ざっと買ってくるものを確認した。
「亮先生、このパン粉というのはどういうものでしょうか」
「分からぬ。確か近くの街に、外国の偉い坊さんが来ているはずだ。そいつに聞いてみてくれ」
「そういえば……。はい、分かりました」
「では、急いで行ってきてくれよ。昼食に間に合わなくなるからな」
「はい。では、できるだけ早く」
そう言うと、馬謖は走り去っていった。諸葛亮はそれを見ると、安心したようで、箪笥の中からエプロンを探し始めていた。
☆☆☆☆☆☆☆
日本の内閣は騒然としていた。アメリカのマッサカサマ元帥が、シベリアを攻め込むための軍隊はできたかと、わざわざ日本にやって来たのだ。
「どういたしましょう……」
とは、外務大臣の弁。
「うーむ」
内閣総理大臣は考え込んでいる。
考え込むのを当たり前である。未だ、自衛隊は12人しか集まっていない。
「こういうのは、どうでしょう」
内務大臣が口を開く。
「何か良い案があるのか」
内閣総理大臣が身を乗り出す。
「はい……。日本に再び徴兵制をひくのです」
「うーむ、徴兵制か。徴兵制をひくと、また野党から文句がくるんじゃないか……」
「はい。そうかも知れませんが、その辺はほら、聖徳太子を少し包めば……」
「そうだな。他に良い案が思い付かん。よし、そうしよう。早速、大蔵大臣に連絡して、聖徳太子を用意させよう」
「まあまあ、そう慌てなくても、取りあえず、総理大臣、第1打を」
外務大臣がゴルフボールをセットする。
「うむ、そうだな。せっかく、自衛隊隊員用宿舎予定地でゴルフが楽しめるのだから、楽しめるうちに楽しんでおくか」
「はい、そうですよ。前のホールで見せたような、すばらしいショットをもう一度打って下さいよ」
内閣総理大臣はドライバーを不格好にぶんぶん振り回し、練習すると、華麗とはいいがたい第一打を打った。
☆☆☆☆☆☆☆
「なるほどな。カンという国はこういう国なのか。なあ、兵士A」
「は? あの……シーザー様この文字が読めるので……」
「あたりまえじゃ。このシーザー様ともなれば異国の文字ぐらい簡単なものだ。何だ、お前は読めぬのか、兵士A」
「はぁ。あの……シーザー様、先程、この文字は全く読めないと……」
「……さっきはさっき、今は今じゃ。なあ、兵士A」
「はぁ……」
「何だ、何か文句があるのか、兵士A」
「いえいえ、めっそうもございません」
「うむ、ならよろしい。 よし、直ちに参謀を集めよ。作戦会議じゃ、兵士A」
「えっ、作戦会議とは……」
「そうだ。カンという国に攻め込むぞ、兵士A」
「しかし、兵士達は東方遠征から帰ってきたばかりで、まだ疲れております。それなのに、また戦争とは……」
「がたがた申すな。さっさと参謀を集めよ、兵士A」
「はあ、しかし……」
「そう、心配するな。大丈夫だ。この『四季』によれば、カンという国は武力も持たない弱小の国だそうだ。そう苦労せず取れるぞ、兵士A」
「しかし、カンまでの距離を考えると……」
「大丈夫だ。何といっても我が軍は、あの東方遠征から帰ってきたのだからな。なあ、兵士A」
「しかし、新しくできたというコックリという国は……」
「大丈夫だ。『四季』によるとコックリは平和な土地で、我々の求める聖地とも書いてあったぞ、兵士A」
「そうならば、よいのですが……」
「しつこいぞ、兵士A」
「ははっ、失礼いたしました。直ちに参謀を集めます」
☆☆☆☆☆☆☆
アメリカでは、リンカーンが、まだ演説をしていた。
「もう一度だけ言うが、私が、あの有名なアブラハム=リンカーンである。皆のもの、よく聞け。これから後に有名になる演説をする。それは、お前らにとって、とても好都合なものだ。アメリカでは長年、イギリスによる支配制政治が行なわれてきた。これによって、我々アメリカ人は重い税金などに苦しめられてきた」
もう誰も聞いていない。時間は夜中の11時をまわっていた。
「なぜ、我々はイギリスに苦しめらられてきたのか。そう、我々は政治を持っていないからだ。だから、我々は政治を造ろうではないか。我々は持つのだ。人民の人民による人民の為の人民によって造られる人民だけの人民を中心とした人民が輝く人民を思いやれるような人民の信頼を得らるる人民が育つような人民が頑張る人民が一杯いる人民の人民による人民の為の政治を持つのだ!」
リンカーンは机を叩く。ドン、という音が空しく響き渡る。
ヒットラーはそんなリンカーンを画用紙一杯に描いていた。
「うるせー」
近くで寝ていた浮浪者が空きビンを投げ付ける。
「こら、危ないじゃないか。私は今、後に有名になる演説をしているのだぞ。耳をかっぽじってよく聞きたまえ。人民の人民による人民のための 」
☆☆☆☆☆☆☆
マリー=アントワネットは国内の小麦を大量に買い集めた。当然、フランスの小麦の値段は急騰し、パリ市民はますますパンを食べることができなくなった。続いて、マリー=アントワネットは卵と砂糖、そしてバターを買い集めた。
「マリー様は、何を考えておるのじゃ」
「わからん。ただうわさによればマリー様はイタリアのある有名なデザイナーにエプロンを注文したそうだ」
「ますますわからん」
などと考えているのは国民議会を開いている人々であった。
しかし、ベルサイユ宮殿でパリ市民向けにケーキの配給が始まると、人々は納得した。
「ありがたや、ありがたや」
パリ市民は初め、その話を聞くとマリー=アントワネットに感謝したが、実際ケーキを貰いに行くと、正反対なものへと変わっていった。
「マリー様は何という人だ。ケーキばかり1ヶ月分もくれるなんて。ケーキの賞味期限というものを知っているのだろうか」
「うわさのよると、このケーキはすべてマリー様が御自分でお作りになったそうだ」
「何と、あれだけの量を全部か!」
「そうだ。たいしたものだとは思わんか、なあ」
「しかし……あれだけの量となると1日じゃ作りきれまい」
「うむ。うわさによると、なんでも10日前から作り始めたとか……」
「すると、このケーキは10日前のものか……」
話していた市民の一人が、貰ったケーキをしげしげと見つめる。
「そういえば、確かに何か腐ったような臭いも……」
パリ市民のそんな声も知らず、マリー=アントワネットはパリ市民を助けたという、満足感に浸っていた。
「あー疲れたわ。ちょっと誰か、肩を揉んでくれないかしら」
「あっはい、ただいま 」
メイドの一人が駆け込む。
「ありがと」
マリー=アントワネットはうたた寝を始めた。
「おお、偉大なるフランス王国の王妃 何と美しい寝顔だ」
と言って現れたのは、ナポレオン=ボナパルトである。
「 何じゃ、ナポレオン。私は起きていますよ」
「これはこれは、失礼いたしました、アントワネット王妃。私、ナポレオンはこの度エジプト遠征から帰還いたしましたので、その御報告を、と思いまして」
「ほう。で、どうだったんですか、エジプトは?」
「はい、大変暑いところでございました。しかし、それなりの成果はありました」
「何ですか、成果とは」
「はい、これでございます」
と言ってナポレオンが取り出したのは、大きな石板であった。
「何ですか、これは」
「はい、エジプトのロゼッタという街で発見した石版でございます」
「ほう。で、何が書いてあるのですか」
「はい、これから解読するところですが、おそらく古代エジプトの財宝の在りかを書いた古文書かと 」
「それはすごいではないですか。早速解読してください」
マリー=アントワネットの顔が微笑む。
そして、ナポレオンもマリー=アントワネットの気が付かないところで、ゆっくりとほくそ笑んだ。
☆☆☆☆☆☆☆
あるひとりの科学者は道を歩いていた。すると、科学者の目の前に時空を突き抜け、爆発したタイムマシンの破片がトン、という軽い音をたてて落ちた。ビックリした科学者はその破片を拾い上げると、自分の白衣をポケットの中に無造作に入れた。そして、科学者は再び歩き始めた。
この科学者は20年来タイムマシンを研究開発していた。そしてタイムマシンは完成した。しかし、それは失敗していて、タイムマシンは爆発した。爆発のエネルギーは時空を飛び越え、歴史と時間と文法を少しづつ変えていった。
☆☆☆☆☆☆☆
諸葛亮の家では、ウサギのアップリケの付いたエプロンを付けた諸葛亮が馬謖の帰りをまだかまだか、と待ちわびていた。
馬謖が走って帰ってくる。
「おおー、待ちわびたぞ。で、どうだ。材料は手に入ったか?」
「はい、何とか」
馬謖はそう言いながら、スーパーの買い物袋をテーブルの上に置いた。
「いやー、パン粉を探すのには苦労しました。何でもパンというものは西洋の食べ物だそうで、フランスという国まで行ってきたのですが、フランスでは何でも国王がパンの材料である小麦粉を買い占めてしまってパンが作れないとのことで、となりのスペインという国まで行こうかと歩いていましたが、国境の山脈辺りで『ピレネーを越えればアフリカだ!』と叫んでいる者がいたので、その者にパンのありかを聞いたところ、パンを持っていたので少し分けてもらい、粉にしてきました」
「ほう。で、その者の名は?」
「はい、ナポレオンという者です」
「そうか、大変だったな。しかし、フランスも大変だな。ではフランスの民は何を食べているだ?」
「はい、それが……ケーキを食べていると……」
「何、ケーキとは! ケーキは西洋の食べ物の中でも、最も豪華な食べ物のひとつだと聞いたことがあるが……」
「はい、私も聞いたことがあります」
「…………まあいい。早く昼御飯を作ろう」
「はい。 で、何を作るのですが?」
「うむ。ハンブルクの民が考えたというタルタルステーキじゃ」
「名前からしても、何かおいしそうな料理ですね」
馬謖がほめると、諸葛亮は得意げになって右手に包丁を持ち、テーブルの上の袋から材料を一つひとつ取り出していった。
「まず、何をなさるんで?」
馬謖は期待と不安を織りまぜた声で聞いた。
「うむ。まずはこの西洋ネギをできるだけ細かく刻め、とある」
諸葛亮はタマネギを取り出し、まな板の上に置いた。そして、一刀両断、タマネギをまっぷたつに斬った。
「ああ、亮先生。そんな危険なことをなされては 」
「案ずるな」
諸葛亮は馬謖の言葉を馬耳東風し、そのまま続けた。台所の隅からもう一本包丁を持ってきて、左手にも包丁を持ったのだ。
「何を……」
馬謖の心配をよそに、諸葛亮は「乱れ打ち!」といいながら、まな板とまな板の上に乗っているタマネギを、両手の包丁でマシンガンのごとく叩き切りだしたのだ。 飛び散るタマネギたち。
「亮先生……」
馬謖は呆気に取られて見ていたが、諸葛亮が涙を流し始めると、びっくりして諸葛亮に駆け寄った。
「亮先生、どうなさいました。指でもお切りになさいましたか」
「い……や……、ひっく、えーん、ん、……なんでもない。馬謖よ……近寄るな、ひっく、……危ないぞ……ひっく、えーん、よ……あっ」
「……しかし あっ、亮先生なぜ……、あぁーぁ 」
偶然であった。諸葛亮が涙で目が見えなくなり、そのとき近くに馬謖がいた。ただそれだけであった。しかし、無情である。諸葛亮の包丁はまな板とタマネギを見失い、代わりに馬謖を切ってしまった。
「馬謖、どうした。馬謖よ! 馬謖 」
諸葛亮は、泣いて馬謖を切ったのだった。
☆☆☆☆☆☆☆
「うーむ。まさか大蔵省の会計検査院がこんなにうるさいとは……」
日本の総理大臣は、グリーンの芝の目と高低差を、パターを使ってそれらしく調べ、自分のボールがどう転がるかを考えながら言った。
「はい……。今回は少し危なかったですね。検察庁に我々の息のかかったものがいなかったら……」
と、内務大臣。
「まあいい、内務大臣よ。会計検査院には、今度我々の息のかかった者を送りこむとしよう。それよりも、今はアメリカのマッサカサマ元帥のシベリアを攻め込む為の軍隊をどうするのか、ということだ」
「どういたしましょう……」
とは、外務大臣の弁。
「うーむ。もう、徴兵令は使えんからなあ……」
内閣総理大臣は考えながらも、自分のボールをカップに沈める。
「こういうのは、どうでしょう」
内務大臣が口を開く。
「なにかいい案が、まだあるのか」
内閣総理大臣が身を乗り出す。
「はい……。日本をアメリカの属国とするのです」
「うーむ、属国ねえー。今だって十分アメリカの属国みたいじゃないか。それをわざわざ……」
「はい、そうかも知れませんが、アメリカだって日本を自分のものにしたいでしょう。そこをついて、アメリカと条約の1つでも結んでおけば……」
「しかしねえ。それではねえ。きみぃ。母国を売るようなものだよ。わかっているのかねえ」
とは外務大臣の弁。
「それは……、そうだ。こういうのはどうでしょう」
「なんだね、内務大臣」
「条約を時限条約にするのです。そうすれば日本は一時的にアメリカのものとなりますが、時間が経てばまた独立国として……」
「そうだな。他にいい案が思い付かん。よし、そうしよう。早速外務大臣 」
「まあまあ、そうあわてなくても。とりあえず、総理大臣、第1打を」
外務大臣がゴルフボールをセットする。
「うむ。そうだな。せっかく、自衛隊隊員用宿舎予定地でゴルフが楽しめるのだから、楽しめるうちに楽しんでおくか」
「はい、そうですよ。前の前のホールで見せたような、すばらしいショットをもう一度打って下さいよ」
内閣総理大臣はドライバーを不格好にぶんぶん振り回し、練習すると、華麗とはいいがたい第一打を打った。
☆☆☆☆☆☆☆
「カンという国までは遠いな。なあ、兵士A」
「はっ。シーザー様。予定では後1年ほどでカンに着くと……」
「何! 後1年じゃと。このシーザー様がそんなに待てるか! どうしてくれる兵士A」
「はぁ、あの……シーザー様。お言葉ですが、この出兵を決定なさったのは、シーザー様じゃ……」
「……この前はこの前、今は今じゃ。なあ、兵士A」
「はぁ……」
「なんだ。何か文句があるのか、兵士A」
「いえいえ、めっそうもございません」
「うむ。ならよろしい。 よし、直ちに参謀を集めよ。作戦会議じゃ、兵士A」
「えっ、作戦会議とは……」
「そうだ。攻め込む国を変えるぞ、兵士A」
「しかし、兵士達は東方遠征から帰って来たばかりで、まだ疲れております。いま一度帰った方がよろしいのでは……」
「がたがた申すな。さっさと参謀を集めよ、兵士A」
「はあ、しかし……」
「そう心配するな。大丈夫だ。さっき国境の警備兵から連絡があって、我が国に無断で入り込んだ外国の兵団があったそうだ。何でも北方のフランスという国の軍隊らしい。そこはカンよりもよっぽど近いそうだ。お返しをしてやろうじゃないか。そしてフランスを我がものにするのだ。警備兵からの話だと、フランスという国の軍隊は弱小だったそうな。そう苦労せずに取れるぞ、兵士A」
「しかし、北方の国というと寒さが……」
「大丈夫だ。何と言っても我が軍は、あの東方遠征が帰ってきたのだからな。なあ、兵士A」
「あまり関係がないのでは……」
「……しつこいぞ、兵士A」
「ははっ、失礼いたしました。直ちに参謀を集めます」
☆☆☆☆☆☆☆
アメリカではリンカーンがまだ演説をしていた。
「これが最後だ。良く聴け。私が、あの有名なアブラハム=リンカーンである。これから、後に有名になる演説をする。これはおまえらにとって、とても好都合なものだ。アメリカでは長年、イギリスによる支配制政治が行われて来た。これによって、我々アメリカ人は重い税金などに苦しめられて来た 」
時間は朝の7時をまわっていた。
リンカーンは机を叩く。ドンという音が朝の街に空しく響き渡る。
ヒットラーは、まだそんなリンカーンを画用紙いっぱいに描いていた。
「あの人頑張ってるわねー」
近くに住んでいる近所の主婦が感心する。
「みんな、人民の人民による人民のための 」
リンカーンは、まだまだ演説を続けていたが、ヒットラーはリンカーンを描き終えた。
「ねえねえ、リンカーンのおじさん、頑張ってるねー」
「うん? なんだい、少年」
「うん。僕ね、おじさんのこと尊敬する」
「ありがとう。君の名は?」
「アドルフ=ヒットラー」
「ヒットラーか、良い名だ」
「うん、でもね。僕、大人になると悪いことを一杯するんだよ」
「そうなのかい? 大丈夫だよ。嘘をつかなければ、悪い大人にならないよ」
「へぇー、そうなんだ」
「そうだよ、ヒットラー。決して嘘をついてはいけないよ」
「うん、分かった。 ところでさ、リンカーンのおじさんはアメリカの大統領選挙に出馬するの?」
「よく大統領選挙のことを知っているね。そう、私も出馬するのだよ。そのときは応援してくれるかい?」
「もちろんだよ。僕、今の政府に飽き飽きしていたんだよ」
ヒットラーは足下にあった小石を蹴飛ばす。
「もう、政治に興味があるのかい?」
「うん。だから政党も造ったんだ」
ヒットラーの顔は少し自慢げである。
「ほう、何という政党だい?」
「ナチさ」
「ほう、ナチか……」
「うん。 ところでさ。おじさん、共産主義って好き?」
「共産主義? うーん、私はあんまり感心しないな」
「そうなんだ……」
ヒットラーの顔はどことなく悲しそう。
「おじさん、僕に嘘をついてはいけないと言ったよね」
「ああ……」
「じゃ、おじさんを殺さなきゃ」
「えっ」
ヒットラーは尋常ではない速さで、胸のポケットからナイフを取り出すと、光速に近い速さでリンカーンの胸に突き刺した。
「な……ぜ……」
リンカーンは不意の一撃で、ゆっくりとその心臓の動きを止めようとしていた。
「僕、共産主義が嫌いな人が殺したいくらいに憎いんだ」
ヒットラーはゆっくりとリンカーンの胸に刺さったナイフを抜くと、さわやかにリンカーンの肖像画を持って、朝の霧の中に消えていった。
☆☆☆☆☆☆☆
「ナポレオンや、エジプトの領土は獲得できたのか」
そう聞いたのは、ルイ十六世である。
「王様、お言葉ではございますが、今は国内情勢が緊迫しております。諸外国のことは、このナポレオンにお任せください」
「しかし……」
「うわさによると、今、パリ市内では革命を起こそうという不穏な動きがあるとか。今は自分の身を第一とお考えください」
「何、その話は本当か。本当ならば大変なことだ。すぐに調べさせよう」
「はい、そうするのが一番かと……」
「うむ、ナポレオンは本当に余のことを」考えてくれておるのじゃな」
「……」
ナポレオンは何も言わず、ルイ十六世の部屋を後にした。
実は、ナポレオンはエジプトでは石版以外何も手に入れることができなかったのだ。ナポレオンはエジプトでシーザーの軍隊を見るなり、その強そうな軍勢にびっくりし、戦うことすらできなかったのだ。
ナポレオンが今後、我が身をどうしようかと考えていると、目の前のガラスが割れた。ナポレオンがどうしたのかと思い窓の外を見ると、外では革命が起こっていた。
ナポレオンは「これだ」と思い、自分の軍隊のもとへと急いだ。
ナポレオンの軍隊はフランス一である。ナポレオンはその軍隊を革命側につけたのだ。
ナポレオンの軍隊と、一人のレズビアンの活躍によって革命は大成功であった。マリー=アントワネットはルイ十六世とともに処刑された。しかし、フランスの財政難はまだ解決されていなかった。しかる後、革命政府のロベス=ピエールに脅されて、ナポレオンはロシアの占領に行かされるのであった。
「ちぇっ。ついてないぜ。こんなことなら、革命側につくんじゃなかったぜ、全く」
「んっ、何か言ったか、ナポレオン」
「いえいえ、ピエール様、何も……」
☆☆☆☆☆☆☆
ある一人の科学者は道を歩いていた。すると、科学者の目の前に、時空を突き抜け爆発したタイムマシンの破片が、トンという軽い音をたてて落ちた。びっくりした科学者はその破片を拾い上げると、自分の白衣のポケットの中に無造作に入れた。
「なんじゃろ、これは」
そして、科学者は再び歩き始めた。
この科学者は20年来タイムマシンを研究、製作していた。
「もしかしたら、これはタイムマシンに使えるかもしれん」
そして3年が過ぎ、タイムマシンは完成した。しかし、それは失敗していて、タイムマシンは爆発した。爆発のエネルギーは時空を飛び越え歴史と時間と××を少しづつ変えていった。
(つづく)
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