初演 『モーツアルト!』 観劇記

【 2002年10月10日(日生劇場) 12月20日,25日(帝国劇場) 観劇 】

キャスト ヴォルフガング・モーツアルト 井上芳雄

 コンスタンツェ 西田ひかる、松たか子

 レオポルト・モーツアルト 市村正親

 コロレド大司教 山口祐一郎

 ヴァルトシュテッテン男爵夫人 久世星佳

 ナンネール・モーツアルト 高橋由美子

演出・訳詞  小池修一郎

オーケストラ 東宝ミュージック(株) (株)ダット・ミュージック

指揮 塩田明弘

2002年12月、帝国劇場ではモーツアルト!の上演が大詰めを迎え、舞台も観客も大いに沸き立っていました。初演から3ヶ月、素晴らしく良くなっていて、とても感動させられました。

まず、井上芳雄君のモーツアルトが、とても良くなっている。歌いっぷりにダイナミックさが加わり、あの細い身体に熱い魂が宿り、全身で体当たり演技をしているのが非常に伝わってきました。

初演、日生劇場での始めの頃は、素晴らしく歌えてるのに、何かが伝わって来ない。表情や表現に物足りなさを感じたものでした。ところが、11月は大阪に行って、再び東京に戻ってきたら素晴らしい作品になっていた。やっぱり、井上君は凄い!良くやっていると感心しました。『僕こそ音楽』『影を逃がれて』は素晴らしい熱唱です。

その相手役、コンスタンツェ松たか子さん(日生とドラマシティ)、12月は西田ひかるさん。これも素晴らしい役柄。其々少し違った個性でどちらも良かったです。

松さんのコンスタンツェは気性が激しくて、勝気な女性って感じ、一方、人間らしくもあり、可愛らしさもある女性。とても前向きで、ストレートな演技の上手さに、強い印象を持ちました。

西田さんのコンスタンツェはお姉さん風で、大人って感じ。モーツアルトと出会いの時がお茶目で面白い。優しく、上品で可愛らしい。少しおとなしいけど歌も安定している。『ダンスは止められない』のナンバーが良い!いつまでも心に残ります。

男爵夫人には元タカラジェンヌの久世星佳さん。モーツアルトの才能を温かく見守り、手助けをする。ウィーンに導く救世主のような人。『星から降る金』のナンバーが豊かな声量で、説得力があり、とても温かい。

ザルツブルグの領主、コロレド大司教様を山口祐一郎さん。とても嫌味な役ですね。素晴らしい才能を持っているモーツアルトを権力下に置きたい。自分より上に行く事を許さない。しかし、モーツアルトの素晴らしい才能が解るからこそ自分自身との葛藤に苦しみ、嫉妬心が入り混じり、モーツアルトの自由や行く手を拒む。その嫌味な役を貫禄充分に演じ、『神よ、何故許される』は威厳を込めて歌った。客席からは素晴らしい拍手が沸き起こりました。

レオポルト・モーツアルトには市村正親さん。天才モーツアルトのお父さんですね。親として、考えさせられるものがありました。親の気持ちも凄く解りますねぇ〜。こう言う人って昔は凄く多かったと思うし、親としての使命や愛情、子供の事を一番思っているのは自分だと思っている。自分の考える事が子供の為に一番最適と信じている。しかし、息子は自由を求め、才能を活かす為にも大きく羽ばたきたい。そんな親子の葛藤に苦しむ。その辺はなかなか難しいところだと、真剣に考えてしまった私。(笑)そんな父親役をベテラン市村さんは好演されていました。『心を鉄に閉じ込めて』を重苦しく歌い、親が子を真剣に心配するさまを歌った。

そして、弟思いのお姉さんに高橋由美子さん。貧乏であまり幸せではなかったけれど、弟の才能を認め、一生懸命に弟の為を思う優しいお姉さん。ちょっと、不幸で可哀想だったし。結婚はしたけれど、夫に気を使ってたりして…。『プリンスは出て行った』ねっとりした歌声が耳に寂しく残ります。

天才の部分を演じるアマデに子役さん。3人のメンバーが交代で出ています。私が観たのは石川楓さんと内野明音さん。台詞は無く、綺麗な天才アマデです。こう言う風に、神聖な部分のモーツアルトが分離していると判り易くて良いですね。

コンスタンツェの母親に阿知波悟美さん、凄いアバズレ的な母上です。超派手で、欲張り、ガサツ、嘘も平気。それを豪快に上手く演じていましたね。ほんと憎らしいって感じにね。(笑)

おっと、忘れてはいけない人がいましたよ、吉野圭吾君です。エマヌエル・シカネーダー。モーツアルトの遊び友達?いえ、演出家兼プロデューサーだったかな。宝塚の男役みたいに細身で背が高い。長髪を一つに纏めた時が一番良く似合っていた。ライトグレーのジャケットスーツも決まり、インテリ魔術師って感じ。ステッキみたいな物を振り回していたような〜。低音の歌声はちょっと魅力的。『魔笛』の脚本を書いた人ですって。カーテンコールでも結構アピールしてましたよ。(笑)

『モーツアルト!モーツアルト!』コーラスアンサンブルは迫力があり、ダイナミックに舞台を盛り上げていました。

私が観たのは3回共、井上君のモーツアルトでした。こうして、この作品に浸ってみると、中川晃教君のモーツアルトも観てみたかったですね!2003年1月2日記yuko


12月25日(火)2007『モーツァルト』

私は12月半ば、風邪気味からお腹を壊し、『モーツァルト』観劇1回目をまたまた無駄にしてしまいました。快復した20日(木)には2年ぶり再演である井上『モーツァルト』を気合を入れて観劇しました。

久々に帝劇主演の井上芳雄君は、様々な場で活躍し勉強された甲斐あって、2007『モーツァルト』は一段とパワーアップ!!表現力も拡大し、スケールの大きいモーツァルトを熱演しました。
モーツァルトの行方を塞ぐ山口祐一郎演じる司教様は嫌味と言うよりユーモアが優先され、好感度アップです。モーツァルトをウィーンに導く男爵夫人には今回初の涼風真世さん。眩い位に気品に満ち、歌も抜群で『マリー・アントワネット』を半年間主演された貫禄が身に付き、なかなか良かったですよ。
ただ、ちょっと残念だったのがモーツァルトの妻コンスタンツェです。元「SPEED」のhiroさんが今回初で演じているんですが、私としてはかつての松たか子さんや西田ひかるさん、大塚ちひろさん達の流暢な歌いっぷりや愛らしさが脳裏に残ったままになっており、hiroさんの歌の軽さ加減や成り切り度の浅さ(失礼!)が物足りなく感じました。

 

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