映画と原作・青木淳子の孤独


 映画の、プラザのシーン。出血と疲労でふらつき、失神する直前に淳子が呟いた台詞、「助けて、お母さん。」・・・・今まさに、力尽きて倒れようとしている時に、助けを求める相手が亡き母親とは!すぐ側にいる木戸には心を開いておらず、他の誰でもなく、故人に助けを乞う・・・・。青木淳子の孤独を思い知らされました。
 原作で、強烈なのが、「火炎放射器と恋愛する男などいるものか」の一文。
 映画の淳子は、もし雪江の事件さえなければ、恐る恐るでも多田との距離を縮めて、「かわいい女の子」らしく恋愛をしていただろうと思います。ところが、原作の淳子は、人と心を通わせようという考えを持とうとすらしない、自分が愛されることなどあるわけがない、と。
 心の扉を、より堅く閉じていた原作の淳子。その分、実は心の隙間が大きかったような気がします。その隙間につけ込まれて、信じてはいけない男を信じてしまった・・・・。
 残留思念になっても、本当に愛してくれた男の側にいる淳子と、偽りのある男を、この世に1人で残せないと、道連れにした淳子。前者の淳子は、孤独から解き放たれて世を去ったが、後者の淳子は、死してなお孤独、と思えてなりません。



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