映画と原作・多田一樹の幸せ
先に映画を見て、後で原作を読むと、「燔祭」の後に多田のたどった年月は、驚きでした。
妹を惨殺されて、一生消えぬ心の傷を負った多田。その後の時間軸が、映画と原作とで大きく違うので、物語の終わりでの彼の状況、彼と青木淳子との関わりは、まるで違います。
映画の多田と、原作の多田と、どちらが幸せなのか?
映画の多田は、淳子との関わりが深く、最後は、今まさに愛している女を失った男。
原作の多田は、淳子との関わりは、「燔祭」の終わりで切れ、その後すさんだ暮らしを経て、新しい生活を手にした男。ただ、淳子が「人殺し」になってしまったのは自分のせいではないかと、気にしつつ。
いずれにしろ雪江も淳子も死んでしまいますが、映画では、相次いで大事な妹と大事な女を失うのに対し、原作では、淳子に対する感情は映画ほど深いものではないし、何より、新しい生活と、やがて生まれてくる新しい命がある。
諸手をあげて幸福とは呼べないまでも、原作の多田の方が、救いがあるように思えます。
戻る
「映画と原作」TOPへ戻る
次へ