あかあかと 十五夜の月 隈なければ 衣ぬぎすて 水かぶるなり
月の夜に 水をかぶれば 頭より 金銀瑠璃の 玉もこそちれ
円かなる 月の光の いはれなく ふと暗がりて 来るけはひあり
月の夜の 白き霧雲 もくもくと ながれて尽きず 夜灯の上
幅広き 月の光に 在り馴れず 我は心も いと細り寝る
今宵また 寝なむひとりか かにかくに われは仏に あらぬものをよ
澄みに澄み 澄みに澄みたる 中空の 月のまはりを 飛ぶもののあり
かうかうと 月は明りて わたれども 人の身我は 飛ばれざりけり
しろたへの 衣なほ干す 屋根の上に 月いよよ澄みて いよよ白しも
烏羽玉の 暗き夜ふけに 空高く 凧ひとつあげて ゐる人のあり
ただならぬ 電光の赤き 閃きの下 夜空に揺れて 凧ひとつあがる
火花ちらす 電光の下に 放つ糸の そのひとすぢの 末に凧舞へり
夜をこめて 空に幽かに 揺るる凧の 何かしら放つ その火花はも
真夏日の 日照りはげしき 街をあゆみ ふと耳に入る 発電機の響き
ああ発電機 おほどかなれど おのづから 澄みて愛しき 声放つなり
ああ発電機 聴けばこもごも 忘られぬ そのかの声も こもらひにけり
発電機の 鳴りの極みの 細りごゑ 澄みとほる間の 一つ蝉の声
澄みわたる 光のなかに ゐる鴉 かあと一声 啼きにけるかも
大きなる まんまろき円 ひとつかき ひとり眺めて ありにけり昼
大きなる 信天翁が 云へらくは のそりのそりと あるべかりけれ