HOME↑
  南泰裕さんと 建築あそび 5−2  

  5−1  5−3  5−4  5−5   へ

☆スライド17

                

これは一分の一スケールってことで、ウィトゲンシュタインという哲学者がウィーンにストンボロウ邸という自分のお姉さんの住宅を設計してまして、そこで使われているスチールサッシをモデルにして作られたオブジェですね。これは、準備中に急遽参加した奈尾さんという人が担当して製作したものです。


☆スライド18

            

一分の一のスケールのところにビデオものも一応作ったんですけれども、ここに見えてるのは東京のお台場にあるフジテレビの本社。シルエットが写ってますけれども。丹下健三さんという建築家が設計したものですけれども・・。
とにかく一万分の一のスケールから千分の一、百分の一、十分の一、一分の一という・・セームスケールに至ってソレガいつの間にか都市スケールまで循環していくという・

スケールの順序集合がなにか循環しているような・・そういうふうなイメージでやったんです。・・・そこで都市、一分の一に至ってビデオ画面に向き合い、その中に都市の光景が映し出されて、映像を通して現実の都市にリアルに直結する、というふうな事を考えていました・・

なんていうか建築学科の大学院に永く居たんですけども、率直に言ってその頃は・・今でもそんなに・すごく解っているわけではないんですが、その頃はまだ建築のことが良く分かってないんですね。

 今になって思うと全然解ってないのに解った気になっていたなーというふうなことが非常にありす。この当時は建築云々と言うことは少なくても僕は語ったり表現したりする資格が自分には全くなかったナーという・・振り返ってみるとそう思うんです。

ただし何故そう思えるようになったかと言うと。うーん・・最初になにか自立的に建築を考えるということがどうしても自分を取り巻く状況や世界。世の中の状況論的にみてあまり正しくない最初に都市があるというふうなイメージで捉えたほうがむしろリアリティがあるなと当時考えておりました

☆スライド19

            


これは一分の一から一万分の一のスケールに転換されていく、なにかそれを繋ぐ窓のようなもの・・

スライド20

            

これは一気に変わるんですけども・・

これはこないだ設計した住宅なんですけども・・2世帯住宅で親世帯と子世帯に別れててまして。佐藤さんにですねフォトコラージュとか体験記を作っていただきまして。まぁー佐藤さんが書かれていた体験記はですね。最初読んだとき非常に驚いて・・あの・・ハッキリ言って非常に的を得ているんですね。

佐藤さんの体験記を最初読んだときにホント にすごく驚いたんですね。並の評論家でも、あういう風にポイントを押さえてはなかなか 書けないんじゃないかと思ったんですが・・

この住宅はPark Houseというふうに名前を付けてまして、。名前の由来は一切語らないことにしようと思っていたので・・今回こだけで一寸だけ秘かに言っておきますが・・モゴモゴモ・・・・だから僕は操作論的に名前を付けたわけじゃなくて・・・モゴモゴモゴモト・・それがどうやって誤読されて行くのかっていうことを・・引いて観察していこうかなーと思いまして

   佐藤 笑う

・・・もごもご・一般的には言わないようにしておこうということでして・・

二世帯住宅で、僕の知人なんですけども。前から細かい相談に乗ってまして、とにかく建築とか空間とか住宅話をしてたんですね。

・・去年ですかね・・去年の最初の頃に「土地を買おうかどか迷っているから一寸相談に乗ってほしい」といわれまして。それで一緒に見に行きまして。細かい法規的なことであるとか、或いは空間のコンテキストとか、コンテクストとは周りの空間の文脈とかですね、環境の成り立ちです。そいうたモノを一通り見て。「ここだったら大丈夫だろう」と一応アドバイスしまして。地盤も悪くなかったんで。

それで彼は土地を購入しまして・・そんなに凄くは安くはないんですけども一時期に比べると土地の値段が下がってるんですね。

そんな経緯で建て主で土地を購入されて住宅を作る計画となったんですね。スライドでは今回ですね・・あえて内部しか見せないようにしようと思うんですね。それは僕の方でも意図があるんですが。

土地自体93坪ぐらいですね。全面道路狭いですけれど。2.7Mぐらい。細長い敷地になっていまして、そこに・・両親と一緒に住みたいということでした。

一番最初に建て主さんの御主人と奥さんが言ってたのは「明るくてオープンな空間が欲しい」ということと、「緑と光と風が感じれる家が欲しい」という、とにかその一番最初のモチベーションというかイメージだけは絶対に共有して・・共有し続けて。あとはとにかくディスカッションして、いろいろと・・いい空間というか、気持ちのいい空間を作っていこうという話をしたんですね。

それで僕は、敷地を分析して、建て主のリクエスト項目をいろいろを細かく消化して検討いく中で、3つぐらいの大きな方向性を出したんですね。つまり、「都市をかすめ取ること」「地形を引き剥がすこと」「光をねじまげること」という3つです。

一番目の「都市をかすめ取ること」に関しては、佐藤さんが非常にうまく説明して下さってるんですが、この住宅自体が都市のスカイラインの一部をトレースしたような感じがあるんですね。また、「地形を引き剥がすこと」にかんしては、物理的に斜面緑化を組み込んで、上部と下部の庭を連続させる、ということをやったわけです。「光をねじ曲げること」というのは、内部と外部を接続する開口部の配列によって、空間のシークエンスの上で光が多様に展開し、変形していくようなことを考えたんです

そんなことも含めながら、結果的に御主人とは千時間ぐらい議論することになってしまったわけですけれども・・もうすでに住んでおられるわけですけども、皆さん満足して頂いてるんで「良かったナー」と思います

これは親世帯・

☆スライド21

            

これは別の角度から見たこちらの方が寝室になっています

スライド 22

           

これも同じですね。このあたりにハイサイドを取っているんですけども・こちらの方が和室になってですね・・
 
 会場 話の途中ですが・・プランが無いと・

プランですね紙で回しますので、すこし見ていただけますか・・回します

s 一寸休みましょう見てる間・・プランをまずてもって・・

  休憩してプランをみんなで眺めることにしましょう・・
  会場 プランを眺めるフムフム・・ウフムフ・・15分ほどかな・

  

再開

   

今回内部だけ。内部だけスライド持ってきたていうのはですねー。「都市と住宅との関係」ということを少しお話したいなーと思ってまして。

先ほど都市に関する展覧会のスライドをお見せしたということと関連してるんですけど、都市の中に住宅を創るっていうことを、それをどうやって解釈していくかっていうことですね。例えば非常に敷地が広くて何をやっても大丈夫だっていうふうな事は実際には今の都市社会ではほとんど無いわけですね

例えば変形敷地であるとか、非常に狭小な敷地の中に工夫をして住まざるを得ないっていう。そこである意味建築家の腕が問われるっていうかですねー

    佐藤  笑う

なにを考えることができるかのということを・・こっちもある種の難しい問題を与えれてるような形で必死で考えるわけですね。

都市と建築。或いは都市と住居の関係という事を考えた場合に、それに最も自覚的に先鋭的な思考を展開したが・・その一人がアドルフ・ロースという建築家だったんですけども。

アドルフ・ロースというのは20世紀初めのウィーンで活躍をした非常に有名な建築家でその後の近代建築とかですね、いわゆるモダニズム建築と言われているもののムーブメントを席巻した一人なんですけれども。

そのアドルフロースが「装飾と罪悪」という本を書いて。非常に有名な本なんですが、とにかくごてごてした装飾を付ける必要がないと。建築というのは・・もう少し言うと「住宅というのは外部に対して語る必要がない」というわけですね。「内部の豊かさが非常に重要なんだ」と。外部はいってみれば「仮面でいい」という言い方をするわけですね。

その時にロースが言った外部と言うのは明らかに都市なわけですけれども。実際にロースは外部に対して非常に素っ気ない・・ある種のニュートラルな表情を持った建築を作ったわけですけども。これに対しては色んな考え方があると思うんですけども。

例えば「自分の家は豪邸です」という事を外部に向かって示す必要はない。それよりも内側に居る人達が豊に快適に気持ちよく暮らせるということが大事であると。で・・ロースが言っていた事っていうのは内部と外部が疎外論的に乖離するとか・・全く断絶するわけですね。

外部は仮面のようなかたちで、ある種自分とは全く関係ない人間を閉ざしてしまって、峻別する壁として機能すると。その一方で内部空間というのは非常に豊かな場所となるように・・・住居を創り出す。具体的にはロースの場合はラウム・プランと言われている手法を採るわけです。ラウム・プランといのは直訳すると空間計画なんですけども。スキップフロアーがあったり、微妙な段差が有ってそれが空間にメリハリを付けてですね、抑揚をもたらすっていうふうな・・事を考えたわけですね。

ロースの事っていうのは設計の際に頭に有ってですね・・。建て主は非常に高いお金を建て主は出すわけですから、都市の中で・・例えば非常に狭い土地の中にですね。なんとか、そこで少しでも良い空間を創り出すためにはどうすればいいかという解法としては、ロースの手法は今でもある程度有効性を持っている。

例えば安藤忠雄さんという有名な建築家がいますけれど、その人が創った住吉の長屋っていうのはそういった考えを踏襲しているわけですね。外部に対して徹底的に閉ざした、閉鎖的な、外部を拒絶するような表情を持っていて、一方で内部に・・あの人の言い方によると、「光を採り入れたり或いは風を通したり」ということで少しでも 自然をダイレクトに感じ取れるような空間を作ると。

それがあったわけですけれども・・。一方でその言い方・・考えに対する違和感っていうのも私の中では有りまして

つまり外部と内部とっていうものを完全に疎外論的に切断してしまうような考え方っていうのが、果たして都市に住む中で・・都市における住居として本当に有効かどうかっていうことが有ったんですね。

その当たりのことは今までも考えているんですけども・・。外部と内部っていう。そのなんて言うか・・二項対立を考えた場合には勿論住む人に対しては非常に重要なわけですけれど、その一方で内部と外部を何とか上手く繋いでいくような・・事は考えられないかと思っていたわけですね。

実際にこちらの建て主の方はですね。例えば僕は中庭型の・・ロの字形のプランを提案しても嫌がるんですね。普通だったらだいたい大きな家になったら閉じて行くんですけども「もっと開きたい」というんですね。「外に」あの・・「ドンドンオープンにしてくれ」って・・勿論その方が光も入るし、有る意味では気持ちよくなるんで・・その当たり、建て主とディスカッションを重ねることで、結果的にかなり面白くなってきたわけです

☆スライド23

            

これは親世帯の寝室です。ここはニッチになっていてここに間接照明が組み込まれているんですけれども・・

☆スライド24

            

これはお風呂ですね・・。ここにトップライトを取っていて。これはガラスのドアですね。こちら側が洗面コーナーになっていて。水回り全部まとめちゃおうと。
実はこちら側に道が通ってるんですね。先ほどプランを見て頂いた方は解ったかも知れないですけれども。

今の建築界の中ではですね。ダブルスキンというのが結構一般化してきて。壁を2重化するとか・・薄い幕のような壁を二重化していくっていうことで、構成するっていうことがあったんですけども・・・僕からみるとそれは凄く直訳的というかですね・・つまり内部と外部というものを非常にリジットなゾーン分割によって捉え・・ている。それに対して、外部と内部を堅固に分かつのではなしに、別の方法を考えるとするならば、それをつなぎ止める・・バッファーゾーン、つまり緩衝地帯ですね。

そうした緩衝地帯自体をもう少し立体的に組み込んで行くような、空高次元の間を作ることができないかなと考えました。

そうすれば内部の豊かさと同時に、内部と外部が部分的に接続し、あるいは接続することをコントロール出来るような空間が多少なりとも生まれるじゃないかと・・



      次 5−3 へ