夢惑う世界 雑記帳 随想録<澪標> 企業論理を超えて |
4.1.2.4−8 企業論理を超えて |
2014年5月14日 森みつぐ
半月前、「長時間労働は「評価のため」」という記事が載っていたが、今日の朝刊には、その続編「残業頑張っても評価変わらず」という新聞記事が載っていた。「社員は残業が評価につながると考えているのに、会社は人事評価で考慮していない―――内閣府が13日に発表した「ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査」で、個人と企業の認識のギャップが浮き彫りになった。…(省略)…これに対し、「社員が残業や休日出勤をほとんどせず、時間内に仕事を終えて帰宅している」場合に、「マイナスの人事評価をしている」企業は6%で、「考慮されていない」が74%に上った。(読売新聞より)」
企業の人事部門(?)が提出するアンケートをそのまま鵜呑みにして記事を書くなんて、新聞もその程度かと思ってしまった。人事部門は、残業時間が少なくて成果を出してくれるなら、これに越したことはないのである。ところが、残業を前提にして作業をこなさなくてはいけない職場では、残業もせずに、他の人を置いたまま定時で帰るなんて、以ての外ということになるのである。
個人と企業の認識のギャップは、企業の人事部門に聞いても駄目である。実際、職場で働いている労働者たちの上司に聞かなくては意味がない。終身雇用が失われたりと労働環境が様変わりしても、残業や有休などワーク・ライフ・バランスの改善は、全くといっていいほど皆無である。
2014年7月9日 森みつぐ
先月末の新聞記事である。「過労で脳出血や心筋梗塞などを起こして死亡し、2013年度に労災認定された人は133人で、12年連続100人を超えたことが、厚生労働省の調査で分かった。…(省略)…発症前の残業時間の1か月平均は「80〜100時間未満」50人、「100〜120時間未満」28人と多く、同省は「長時間労働が過労死の大きな要因」としている。…(省略)…また、職場でのストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症し、13年度に労災認定された人は436人で、1983年の調査開始以来、2番目に多かった。うち自殺や自殺未遂を図った人は63人。436人のうち3割は、発症前の残業時間の1か月平均が80時間以上に達していた。(読売新聞より)」
久し振りに過労死の記事を読んだが、相変わらず労働者たちは、企業に不当な労働を押し付けられ続けているようだ。1か月の残業時間が80時間というのは、ほぼプライベートな時間が無いに等しい生活実態なのである。当然、精神的疲労に加えて、肉体的疲労も蓄積されてゆく。心も体も蝕まれてゆくのである。
非正規雇用の問題、ブラック企業の最悪の労働搾取の問題等々、企業の労働実態に関する問題は、年々悪くなる一方である。それに拍車をかけているのが、政府が強引に目指している労働規制緩和であるように思うのである。
2014年11月5日 森みつぐ
今朝、NHKのニュースを見ていたら、労働者の過労死が増え続けていると報道していた。過労死は、平成10年が56人だったのが、平成25年の昨年は192人だったという。過労死なんて一昔前のことのように思えるのだが、労働環境の悪化とともに過労死も増えているようだ。ワーク・ライフ・バランスは、どうなってしまったのだろうか。
正規労働者は減り、非正規労働者は増え続けている。名ばかり管理職の問題、残業代未払いの問題、全てが怪しいブラック企業の問題など労働環境は悪化の一途を辿っている。労働組合の組織率は低下し、その存在感は薄れている。そして、経営側トップの自民党政権は、経営側に有利な労働者派遣法を改悪しようとしている。
グローバル経済は、どんどん社会に浸透している。その結果、格差は拡大し固定化してきている。これからも低所得者にとって、どんどん生きづらい社会へとなってゆくことだろう。そして過労死は、これからも増え続けることだろう。
2017年2月5日 森みつぐ
「大手旅行会社「エイチ・アイ・エス」(東京都新宿区)が複数の従業員に違法な長時間労働をさせた疑いがあるとして、東京労働局が、労働基準法違反容疑で強制捜査に入っていたことが関係者への取材でわかった。同局は、すでに複数の幹部らから事情を聞いており、容疑が固まり次第、法人としての同社と、幹部を同法違反容疑で東京地検に書類送検する方針。…(省略)…かとく(過重労働撲滅特別対策班の通称)は15年4月に東京、大阪両労働局に新設された。これまで、新入社員が過労自殺した大手広告会社「電通」(東京)をはじめ、ディスカウントストア大手「ドン・キホーテ」(同)や靴販売チェーンのABCマートを運営する「エービーシー・マート」(同)など6社を同容疑で書類送検している。(読売新聞より)」
これは、ほんの氷山の一角であろう。多くの大企業でも、違法な長時間労働を従業員のさせていることだろう。今の管理職の殆どが、長時間労働の中から抜き出てきた人たちなので、当然、部下たちにも長時間労働を強いるのである。企業は、長時間労働しないと処理ができなく、また利益も上がらないような仕事量の計画を立てているのである。また従業員の中には、残業代がなければ生活が成り立たないからとか能力がないからと長時間労働をしたり、残業代を要求しなかったりと、残業もほどほどに帰る従業員に間接的な精神的圧力を掛けている者もいる。管理職は、全員に同じような長時間残業を求めるのである。そんな企業は、そう簡単に変わらない。
企業も従業員も意識改革が求められる。企業の残業方針を黙認してきた労働組合も変化が求められる。労働組合が従業員の勤務状態を知らないなんてとんでもないことである。長時間労働は、人権侵害であることをもっと知るべきであろう。
2017年3月8日 森みつぐ
「残業規制を巡っては、政府が今月14日に@上限を「年720時間(月平均60時間)」とするA違反には罰則を設ける―などの案を示し、大筋で合意が得られている。ただ、繁忙期の月上限について、経団連が「月100時間」を容認しているのに対し、連合は反発しており、安倍首相が合意形成を求めていた。(読売新聞より)」「労災認定基準の残業時間は「脳・心臓疾患の発症前1か月間に100時間超」などとなっており、連合内ではいわゆる過労死ラインを想起させる「月100時間」への抵抗感は根強い。(読売新聞より)」
政府の進める「働き方改革」の時間外労働(残業)規制において、繁忙期には「月100時間」を容認するという。「働き方改革」は、経営側の意向を反映して作られた内容となっているのではないだろうか。「働き方改革」の主体は、労働者であると思うのだが。過労死が起きても不思議でない労働時間を繁忙期だからと言って許可していいはずがない。絶対守らなくてはならない基準が、「月100時間」なんて有り得ないのである。残業時間の制限のない36協定の「特別条項」が人間性破壊の源であり、労働組合が会社とごく当たり前に協定を結ぶことが異常なのである。
残業100時間を当たり前のように繰り返していた私には、月60時間の残業でも、まともな私生活が送れないことが分かる。一人暮らしでも厳しい私生活となるだろうし、まして家族がいたならば、言うまでもないことであろう。労働基準法では、「労働条件は労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」たることを規定している。「月100時間」が全くこの趣旨に反するものであることを認識すべきであろう。
2017年7月5日 森みつぐ
「厚生労働省は30日、長時間労働などが原因で精神疾患を発症し、2016年度に労災認定された人は498人(前年度比26人増)、うち女性は168人(同22人増)に上り、ともに過去最多だったと発表した。労災申請が過去最多の1586人(同71人増)で、同省は「仕事が原因の精神疾患が労災認定の対象になることが周知され、申請が増えた可能性がある」と分析している。(読売新聞より)」
全ての人が希望する仕事に就くことができる訳ではないので、いろいろと仕事に対する不安や不満があるだろう。だからと言って、それによって精神疾患に陥ることは稀であろう。「発症の原因は「いじめ・暴行」(74人)、「仕事内容・量の変化」(63人)など。(読売新聞より)」となっているように、精神的苦痛を伴う長時間労働が、問題の根底にあることは疑いもないことだろう。相変わらず、「ナゼ日本人ハ死ヌホド働クノデスカ?」(岩波ブックレットNO.198のタイトル、<対談>ダグラス・ラミス/斎藤茂男 1991年)が、未だに続いているのである。
そこまで労働者を働かせないと成り立たない企業は、もうその時点でブラック企業だと私は思っている。経営者は、労働者の幸福の上に成り立っているような企業と言うものを育てなくてはならないし、国は、企業がそのようなことを実現できるような社会システムを構築しなくてはならない。そのような意味から、今のグローバル経済には疑問を持っている。
2018年2月25日 森みつぐ
「厚労省はこれまで、実態調査の結果を比較し、平均的な人の1日あたりの労働時間は、裁量労働制では9時間16分で、一般労働者の9時間37分よりも約20分短いと説明していた。首相は「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」と1月29日の衆院予算委で答弁した・・・(読売新聞より)」この答弁をテレビのニュースで聞いていたとき、“本当かよ!”と思った。多分、この答弁を聞いていた野党の議員や労組の中にも、大いに不思議に思った人たちがいたのだろう。
「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」という、そのデータを突き詰めてゆくと、あってはならないデータのトリックがあることが、遅かれ早かれ野党に気付かれてしまうので、そのダメージを小さくするために公表することになったのではないだろうか。「性格の異なる数値を比較していた」なんて、素人集団ではあるまいし、絶対あるはずがないと思っている。直感的に分かる数値データを示せば、裁量労働制の拡大に有利になると画策したとしか思えない。
企業国家は、経営者側の要求に応えて労働者の人件費削減に悪知恵を働かそうと画策しているのである。非正規労働者を沢山産み出し、そして次なる段階では、正規労働者の賃金を抑え込みである。自民党政府は、ブラック企業国家に成り下がってしまっている。
2018年3月7日 森みつぐ
「裁量労働制を社員に不当に適用したとして、昨年末に是正勧告を受けた不動産大手「野村不動産」(東京)で、50歳代の男性社員が過労自殺し、長時間労働が原因として労災認定されていたことがわかった。男性は不当に裁量労働制を適用されていた社員の1人だったという。(読売新聞より)」
政府の主導する働き方改革の目玉政策である裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度は、どうにかして労働者の人件費を抑えようとする経営者側の意向に沿った政策である。経営者側は、裁量労働制を悪用して違法行為と知りながらも、適用してはならない労働者に対して、それを適用するのである。労働者は、口惜しいけど会社に対して異議申し立ては出来ない。そして労働組合は、それを知っていても、見て見ぬふりをするのである。それが、企業である。
私も会社勤めをしているとき、まだ管理職になっていないのにも拘らず、20時間の残業代に相当する手当てを付けるので残業時間は付けないようにと上司から会議室に呼ばれて言い渡されたことがあった。当然、明文化された書類はなく、口頭だけである。私は、違法行為に加担するつもりはなかったので、そのような職になる前に残業は“0”にしたのだが。企業なんて、そんなものである。労働者は、ブラック化した企業とブラック企業国家に虐げられるだけである。
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