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巡礼五日目 |
阿波の難所を越えて |
第二十番
鶴林寺 第二十一番 太龍寺
第二十二番 平等寺 |
平成29年12月30日巡礼 |
前回の遍路の旅から一年が経ち、再び年末年始の行脚に立つ。
今回の目標は大きく2つある。1つは発心の道場・阿波国から修行の道場・土佐国へと行程を進めることで、これは余程の荒天や体調不良がなければ大丈夫だろう。もう1つは「開経偈」から始まり「回向文」に終わる札所での勤行(ごんぎょう)を少しでも出来るようにすることで、特に「般若心経(右写真)」は暗誦できるようにしたい。300字にも満たない文中に大乗仏教のエッセンスが凝縮されているこの経典は勤行の中心であり、札所では読経を頑張ってみたい。
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般若心経(全文) | |
今回は阿南市(徳島県)で3泊、安芸市(高知県)で1泊するスケジュールで、前回のゴール地点・牟岐線立江駅に夜明け前の列車で降り立つと、あれっ?駅舎が違う…どうやら旧駅舎は取り壊されて簡素な駅舎となったようである。一応待合室もあるので、気候の良い時期にはお遍路さんが野宿するかも知れない。
立江寺の山門前を横切り、西へと進む。本日は左回りに第二十番鶴林寺〜第二十一番太龍寺〜第二十二番平等寺〜阿南の行程。特に鶴林寺と太龍寺は山間の札所なので、公共交通の助けを借りてもギリギリか?
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前年と全く変わった立江駅の駅舎 | |
第十九番立江寺から第二十番鶴林寺へは西南西へ約14Km、最後の約3Kmは標高500Mへの山道となる。ならば平地の部分で路線バスを利用できないかと調べたが、札所間を直接結ぶ路線は無い。徳島県内の路線バスはおおむね徳島駅から放射状に伸びており、前後の札所がその放射線にうまく乗っていればOKだがそうでない場合は工夫が必要になる。 そんなわけで今回は立江駅から6.5Km歩いて「沼江不動」バス停から徳島バスに5Kmほど乗るプランにしてみた。平坦な舗装道路だが、バスを逃すと予定が大きく狂うため思わず早足になる。
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さぁ今日も山登りだ | |
そして立江駅から歩くこと90分で目的の「沼江不動」バス停に到着、うまく7:59発の徳島バスをキャッチできた。車内は暖房が効いている。
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櫛渕町萱原付近にて、クルマでも距離がある。 | |
さて鶴林寺への地図を見ると一般的には「生名」バス停下車で登坂の道を行くようだが、少し先の「棚野」バス停からの方が距離的に若干近いことがわかり「棚野」で下車する。幸いにこちらのルートでも標識は整備されていて道には迷わない。 しかしこのルートは距離が短いぶん標高差を短距離で稼ぐため(考えてみれば当然だが)、坂がきつい。喘ぎ喘ぎ登り続けること1時間、不意に山門が右前方に現れた。
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札所への標識は整備されている | |
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比較的短距離で標高差を稼ぐため道はきつい | |
「第二十番札所鶴林寺(かくりんじ)」--- 山深い地に建つこの寺は「一に焼山、二にお鶴、三に太龍」と称される阿波国の難所で、いわゆる遍路ころがしの山道を歩いての巡礼となる。「太龍」は次の太龍寺のことで、今日は山登りが続くことになる。 山門近くで清掃されているお寺の方に挨拶して境内へ。自分の他には誰もおらず、参拝を済ませた頃にようやく別の参拝者が現れた程度。静かな山寺のたたずまいは時間が止まっているようだった。
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鶴林寺山門 | |
納経所でご朱印を頂いた際の会話。 それでは出立しようかと看板(地図)を見ると、「かも道」と呼ばれる旧道の案内を見つけた。この道は今ではメインルートから外れているが、昔の遍路道の様子を良くとどめているそうだ。 看板の写真は →
こちら |
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うっそうと巨木が茂る境内 | |
鶴林寺を出て太龍寺へ。 両方の寺はいずれも標高500M程度の位置にあるため尾根伝いに歩ければ便宜なのだが、残念ながらいったん那賀川(写真下)まで下って再び登るしかない。以前に歩いた焼山寺への道を思い出した。
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鶴林寺を出て、ひたすら下る | |
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電柱に貼られた英文の案内 | |
那賀川を渡り、しばらくは支流の若杉谷川沿いの道を歩く。渓流は遍路の目を和ませてくれるが、いっこうにキツい登り坂が現れない。そう思いながら歩くとようやく右の登り道が現れた。太龍寺へ残り2Km弱で300M以上の標高を稼ぐ道なので覚悟はしていたがさすがにしんどかった。
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さぁ登りだぞっ! | |
「第二十一番札所太龍寺(たいりゅうじ)」--- 深山の奥に位置するだけあって静かな境内、僅かにロープウェイ(後述)の音が聞こえてくる。時刻はちょうど正午なので持参の昼食を済ませる。
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太龍寺の諸堂 | |
境内を歩くと右の「六角経堂」があった。案内板には「一切経(全ての経文)を収蔵し、心して経堂を巡ると全ての経文の功徳が得られるとある。これは大変有難いことで、実際に自分も巡ってみた。
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六角経堂、ぜひ廻ってみよう | |
昼食を済ませ、それでは山を下り次の札所・平等寺へ向かうとしよう。下山にあたり今回は太龍寺ロープウェイを利用してみた。麓の鷲の里駅までの距離2,775mは西日本最長で、所要10分・料金は1,300円である。 ロープウェイの運行は20分間隔で、次の便まで少し時間があったので改札のかたが「きのこ茶」をふるまってくれた。やがて改札が始まり、ゴンドラに乗り込む。定員101名のゴンドラに10名程度の乗客なのですいている。
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ロープウェイ・太龍寺駅 | |
さて13時ジャストにスタート、麓へ下る前に尾根を越えなければならず、ゴンドラはどんどん上がっていく。西日本最長らしいなかなかの雄大さで、ちょっとスリリングな感じさえする。もちろん風光明媚な車窓であることは間違いなく、同乗のガイドさんも次々とタイムリーな車窓案内をしてくれる。 このロープウェイの開通は1992(平成4)年で、それまでは尾根道を徒歩で歩くしかなかったのだからやはり便利なことこの上ない。実際に宿泊先(阿南)〜鶴林寺〜太龍寺〜平等寺〜宿泊先(阿南)の左回りコースを日着するためには不可欠の交通手段と言えるだろう。
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尾根越えの標高を稼ぐ(後方から撮影) | |
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逆方向の便と行き違う(後方から撮影) | 麓の鷲の里駅近くから眺める |
麓の鷲の里駅は道の駅を兼ねていて、ここでしばらく休憩する。次の平等寺までは途中まで徳島バスの路線があるので乗ってみる。
和食東バス停14:20 -14:30 阿瀬比バス停
阿瀬比バス停からは大根峠越えの山道となるが、サミット200Mとあって既に歩いてきた道の険しさを思えば大したことはない。やがて道は舗装された平坦な道となり、自分の影が長くなってきた。ようやく15:55、左手に平等寺が見えてきた。
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和食東(わじきひがし)バス停にて | |
「第二十二番札所平等寺(びょうどうじ)」--- 写真を見ておわかりのように山を背にはしているが平地に建つ寺である。早朝に宿泊先を出立した時には果たして本日中に到達できるか?との心境であったことを思うと、夕方ながら到達できたことに感謝しきりである。仏縁ありがたや。
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平等寺の伽藍 | |
参拝が12月30日ということもあり、山門には新年の門松が立つ。 平等寺での納経を終えると時刻は16:15、ここからJR新野駅へは徒歩30分弱で着く。クルマの交通量がやや多い道ながら歩道が不十分な個所もあるので注意したいところ。最後はうまく新野駅前に列車到着の10分前に辿り着けた。
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山門と門松 | |
<参考>
鶴林寺・太龍寺・平等寺日着タイムテーブル
阿南駅 5:59 (徳島線) 6:16 立江駅 6:20 - 7:45
沼江不動バス停 7:59(徳島バス) 8:10 棚野バス停 8:10 - 9:10 鶴林寺 9:35 - 12:00 太龍寺・太龍寺駅
13:00 (ロープウェイ) 13:10 鷲の里駅 13:50 - 14:00 和食東バス停 14:20 (徳島バス)14:30 阿瀬比バス停
14:30 - 15:55 平等寺 16:15 - 16:40 新野駅 16:50(徳島線)17:05 阿南駅
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こじんまりとした新野駅舎 |