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お納経の揮毫・朱印は
 
 
      第四十四番 大宝寺   第四十五番 岩屋寺  
平成31年1月3日巡礼   

 

 

   本日は久万高原にある2つの札所を巡るため早起き、松山駅前からJR四国バス久万高原線乗る。利用に際しては下写真の久万高原線一日乗り放題きっぷ(1,200円/土休日限定)を使ったが、これは久万高原まで往復するとなんと半額弱の出費で済む驚きの割引きっぷであった。

久万高原は雪化粧(バスの車窓から)

 

   さてバスは松山駅から市街を抜けて久万高原へ。車窓から数日前に降った雪が見え、冷え込む高原らしさが伝わってくる。実際にバスを降りると実にひんやりとした空気が肌を刺す感じで、1時間強の乗車時間ながら下界(松山市街)とはかなり違うなと感じた。なお降りた停留所は「久万中学校前」である。

    バス停から最初の札所・大宝寺へは久万川を渡り東へ歩く。するとやがて杉木立の参道となり、残雪まじりの道を上り切ると立派な山門が見えてきた。

大宝寺への参道

 

   「第四十四番札所大宝寺(だいほうじ)」---全札所が八十八箇所なので数の上ではちょうど半分、これからも隘路を辿る遍路道に何度も出会うことだろう。早朝とあって参拝者は殆どおらず、本堂・大師堂と順に参拝する。

    参拝を終えて階段を下り納経所へ向かう。すると入口に張り紙があり、「納経はお参りを済ませてから」とある。一昨日の観世音寺でも同旨の注意書きに接しており、やはり昨今は参拝のマナーが良くないのか?と思ったりした。

本堂・大師堂へ

 

    ご朱印を頂き大宝寺をあとにする。程なく道は右手に曲がるので道なりに進んだ…がこれは間違いで、実は曲がり始めに左へ分岐する道がありこれが正解。分岐点には次の札所・岩屋寺への看板もあったのに盲点に入ったか全く気付かなかった。う~ん悔しい、ここで15分のタイムロスが発生してしまった。 

岩屋寺への道

 

   遍路道はやがて県道12号線の峠御堂トンネル出口付近で合流する。ここからしばらくは舗装道を歩くが、交通量は至って少ない。やがて河合の集落へと通じる旧道が分岐するが、それが右写真の位置で僅かにガードーレールが切れている所から下りていく道がある。(注意しないと見過ごすおそれ有り)

 

河合の集落へ通じる遍路道

 

 

   河合の集落は今では数件の風情ある家屋が残るのみだが、かつては遍路宿が15軒もあり多い時は300人もの宿泊客で賑わったそうである。当時は今以上に山間の隘路を巡る苦行の旅であり、このような遍路宿の存在は有難かったに違いない。

    現在では遍路宿は無いが休憩施設は有るのでしばし腰を下ろす。右写真のように石仏群が往時をしのばせてくれた。

集落近くの石仏群

 

   集落をあとに岩屋寺への道を進める。すると近年設置の休憩所「やすらぎ」が迎えてくれる。自分はここから県道を道なりに進んだがこれまた失敗で、正しくは休憩所の裏から右へ分岐する旧道が正解!新設の休憩所のために気付き損ねたと書くと自分の過失を棚に上げるのかと怒られそう・・・もっとも県道経由でも岩屋寺へは行けるのだが、少なくとも往路は旧道にこだわりたかったので引き返し、ここで30分のロス(泣)。

    旧道はしばらく平坦な道を歩くがやがて「八丁坂」にさしかかる。いかにもキツそうな坂の名前で、実際に登ってみると確かにかなりの坂だった。(600Mの道程で160Mの標高差を稼ぐのでホントにシンドイ。)

いかにも急坂らしい名前の「八丁坂」

 

   坂を登りきると八丁坂の茶店跡の看板が迎えてくれる。今は茶店があったと思われる所に石仏が佇むのみである。

    自分は「ここに茶店があったのか!」と思いを巡らせた。おそらく茶店で提供する商品その他(茶・水・薪、団子や餅等の軽食も有ったか)をここまで日常的に運ぶのは並大抵のことではなく、まして悪天候の日だってあるはずだ。それを可能にしたのはお遍路さん(=お大師様)への奉仕の心があったからではなかろうか?石仏に接しながら歩き遍路が当然だった時代を振り返ってみた。

茶店跡にたたずむ石仏たち

 

   さて茶店跡から岩屋寺へは尾根道からやがて下り坂となり、岩々がそそり立つかつての山岳修験者の修行場「逼割(せりわり)行場」を通る。ここはなかなか迫力があるので立ち止まって眺めてみたいところ。

    その修行場を過ぎてさらに下ると岩屋寺の仁王門が見えてきた。本来なら裏口にあたるルートなのだがちゃんと門が迎えてくれるのがありがたい。ちなみに参道正面入口には山門が建っており、帰路はこちらから出た。

仁王門が迎えてくれる

 

 

   「第四十五番札所岩屋寺(いわやじ)」---その名の通り、境内に岩がそそりたつ光景は修行の道場たる雰囲気に包まれている。その岩肌には所々に窪みが彫られており、なんとその中で修行者は修行したとのこと・・・いやはやそもそもどうやって窪みにたどり着いたのかな??仮設足場もクローラークレーンも高所作業車も無い時代、命がけの修業を実感させる遺構だった。

本堂と岩屋

 

   境内の偉容に驚きながらもお参りを済ませ、納経所へ向かう。例によりクルマ遍路の参拝客もいるようで相応に賑わっている。自分の順番が来て納経帳を提出し「<梵字>不動明王」の揮毫を頂いたが、寺のかたが一枚の紙片を納経帳に挟んで返却された。

    その紙片には「あなたの仏様はどこにいらっしゃいますか?」との書き出しで、しっかりした心の持ち方こそが大切である旨を箇条書きにして解りやすく説かれていた。そして最後の一節、これが巡礼者を思わずはっとさせる内容であると共に今の岩屋寺さんが最も伝えたいことだと思ったので以下にその全文を記して今回の結びとしたい。

どうやって登るの??

 

   「お納経」の揮毫・朱印は、美術作品や趣味のスタンプ収集ではありません。お詣り下さったあなた御自身が心をこめて御本尊様に納められたお経を、確かにお取次ぎさせていただきます、との住職の受け取り証印です。

打ち終えた帰路にて

 

<参考>タイムテーブル

  (冬季晴天・残雪の影響なし・軽装・やや健脚の場合)

    松山駅 6:50 (JR四国バス) 8:00 久万中学校前バス停 8:02 ~ 8:25 大宝寺 8:55 ~ 12:55 岩屋寺 13:30 ~ 16:00 久万高原バス停 17:10 (JR四国バス) 18:20 松山駅

   <注意> 大宝寺~岩屋寺の往路は所要4時間となっていますが、これには本文にある2度の引返し(道の間違え)時間・約45分が含まれていることを申し添えます。

 

峠御堂トンネル近くにあるへんろ小屋

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