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神仏習合は遍路の歴史
 
 
      第六十三番 吉祥寺   第六十四番 前神寺   第六十五番 三角寺  
令和2年1月2日巡礼   

 

 

   伊予国の札所は26ヶ所と最も多いが、残すところあと3ヶ所となった。本日はその3ヶ所を巡り伊予国「菩提の道場」を打ち終えることにしたい。

    それでは本日も宿泊先・伊予西条からJR四国でスタート。今回は松山2連泊のあと伊予西条に3連泊したが、やはり宿泊先に大きな荷物を置いて歩けるのは有難く、伊予国(愛媛県)中・東部を巡礼する際には伊予西条を拠点に行程を組むのも「大いにアリ」だなと思った。

    列車は7分の乗車で伊予氷見に到着、目指す吉祥寺は駅のすぐ近くだ。

宿泊先の伊予西条からスタート

 

   「第六十三番札所吉祥寺(きちじょうじ)」---山門に「本尊四国唯一体毘沙門天王」とあり、毘沙門天が本尊であることがわかる。ちなみに同じ天部である吉祥天は毘沙門天の妃であるから、寺の名前もこの辺に由来しているのかも知れない。

    正月2日の朝7時半とあって、境内にはまだ自分だけ。

毘沙門天がご本尊

 

 

    納経を終えて境内を見回すと、本堂の向かい側の左側から「成就石」「お迎え大師」「くぐり吉祥天女」といったご利益にあずかれる石造物が並んでいて興味を引いた。来訪の際はどうぞお試しあれ。 

ご利益にあずかりたい

 

    吉祥寺を出て次の前神寺へは3Kmちょっとなので国道に並行する遍路道を歩いてみる。この辺の札所は宝寿寺(伊予小松駅)/吉祥寺(伊予氷見駅)/前神寺(石鎚山駅)といずれも駅から近いが、朝のすがすがしい空気を味わいたい気持ちが列車利用にまさったかも? 

    その前神寺に近づくと初詣客のクルマがさかんに往来し、複数の誘導員が駐車場方面へ捌いているように見えた。ところがこれは手前にある「石鎚神社」への初詣客であることがわかり、あれれっと思った次第。前神寺はもう少し先にあった。

この辺りは札所が比較的近い

 

   「第六十四番札所前神寺(まえがみじ)」---山門には「石鉄(つくりは失ではなく夫が正しい)山」の山号、これは前日の横峰寺と同じである。


石金夫山で「いしづちさん」と読む

前神寺に着いた

   

    山門をくぐり階段を上ると正面に本堂、しかし第一印象は「むっ、神社の本殿?」だった。四国霊場は江戸時代まで神仏習合であった例が多いが、今回は建物を見て直感的にそれを感じた。

    実際にこの前神寺もかつては先述の石鎚神社の場所にあったが、明治の神仏分離令に伴い石鎚神社が残り、前神寺は廃寺になるも明治時代に今の地に復興して現在に至っている。

社殿のような本堂

 

   本堂正面へ向かう。昭和47年築と比較的新しいせいもあって整然とした印象、一見すると神社のようだが、ご本尊は阿弥陀如来でありれっきとした寺院に相違ない。自分も神前読経ではないが「おん  あみりた  ていぜいから  うん」と阿弥陀如来の真言を唱えさせていただいた。

   個人的には本堂脇の大師堂等が通常の寺院建築であるため、こちらにお寺らしさを感じることができた。

仏前と言うより神前の雰囲気

 

 

   納経を終え最寄駅の石鎚山駅へ。見ての通り簡素な無人駅でホーム幅も狭いが、単行の電車に乗り込んだのは自分だけとあって何ら問題なし。

 

    次に目指すは伊予三島駅である。実は今回四国入りする前に時刻表等で調べたところ、ここから「三角寺口」方面への路線バスがあることがわかった。公共交通機関がある以上は乗ってみるのが当HPの信条(?)なのだが、経験上「~口」「~下」のような呼称の駅・停留所は目的地との距離が遠く実用に耐えないケースも少なくない。さて実情やいかに?

石鎚山駅、列車を待つのは自分だけ

 

    列車は伊予三島駅に到着、南口から新宮方面「霧の森」行きバス(せとうちバス)に乗る。ダイヤは1日4往復(土休日は3往復)と少ないので事前に調べておく必要がある。

    バスは伊予三島駅を出ると暫くは市街地を走るが、松山自動車道をアンダークロスする付近で突如右折して古い集落に飛び込んだ。この道はバスの車幅がやっとの隘路で、都心在住の者から見れば路線バスの運行自体が神がかり的。それを地元バス運転士ならではのハンドル捌きで「狭い・急カーブ・坂道」の三難を見事克服、ついに「三角寺口」に着いた。(ちなみに乗客は自分だけだった)

三角寺口バス停に降りたつ

    

     ここから三角寺へは本来の「遍路道」ではないが右写真のように道標が建っている。そのためバスを降りてどうしよう?と困ることはなく、若干ながら札所への利用が有るのかも知れない。道は狭くも舗装されているが坂を登るのは行程上避けられず、途中からは喘ぎながら登る。

三角寺への標識は整備されている

 

    やがて道は本来の(前の札所からの)道と合流し、目指す三角寺に到着する。

さあもう少しだ

  

 

   「第六十五番札所三角寺(さんかくじ)」---駐車場から山門へは階段を登り、登り切ると鐘楼付きの山門が迎えてくれる。寺の名前がちょっと不思議だが、寺伝によれは弘法大師がこの地で三角の護摩壇を造り降伏護摩の秘法を修得したことによる。

    境内は伽藍と自然が調和しており、落ち着いた雰囲気である。時折初詣客が山門の鐘楼をゴ~~~ンと「強く」撞いてしまうが、山中の札所なのでまぁ迷惑がる人もいないだろう。

駐車場から石段が伸びる

    

    納経を済ませ、伊予三島駅近くで買っておいた昼食を食う。なお本日は上手くバスの時刻に合わせて行程が進んだこともあり時間に余裕がある。そこで食後しばらく境内を歩いてみた。

    右下写真は境内の一番奥に建つ本堂で江戸時代後期の建築であるが、この本堂の屋根は京都金閣寺のものを模して建てられたとの話があるらしい。(その知識をもとに見ればそう見えなくもない)

鐘楼付きの山門

 

 

   帰路は時間があったので伊予三島駅まで歩いたみた。途中で曲がり方を間違えて東寄りに歩いてしまったが、結果的に駅へ辿り着けてホッ。

    これで伊予国の札所はすべて打ち終えた。次回からは讃岐国・涅槃の道場である。ゴールデンウィーク頃に来訪できればと思っていたところ、突然の苦難に襲われた! 自分を含め、すべてのお遍路さんの結願やいかに・・・

 

 (再び巡礼できる日を待ちます。2020/4/29記)

なるほど言われてみれば・・・

 

 

<参考>タイムテーブル

  (冬季晴天・軽装・やや健脚の場合)

    伊予西条駅 7:15 (JR四国) 7:22 伊予氷見駅 7:23 ~ 7:25 吉祥寺 7:50 ~ 8:35 前神寺 9:10 ~ 9:25 石鎚山駅 9:37 (JR四国) 10:33 伊予三島駅 11:00 (せとうちバス) 11:23 三角寺口バス停 11:25 ~ 12:05 三角寺 13:00 ~ 14:50 伊予三島駅 15:03 (JR四国) 15:31 伊予西条駅

伊予三島駅にある地元特産品のショーケース

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