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巡礼二十三日目 |
讃岐国と「ことでん」 |
第八十三番 一宮寺 第八十四番
屋島寺 第八十五番 八栗寺 第八十六番 志度寺 |
令和3年1月3日巡礼 |
巡礼23日目、残す札所は6ヶ所のみとなった。遍路装束も本日を含めあと2日しか着られないのかと思うと残念な気もするが、結願間近の他のお遍路さんはこんな時に何を考えたのだろう……
それでは先ず昨日の鬼無駅へ向かい、一宮寺へと歩こう。鬼無駅は前日の根香寺から次の一宮寺への遍路道の途中にあるため、高松宿泊での巡礼には便いやすい位置にある。(高松から2駅・所要7分) |
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早朝の高松駅から昨日の鬼無駅へ | |
朝の遍路道は曇天だが雨の心配はなさそう。道脇の電柱に今まで何度も見た英文の案内標を見つける。上の緑色が自転車遍路(20days by bicycle!!) の案内、下の赤色が歩き遍路(45days on foot!!) の案内となっている。残念ながら自分は外国人のかたに会うことはなかったが、結願間近の”オヘンロサン”にもこの時の気持ちを聞いてみたい気がする。 遍路道はやがて2方向に分岐し、自分は香東川沿いの道を採る。河川敷は広々としていて正月休みを過ごす地元のかたがちらほらといったところ。さらに歩くと県道12号線(交通量多し)に合流し、これを渡ると一宮寺は近い。 |
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英文によるツーリングと歩き遍路の案内 | |
「第八十三番札所一宮寺(いちのみやじ)」---道順通り来ると裏門(西門)から入ることになるが、反対側に立派な仁王門と石柱が立っている。お寺の名前からわかるように道を挟んで隣接する田村神社(讃岐国一宮)の別当寺であったが、江戸時代に分けられて現在に至っている。 正月三日とあって境内わきの駐車場から参拝客が次々と降り立って初詣をしている。今年こそは平穏(悪病退散)な世の中になってほしいものである。 |
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東側の門が正門(仁王門) | |
さて次の屋島寺へは20Km近くあるので、ここは公共交通利用・ことでん(高松琴平電気鉄道)に登場願おう。ことでんの一宮駅は一宮寺から近く、今回は「1日フリーきっぷ」(1,250円)を買った。本日の行程ではきっぷをバラで買ったほうが若干(数十円)安いのだが、何度も切符を買う手間が省けるのと切符が記念に残るのでフリーきっぷにしてみた。やって来た電車は懐かしの京浜急行700系であった。
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塗装は変われど京浜急行700系電車と1日フリーきっぷ | |
瓦町駅で琴電志度行きの電車に乗換え、潟元(かたもと)駅で下車する。ひとつ先に琴電屋島駅があるが、遍路道はちょうど潟元駅脇の踏切を渡るルートとなっており、ここから歩くことにした。 |
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潟元駅から左の道を進む | |
屋島寺は山の頂上にあるためこれから登り坂になるが、正面を良く見ると山の木々が斜めに途切れているような線が確認できる。これはかつての「屋島ケーブル」(2004年まで運行されていたケーブルカー)の跡ある。 今の屋島への交通は屋島スカイウェイ(かつての有料道路・屋島ドライブウェイ)経由のマイカーもしくはシャトルバス(ことでんバス)がメインのようである。 |
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斜めに伸びる屋島ケーブル跡 | |
それでもやはり正月の初詣客が麓の駐車場にマイカーを停めて自分の前後を歩いている。この道は連続登りのつづら折りではあるが、よく整備されているので一般のかたにも十分利用できる感じであった。 |
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ここは旧跡「食わずの梨」、まだまだ登る | |
「第八十四番札所屋島寺(やしまじ)」---屋島の地名は源氏・平氏の「屋島古戦場」で良く知られ、屋島合戦の供養碑もある。仁王門・四天門をくぐり境内に入ると人・人で、山頂の駐車場までクルマで来た初詣客も多いことを実感させる。 参拝の際に手水舎で静かに波打つ水の様子が目をひいた。と言うのも昨今のコロナ禍で、参拝者同士の接触回避の観点から手水舎の給水を中止している札所が多かったからである。ここ屋島寺ではひしゃくは無いものの手洗いは禁止されておらず、札所ごとの判断なのかもしれない。 |
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ようやく屋島寺に辿りつく | |
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同心円状の波紋(手水舎) | 初詣客が多い屋島寺境内 |
屋島寺から次の八栗寺へは境内の東大門から東へ向かう。木々の中を少し歩くと右写真のように視界が開け、檀ノ浦の入江を挟んで八栗寺のある五剣山が聳えている。(下関の壇ノ浦はつちへん、ここの檀ノ浦はきへん) ところでこの写真は風光明媚で明るい印象だが、実はこの撮影地点の背後には某ホテルの遺構(廃墟)がおどろおどろしい雰囲気で残置されている。全く昼なお不気味な存在で、夜ともなれば地元ではさぞ有名な心〇スポットなのだろう…。 |
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檀ノ浦を挟んで八栗寺方面を見る | |
登った分を降りるのは当然としても、往路よりも短い距離で一気に下るため坂がキツく、一般の参拝客ならまず通らない遍路道なので隘路そのものである。そのうえ右写真の注意書きにビビった。「歩きお遍路さんへ」と記した内容には「(前略)また、イノシシが路肩などを掘り返し、落石や傷んだ所もあります。(後略)」とある。 イノシシ(たとえウリ坊でも)出るな~~と祈りながら道脇のトラロープを手掛かりに体を半身にして何とか降り切ることができてやれやれ。もしやここは最後の遍路転がしかな?とも思った。
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危うくもありたがい注意書き | |
ようやく人家の気配がしてきて助かったと思うと、行く手に柵が…。なんと「いのしし侵入防止柵」で、通行の際に開閉をきちんとすべしとの内容だった。つまり今自分のいる側がイノシシゾーンと言うわけだ。(こわ) しかし幸いに今回は遭遇することもなく、さしずめお大師様がイノシシとお遍路さんを上手く回避してくれたのだと考えたい。 |
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通行後はちゃんと閉める | |
なんとか山を降りきり、檀ノ浦を左手に見ながら今度は五剣山方面へ再度登ることになる。歩き遍路はひとりトボトボだが、やがてクルマの往来が多くなり右写真の八栗ケーブル・八栗登山口駅に着いた。クルマ参拝の場合もここからケーブルカーに乗るわけだ。 |
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ケーブルカーの登山口駅 | |
それでは八栗ケーブルに乗ってみよう!片道600円の切符を買い、改札を入ると右写真のケーブルカーが何とも個性的(クラシック)なつらがまえで停車しているではないか。なんでもこの車両は開業時(昭和39年/1964年)からの車両だそうで、なるほどタイムマシン的な雰囲気満点である。 車内は八栗寺への初詣客が多い。所要4分で山上駅に着いた。 |
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なかなか個性的なつらがまえ | |
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下り電車と交換 | 山頂駅に到着する |
山上駅からは道なりに進むと八栗寺の境内に入るが、いきなり鳥居が現れて「聖天宮」の掲額が確認できる。これは八栗寺境内の聖天堂(聖天=歓喜天)に通じる参道だとわかる。 |
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ここも初詣客で賑やか | |
「第八十五番札所八栗寺(やくりじ)」---縁起によれば弘法大師が唐の国で密教を学んだ後、その内容の成否を占うため植えた八つの焼き栗が全て成長繁茂したことから「八栗寺」と名付けられたと伝えられる。 また八栗寺境内の背後には五剣山が聳え、威風堂々とした感じである。かつて弘法大師がこの地で修行していた際に五本の剣が天から降って来たので、これを山に埋めて鎮護としたとも伝えられる。 |
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「真言宗八栗寺」の表札を掲げる山門 | |
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志度寺へ向かう | 五剣山をバックに |
八栗寺から次の志度寺へは距離にして6.5Km、ちょうど行程の半ばにことでんの「八栗新道(やくりしんみち)」駅が有るので乗ってみた。この付近はJR四国(高徳線)も並走しているが、駅名は讃岐牟礼(さぬきむれ)と全く違う駅名となっているのが面白い。 電車は志度湾に沿うようにのんびりと進み、終点の「琴電志度」駅に着いた。ここから1Kmほど歩くと志度寺である。 |
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八栗新道駅で(写真は上り電車・瓦町行き) | |
「第八十六番札所志度寺(しどじ)」---到着は16時、夕刻になってしまったせいか初詣客は殆どおらず、静かな境内の参道を進む。 実は志度寺には過去2回訪れている(観光目的)が、遍路としては初めてである。来訪の度に境内の植栽の多さに志度寺らしさを感じさせてくれる。 |
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志度寺山門と五重塔 | |
境内には志度出身の平賀源内(江戸時代)の墓もある。近くには「平賀源内記念館」もあり、以前に訪れた時には彼の収集した所蔵品(洋書の百科事典など)が目を引いたことが思い出される。 参拝を終えて境内の五重塔(右下写真)を眺める、四国遍路の札所で五重塔を擁する札所は竹林寺・本山寺・善通寺とここ志度寺の4ヵ寺であるが、夕刻の来訪とということもあり風情満点、冬季は樹木の繁茂も無いため映えるのかもしれない。
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境内は植込みが多い | |
これで本日は第八十六番札所志度寺まで打ち終えた。残る札所は2ヵ寺のみである。明日は結願を迎えるという達成感と終わってしまう巡礼への惜別感が織り交ざる、何とも形容し難い複雑な気持ちにならずにはいられなかった。
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夕暮れの五重塔 | |
<参考> (冬季晴天・軽装・やや健脚の場合) 鬼無駅 8:25 ~ 9:50 一宮寺 10:10 ~ 10:18 一宮駅 10:21 (琴電・瓦町駅乗換) 10:53 潟元駅 10:55 ~ 11:45 屋島寺 12:15 ~ 13:50 八栗登山口駅 14:00 (八栗ケーブル)14:04 八栗山上駅 14:05 ~ 14:10 八栗寺 14:30 ~ 15:20 八栗新道駅 15:37 (琴電) 15:45 琴電志度駅 15:45 ~ 16:00 志度寺 16:30 ~ 16:45 琴電志度駅~(琴電/瓦町駅乗換で宿泊先の最寄駅・高松築港駅へ) |
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折返し瓦町行きの電車が到着、さぁ帰ろう |