キミに笑顔をもう一度(4)



部室に戻ってきたかすみは無言のままPCを立ちあげるとULにアクセスした。
零は部室に戻るとそわそわと歩きまわり落ち着きが無い。
対照的な二人。
かすみはアクセスするとすぐに事の次第を掲示板にアップした。
トイレでの儀式のこと、黒い霧のこと、そして巫子が居なくなったこと。
出来るだけ詳しく書き込んでいった。
そんな冷静なかすみに零は怒りを覚えた。
「かすみ先輩、部長が心配じゃないんですか?」
「心配ですよ」
「だったら早く助けに……」
「どこにですか?」
「………」
「それにどうやって助けるんですか?」
「………………」
「何の対策もなく動いてもダメですよ。
 どこにいるのか、どうやったら助けられるのかをしっかり把握しないと、自分たちが捕らわれてしまいます」
かすみの冷静な言葉に何も言えない零。
かすみは書き込みが終わると零の方に向き直った。
「今、同じようなことが無いかネットで調べています。
 目撃者あるいは噂、黒い霧についての情報を集めていますから、少し待ちましょう」
そう言ってかすみは冷蔵庫から(何故かこの部室には冷蔵庫がある)お茶を取りだしてコップに移し始めた。
お茶は綾○ではなく十○茶でもない、お〜○お茶(伏せてねぇ)。
お茶菓子(虎○の羊かん)まで用意して準備万端、麻雀の役は満貫。
のんびりとお茶を飲みながら待つことにした。
その間に零に『Urban Legend』について説明する。
このサイトは都市伝説を中心としたオカルトサイトで、各地のオカルト情報が集められていること。
常連が何人かいて運営者とともに情報管理をしていると言うこと。
オフ会も頻繁に行われ全国的に交流の輪が広がっている、その世界では大手のサイトであること。
ただし、常連および運営者はオフ会などに一度も姿を見せず、運営者は居ないのではないかと言われていること。
謎のサイトではあるがその情報の信頼性は同じようなサイトの中でも群を抜いていると言うこと等々。
「先ほどの赤狐は常連でその情報は疑う余地がないくらい正確で信頼性は高いです。
 ちなみに運営者と常連はハンドルネームに頭にカラーを入れた動物の名前を使用しています。
 常連と認められた人に運営者が与える名誉あるハンドルネームなんです」
「な、なんか凄いんですね」
「ちなみに私は美少女魔導師を、巫子は雅な舞姫を名乗っています」
自ら美少女を名乗るとは大胆というかなんというか……だが零は何故か納得している。
ただし、雅な舞姫についてはどこが雅なんだと心の中で突っ込みを入れている。
「一応巫子は神社の巫女ですので神楽舞も踊ります。
 ですから雅な舞姫なんです」
零の心を見透かしたように説明するかすみ。
そんなこんなで待つこと五時間と十三分……ということはなく五分もしないうちに黒鴉からメールで連絡が入ってきた。
「あら、黒鴉さんからとは珍しいですね」
「黒鴉というからには……」
「はい、黒鴉さんは常連ですよ。ただ常連の中でも滅多に現れない人なんです。
 学生なのか社会人なのかわかりませんが、情報収集能力が高くいろんなことを知っているんですよ」
そう言いながら届いたメールに目を通すかすみ。
一通り読み終わるとULのチャットルームに入った。
「あ、居ましたね」
チャットルームに黒鴉の名前を見つけるとすぐにルームに入った。
『お久しぶりですね、黒鴉さん』
『気になることがあって、調べていたからね』
『そうですか、早速で申し訳ないのですが、本題に入りますね』
『トイレの花子事件だね。
 私が気になっていたのはそのことで、色々と調べていたんだけどね。
 どうやら、かなりやばい系の連中らしい。連中といっても一人なのか数人なのかわからないけど』
そう言って詳しく話す黒鴉の内容はこうだった。
トイレの花子さんが噂されるトイレで必ずと言っていいほど人が行方不明になる事件が起きていること。
その人物が長谷川花子であること。ただし長谷川花子を見た者はいないので実在するかわからない。
この辺りまではかすみたちが調べたとおりである。
行方不明になる前、必ずと言っていいほど黒い霧が現れると言う。
その霧に包まれ居なくなるのだと。
『黒い霧にはかなり強い怨念が感じられるという。その霧を見た者は殺されると思うらしい』
「怨念ですか・・・」
零はピンとこないため、首をかしげる。
霊媒体質とはいえ怨念などを感じることはできないからだ。
「黒い霧に怨念がこもっておんねん」
そんな零にかすみがくだらないギャグを飛ばす。
思わずズッコケる零。よし○とバリのズッコケ方だった。
続いて黒鴉が語ったことによると、長谷川花子以外も行方不明になっているという。
この事件が発覚した時期に一人の病弱な女の子が亡くなった事件があった。
苛められていたらしく、発見された時はトイレに閉じ込められていたそうだ。
閉じ込められた際に発作を起こしそのまま亡くなってしまたっと言うのが死亡原因とされている。
調べでは女の子がトイレに入った際に苛めっ子が花子に扮して脅して閉じ込めたそうだ。
それが原因で発作が起きたらしいが、苛めっ子は気づかずにそのまま帰宅。
閉じ込められた女の子は発作が酷くなり亡くなったため、発見当時は苦しみの表情だったそうだ。
しかも吐血した血でドアに苛めっ子に対する恨みを綴っていたと言うからそうとう恨んでいた模様。
苛めっ子は退学となりそのまま引越したという。
今回の事件はもしかしたら、この事が関わっているのではないかと言うのが黒鴉の意見である。
『長谷川花子という名前の子が行方不明になっているのがその証拠ではないかと言う噂だ』
『そうですか、ありがとうございます。こちらでももう少し調べてみます』
かすみはそう言うと別れを告げチャットから出てPCを落とそうとうした。
だがメールが来ていることに気づいたかすみは、メールの確認を始める。
「誰からですか?」
零が気になったのか、かすみに尋ねた。
「さすがですね」
それだけ言うと零を見てふふふと笑う。零はその笑みを見て顔を引きつらせた。
「これからが大変ですが……何とかなると思います」
意味深なことを言いながらPCを落すかすみ。
零はこれ以上聞いても教えてもらえないだろうと思い、何も聞かずに溜息だけをついた。


目次   戻る   続く