落ちると怖い怪談話(2)



いつからあったのか。誰が造ったのか。
旧校舎の焼却炉のそばに謎の階段がある。
どこにも繋がっていずただそこにあるだけ。
目的のわからない階段。
その階段を下から数えて上ると13段ある。
しかし、上から数えて下りる下りると12段しかない謎の階段。
その階段から落ちてしまうと怖い目にあってしまうと言う。

「という噂がまことしやかに流れているのです。
 噂は10年以上も前からあるそうです」
かすみはそう言ってにっこりと笑う。
何故か零も吊られて笑ってしまう。
「それにしても13段って中途半端な気がしますよね。
 ところで怖いことってどんなことなんですか?」
酷い目にあうのは嫌だなと思いながら零が聞いてくる。
かすみは何も答えずただ笑っているだけだった。
「も、もしかして、この前みたいな怖いことですか?」
音楽室のことを思い出して身を振るわせる零。少し泣きそうな顔もしている。
その姿をかすみはじっと見つめている。
何を思って零を見ているのか……ただ単に美少年の怯える姿を堪能しているだけなのかも。
零の見た目は可愛らしい男の子。だとすると実はかすみはショタコンなのかもしれない。
「初めの頃の噂ではたいしたことは無かった。
 せいぜい受験に落ちるとかオチ要員になるとかなんだが……」
「なんですか、オチ要員って?」
「零くんのことですよ」
「えーっ、ぼ、僕はオチ要員なんですか?」
かすみの言葉に大げさに反応する零。
完全にかすみに弄ばれているのだが、本人は気づいていないようで。
そんな零を見てこのままかすみの玩具に決定だなと巫子は密かに思う。
「冗談はさておき、最近の噂は奈落に落ちるという噂がある。
 つまり死ぬってことだな」
「ええっ!?」
「まあ大げさな噂なんだが、その階段で落ちるといつまでも落ち続け最終的には床が抜けてそのまま奈落へ行くというものだ」
巫子は興味ないといった感じで、読みかけの本を読み始める。
どうやら心霊がらみではないと思っているようで興味が無いようだった。
もっとも読んでいる本のタイトルは超○い話なのだが。
「でも噂だけならいいのですが、確かめようとした人がいたそうで……」
そう言ってかすみが話したのは数人のグループの話。
良くある話でゲームに負けた罰ゲームに噂の真相を確かめると言うもの。
罰ゲームを受けた男子生徒は階段を上ったらしいが、その後どうなったのかはわからないそうだ。
学校にも来なくなり、その場にいた生徒も他の学校へ転校していった。
もちろん先生たちはそんな事実は無いと言うが、生徒会の方から真相を突き止めるように依頼が来た。
旧校舎は実験棟となっており高等部だけでなく中等部も使用するので放っておけないとのこと。
巫子は自分たちで調べればいいのにと愚痴っていたとはかすみの談。
とりあえず、新入部員の零に調べさせるということで話はまとまった。
「……というわけなのよ」
「というわけじゃないですよ。嫌ですよ僕一人なんて」
「大丈夫、私たちが見ていてあげますから」
「ちっとも大丈夫じゃなーい!」
「それに零くんには強い味方がいますから心配ありません」
「強い……味方?」
言われても何のことかわからない零は首をかしげてしまう。
音楽室での事件で零の身体には倭健尊が眠りについている。
何かあれば呼ぶと良いと言った倭健尊。
もし何かあれば倭健尊を呼んで解決すればいい。
巫子もかすみもそう思っていた。
もっともどうやって呼ぶのかは、未だに謎のままなのだが。
そんなことはまったく知らない零には、なんのことだかさっぱりわからない。
そのためよけい不安になってしまう。
「話もまとまりましたし、早速現場に向かいましょう。
 まずは本当に13階段なのか調べてみないといけませんから」
かすみがそう言って部室を出ようとする。
零はまとまっていないと内心で思いながらも、言っても聞き入れてもらえないだろうと思い言葉にするのを諦めた。
結局、零も一緒に行くことにした。



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