TopNovelさかなシリーズ扉>さかなの箱・3



〜こうちゃんと花菜美・10〜
…3…

 

 

 …誰? 何なの?

 とぎれのない音。それが私を意識の深いところまで追い込んでいく。

 

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 実のところ。

 こうちゃんは、少年野球の関係の連絡はほとんど携帯でしている。その方が家の電話より捕まりやすいのだから、当然だ。だから、その関係の電話って、実はあんまり受けたことのない私。知ってるのは、いいとこ他のチームの監督さんだ。

 それだけじゃない。

 あろう事か、少年野球の関係者の皆さんには、私とこうちゃんが結婚したことすら、あまり広まってないのだ。信じられないんだけど。こうちゃんは何にも言わないで、今までと変わらない生活をしていたらしい。丁度、結婚式がオフシーズンだったし、去年はこうちゃん、年間番組の収録に関わっていたから、ほとんど野球関係に関与できなかったし。

 お正月明けに焼き芋大会をしたと言ったけど。その時に私もお手伝いに行った。そしたら皆さんの目が、不思議そうに私を見てるのが、妙に気になる。まさか、こうちゃんが何も話していなかったとは知らなかったし。

「ねえ、ねえ。お姉ちゃん…誰!?」
 人なつっこいタイプの子が、おもむろに話しかけてくる。…は? とか思ってると、その後ろから親御さんらしき人もやってくる。

「監督の…妹さんですか? 初めて見るお顔なので…」

 その後。私の正体を知った、皆さんの驚かれたこと、驚かれたこと。もう申し訳ないくらいだった。あとから聞いたら、本当に知ってたのは代理でチームを世話してくれていた方ひとりだった。その方もまさか、ここまで内密になっているとは知らず、連絡もしなかったと言っていた。だって、その時、もう結婚して2ヶ月経っていたわよ。

 私は、そりゃ、面白くなかった。

 だって、そうでしょう? ある父兄の方は縁談の話を持ち込もうと思っていたと言うじゃないの。監督みたいなおとなしい方はなかなかお相手が探せないでしょうからって。私は知らない間に、二股をかけられる所だったらしい。もう、いい加減にしてよねっ!


 …こうちゃんは。ものすごい照れ屋さんで、付き合っていた頃から職場関係者の方が出没しそうな場所では手も繋いでくれなかった。でも、そうは言っても…もう結婚したんだよ? 夫婦なんだよ? 普通、新婚さんなんて、職場とかで奥さんの自慢話をするもんじゃないの!?

 高校の時の担任の先生はそうだったわ。新学期に自己紹介するとき、いきなり自分の名前の横に奥さんと1歳になる愛娘の名前を書き、一頻りのろけてくれた。英語の先生だから、奥さんをハニーと呼ぶ。ついでに娘さんは恵理衣(エリー)ちゃんと 言ってたっけ。将来外国に行って通用するような名前にしたいって

 …ああん、どうしてそんな10年近く前のことをすらすらと思い出すのっ!!

 

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「花菜美さん…?」
 受話器を握りしめたまま、ふるふるしていると。背後から声がした。あれ? 千春くんだ。

「あ、お帰りなさい〜早かったね」

 くるりと振り返って言う。大泉家一番の優男はきょとんとした顔でこっちを見ていた。

「う〜ん、レポートが終わってなかったから。それより、どうしたの? 電話、誰から…?」

「…え、あ…」
 私は慌てて受話器を戻しつつ、思考回路を巡らせた。

「こうちゃんへの電話、知らない人から」

「ふ〜ん、珍しいねえ…」
 それだけ言うと、キッチンに入っていく。コーヒーでもいれるのかな? そこまでは手を貸さない、セルフサービスだ。

 

 …少年野球関係の電話、知らない人からの電話。その時はそうやって信じようとしていた。何故だか分からないけど、自分で自分に言い聞かせていたんだ。

 

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「あ、そうだ。こうちゃん、…あのね」

 真夜中になって戻ってきたこうちゃん。私は子守で疲れたし、明日も仕事だからと先に休んでいた。でも、玄関のガラス戸の音で目が覚める。時間をかけてのろのろと起きあがって部屋を出て行くと、こうちゃんは台所でウーロン茶を飲んでいた。そばによると、ちょっとだけお酒臭い。

 一頻り、今日のことなんかをしゃべったあとで、ふと思い出す。

「さっき、…ええと、9時頃だったかな? 電話あったよ、守谷さんって方から」

「あ…、ああ」
 こうちゃんはすぐに分かった、と言うように反応した。

「うん、美由紀ちゃんでしょう? すぐに携帯に連絡が来たから。ごめん、地下の店で。電波の良く届かないところだったんだ」

 …美由紀、ちゃん…?

 こうちゃんの口から、女の人の名前がこぼれ落ちた。

 それは私にとって、すごく新鮮な驚きだったのだ。こうちゃんは職場にもあんまり女性の配属されないところで、仕事上のつき合いのある女の人も少ないみたい。だからこうちゃんが口にする女性の名前って、みんな親戚とか身内とかそう言う人だった。

「…あれ? どうした…?」
 私があんまりボーっとしていたので、こうちゃんが不思議そうに見つめてくる。

「早く寝ないと、明日起きられないよ? 月曜日は一本早い電車で行くんだろ…?」

 そう言いながら、こうちゃんはさっさと洗面所に向かう。お酒を飲んで戻った日は夜、お風呂に入らないことが多い。心臓に負担がかかるからなんだって。そう言うときは、朝、シャワーを浴びているみたい。

 やがて、水道を出して歯を磨く音が聞こえていた。でも、私は突っ立ったままずっと動けなかった。そして、今夜はきっと眠れないと思ったのだ。そして、事実、ものすごい寝不足のまま、朝を迎えた。

 

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「あ、水橋。今、大丈夫か?」
 翌日、職場で。携帯が鳴ったから開くと、こうちゃんからだった。お客様の応対をしていないときだったから、出る。

「なあに? …どうしたの」
 一応、席を立って、入り口から死角のロッカーの影に寄る。給湯室に入っちゃっても良かったんだけど、そうすると入り口が見えないのだ。今は、例の如く私がひとりで留守番をしている。他の社員さんと社長は外回りだ。ちらちらと視線を動かしながら、話を続ける。

「あのな…昨日の今日で申し訳ないんだけど。ちょっと予定が入っちゃって、今日も夕食いらないから。よろしくな…?」

「…え? あ…、うん。なあに? また、飲み会…?」
 二日も三日も続くと、さすがにちょっと心配になる。ただですら、年度末・年度初めは色々あるんだもん。

「いや…ちょっと。早めに帰るから、ごめん」
 そこで電話が途切れた。いつもながらの用件のみの会話。無駄な話というものをこうちゃんはしない。だから、私がこうちゃんと電話していると仕事の電話と区別が付かないんだって。とても恋人としゃべっているみたいじゃないって、独身の頃にも言われていた。

 …まね。

 いいでしょ、こうちゃんにだって、色々とおつき合いがあるんだし。私にだって、もちろんあるし。晩ご飯とか食べてくるときは、前もって言えばいいの。みんな勝手にどうにかしてくれる。だって、今まで何年もそうしてきたんだもん、当たり前のことなんだ。

 ただし、みんなが外で食べてくるときは決まった時点ですぐに私に連絡を入れるようにして貰ってる。だって、みんなひとりひとりの「食欲」がものすごいんだもん。ひとり違うと、揚げ物が5個違うのよ? 3人重なってご覧なさい、もう作り置きのおかずで冷蔵庫が棚ひとつ、いっぱいになっちゃう。
 ただでさえ、時間がまちまちだ。デパート勤務の新司さんも早番と遅番の日では帰りが違うし。千春くんはデートやサークルの飲み会があるし。…ほとんど家で食べるのは雅志くんくらいかなあ…。

 こうちゃんも、面倒くさいだろうなと思う。以前は何の気兼ねもなく飲み会の予定とか入れたのに、今は私に連絡して承諾を得なくちゃいけないんだから。きっとこの電話を掛けるのだって億劫だなと思っているのかも知れない。
 それに、私としても。飲み会だと言われれば、誰と飲むのか、どこで飲むのかと気にかかる。恋人時代は干渉し合わなかった部分に乗り込み始めている。それに戸惑っている。このさき、どうなっていくんだろう。子供でも出来て、学校行事とかあったら、もっと大変になるかも知れないし…。

「あ〜、今日はグラタンにしようかな〜」

 こうちゃんもいないし、新司さんも遅番だ。だったら、お皿に盛って用意しておけば、帰宅時間に合わせてオーブンに入れればいい。みんながいっぺんに食べるときは、おでんとかお鍋とか全員でつつけるものにする。あじの干物だって、魚焼きに入るのは2匹。全部焼き終わる頃には最初のが冷めてる…。朝の塩鮭はフライパンで焼いてるのだ。その方がたくさん入るから。

 マカロニのグラタンと、グリーンサラダ。じゃあ、奮発して牡蠣フライでも買おうかな?

 頭の中でメニューを組み立てながら、私は大きく伸びをしていた。

 

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 遅くならないから、と行ったとおり。こうちゃんはその夜、9時過ぎに戻ってきた。あんまり早かったので予定が変わったのかと思ったほどだ。でも夕ご飯は食べてきたという。

「お〜い、降りて来いよ〜!」
 こうちゃんは私に話しかけるのとはちょっと違う「お兄ちゃん」の口調で二階に声を掛けてる。どたどたと物音。千春くんと雅志くんが不思議そうな顔をしながら階段を下ってくる。ちなみに新司さんは台所で夕ご飯を食べていた。

 こうちゃんは居間のテーブルの上に紙袋を置くと、その中から、アルミ箔に包まれた長四角の物体を出してきた。ちょうどこうちゃんの両手に乗っかるくらいの大きさだ。

「美由紀ちゃんから、お土産だって。皆さんでどうぞって…彼女が焼いたって言ってたよ?」
 こうちゃんは弟たちににこにこ話しかけながら、アルミ箔を広げた。その中から、きつね色のパウンドケーキが出てくる。

 そして。

 そのケーキを目の前にして、嬉しそうに身を乗り出してきたのは、私にとっては意外な人物だった。

「え? 美由紀ちゃんが。どうしたの、兄ちゃん、美由紀ちゃんに会ったのっ!?」

 そう言って、あらかじめ包丁で切り分けてある一切れを頬張る。弾むような声で訊ねたのはなんと雅志くんだったのだ。

「ああ、ちょっとな…」
 こうちゃんは何とも言えない感じで目配せしながら、自分もぱくっと口に入れた。

「そうだ、水橋。お湯を沸かしてくれよ? 紅茶でもいれて。せっかくのケーキだから…」

 私が黙ったままで突っ立っていると。こうちゃんはケーキを均等に分けながら、私に言ってくる。のそのそと無言のままで立ち上がって、台所に行く。やかんに水を汲みながら、背中で兄弟の会話を聞いていた。

「…へえ。美由紀ちゃんの子供、大きくなっただろうなあ。隆司くんだっけ、…もういくつになったの?」
 こう訊ねたのは千春くんだ。

「ああ、今年小学校に上がったんだよ、でも少し喘息が出るみたいなんだ。普段は元気のいい子なんだけどな…」

「美由紀ちゃんに、似てる? じゃあ、可愛いんだろうな…」

 次々に質問が出て、こうちゃんが答えて。私の全然知らなかった「美由紀ちゃん」でみんなが盛り上がっている。何だか兄弟と自分との間に見えない壁が出来たような、そんな複雑な気持ちになっていった。

「野球がやりたいって言うんだけど。他のチームは病気を理由に断られてしまうそうなんだ。だから、俺のところならどうにかなるかなって、美由紀ちゃんが…」

「じゃあ、試合の応援に行けば、会えるかも知れないの? 嬉しいな、今度はいつ…!?」

 雅志くん、本当に楽しそう。そんなに美由紀ちゃんと言う人の話が楽しいのかしら? まあ、もともと私の前ではそんなに口数が多い方じゃない。むしろ、しゃべることを遠慮してるみたいだ。だから私の方もどう対処していいのか分からないことがある。

 みんなの共通の知り合いの「美由紀ちゃん」の息子が、小学校に入って、少年野球をやりたいと言い出したらしい。この辺は住宅地でそう言うジュニアのためのチームもたくさんある。でも、身体に何か持病がある子はどうしても断られてしまうのだ。
 それで、「美由紀ちゃん」はこうちゃんを頼ってきた。こうちゃんが少年野球の監督を引き受けていることを誰からか聞いたらしい。

 …初めて聞く話ばかりだった。

 私は何とも言えない引っかかりを感じたままで、紅茶を入れる。そして台所のテーブルの上に人数分並べると、居間を突っ切って部屋に戻ろうとした。

「…あ、水橋?」
 こうちゃんが、慌てて呼び止めてくる。

「水橋の分もあるぞ、食べなよ。これ、昨日の電話のお詫びだって、美由紀ちゃんがくれたんだから…」

 その言葉には、千春くんが反応する。

「へえ〜、昨日の花菜美さんの取った電話って、美由紀ちゃんだったんだ。知らない人とか言うから、セールスかと思ったよ…」

 振り向いた私の顔は。どこか青ざめていたのかも知れない。自分の体温というものがどこにあるのか分からなくなっていた。

「…いらない、おなかいっぱいだから。みんなで分けちゃって」

「おい、一切れくらい入るだろ? 美由紀ちゃんの手作り、上手いぞ、食べればいいのに…」
 こうちゃんが、いつもの口調でのほほんと言う。

 もうやだ、全然分かっていないっ! 私が言いたいことを全然分かっていないのだ。こうちゃんって、もう、全然、デリカシーがない…っ!!

「い、いらないっ! とっといてくれても絶対に食べないっ! だから、食べちゃってっ!!」

 

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 そのまま、部屋に飛び込む。ここはこうちゃんと私の部屋だったけど、こうちゃんもあれ以上追ってくる様子もなかった。自分でも、気持ち悪くなるくらいのどろどろした気分に気付く。それが、胸を突きあげてくるのだ。

 こんなこと、言うつもりじゃなかったのに。どうしてケーキの一切れや二切れで、そんな風に気分を悪くしなくちゃいけないんだろう? きっとみんなも、こうちゃんも驚いたと思う。私が何で急に叫んだかも分からないと思う。

 …だって。

 こうちゃん、「美由紀ちゃん」…って、呼んだ。


 こうちゃんは結婚してからも、私のことを旧姓の「水橋」で呼ぶ。これは一応「おつき合い」らしきものを始めて、ふたりきりでどこかに出かけたりするようになって。私が「こうちゃん」と呼ぶようになってから、ずっとだ。
 本当は「花菜美」って、呼び捨てか…さもなくば「花菜美ちゃん」とでも呼んで欲しかった。そうやってお願いしてみた。でもこうちゃんは真っ赤になって、それは出来ないって言った。

 だから、我慢をしたんだ。

 でも、ふたりの関係が変わっていけば、いつかは自然に呼び方も変わるんだと信じていた。ましてや、結婚して、きちんと改姓したのだ。私は今、「大泉花菜美」であって、「水橋花菜美」ではない。「水橋」と呼ばれて返事をする筋合いもないのだ。あまりしつこく詰め寄ってもどうかと思って、今までは何も言わないできた。


 …でも、こうちゃん…。

「美由紀ちゃん」って、呼ぶんだね。

 みんなが知っているんだから、近所の幼なじみか何かなのかな? こうちゃんの兄弟5人にとって、特別の人。あの雅志くんでさえ、笑いながら訊ねるような人。

 私、猛烈に嫉妬していた。見たこともない人に。ものすごく嫌な考え方だけど、本当にケーキを焼いてこうちゃんに持ち帰させるなんて、余計なことなんてしないでよと思う。

 こうちゃんも、こうちゃんだ。

 晩ご飯いらないって、「美由紀ちゃん」と食べていたの? 私、結婚してからこうちゃんと外食したことなんてない。たしかに家では一緒に食卓を囲んでいる。ボーナスが出たときは家族で食事に行った。でも外で、ふたりきりって、そんなのはない。

 ずるい、ずるいよっ…! こうちゃんは、ずるいよっ!!

 


 時計は9時半を指していた。まだ駅前のスーパーはやってる時間、11時までだから。私は薄い上着とお財布を持つと、外に出る。

「…み、水橋っ!?」

 玄関の戸が開くのを聞いたのだろう。こうちゃんが裸足のままで飛び出してくる。私は静かに振り向いた。

「…お買い物、行ってくる」
 それだけ言うと、そのままこうちゃんに背中を向けた。後ろから、別に夜に行かなくてもいいだろうとか、誰かに行かせろよとか、色々言ってるのが聞こえたけど。でも、もう振り向かなかった。

 

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 どさっと、居間のテーブルに買い物袋を置く。部屋から出てきたこうちゃんが、さすがに驚いていた。

「…私。明日から、当分、残業で遅くなるから。ご飯は作らない。みんな、これで適当にやってよ…?」

 スーパーの棚ひとつ分買い占めたみたいな、買い物袋が5個。でも大きさの割にすごく軽かった。インスタントラーメン、カップラーメン、インスタント雑炊。スパゲッティーに乾うどん。鍋焼きうどんセットにキムチ鍋セットにもつ鍋セット。山ほどのおつまみ。

 こうちゃんは、何も言わなかった。

 そして、私が本当に、1週間12時近くに戻る生活をしても。それでも。こうちゃんは、何にも言わなかった。私が戻ってきたときにお布団に潜ってる日もあれば、まだ帰ってきてない日もある。ひとり分の布団を出して敷いて、潜り込むのはとても冷たかった。

 お互いに、言葉のないまま、時間が過ぎていく。私は大切なものを取りこぼしているような悲しい気分のまま、それでも帰宅した。

 …私の帰るのは、この家だけだから。



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