長男のサッカーも、小学三年生になって新しいサイクルが加わった。地元のプロサッカーチームが、地域のサッカー育成の一環として、小学校高学年の中からセレクションされた子たちを、週一回クリニックをしてくれるというシステムがある（∪１１、∪１２）。そこに今年から、Ｕ１０（アンダーじゅう）に加えてＵ９（小学３年生）も新しくクリニックをしてくれるというのだ。地域のレベルアップは当然目論みに含まれるが、何よりも選手の発掘育成が重要なことは言うまでもない。セレクションではなくて、監督推薦という形だが、長男も加わることができた。

　その初回があったので、夫婦で行ってきた。二人で行くことはめったにない。平日でもあるし、仕事を早めに仕上げて、早めに会場に行き、終わってからすぐに野菜の配達に出る、という行程だが、それほどまでにしても行ってみたいと思わせるものがあった。単なる親ばかとも言えるが、現代のスポーツでは少年時代の選手の育成は親しだいである、という側面があるのも事実だ。いや、正直に言えば、スポーツ親子に対して、昔は少し冷ややかな冷めた見方をしていた。しかし、長男がサッカー選手になりたい、と言い出してから考えが変わった。サッカー少年団や試合のない日の練習が一番重要であることは明白だし、その練習方法に関わるのは親しかないのである。

　通常は連れ合いだけが長男についていくことが多いのだが、僕には明確な目的があった。集められた子供たちのレベルを知ることと、どのような練習をさせるのか、ということだ。集められた子供の数は５０人弱と予想よりも多かったが、３０数チームもサッカー少年団（クラブも含む）があるのだから当然の数字であろう。短い時間を濃い内容で練習していくのは、見ている側としても気持ちがよい。ミニゲームも子供一人につき４試合と、時間を割いていた。

　長男は、充分その中でやっていけそうだった。何よりも、プレイしていて実に楽しそうに見えた。何点か得点も決めていて、コーチから「得点を決めても悲しそうな顔をしている」と冷やかされてもいた。それは、ほとんど初対面のような子供たちとの試合であるから、喜びを抑える意味があったと思われる。練習後に、「お前、楽しそうだったな」というと、「うん、めっちゃ楽しかった」と答えた。それはそうだ。サッカーの上手な子が集まるのだから、その中でプレイする楽しさと言ったら、ほとんど初体験のようなものである。

　とりあえず、今までの僕の練習方法が、そんなに間違いでもなかった、ということは証明されたという思いはある。ただ、ここから先の練習方法は、また新しく考えていかなくてはならない。そこが難しくもあり、楽しみでもあるところだ。先は長いが、とても短いとも思える。次の日から早速とりかかることになるが、次の日もその次の日も雨だった。

　これだけ雨の日が多いと、雨の日の練習方法は重要になる。ある程度の年齢になれば、雨の日も外で練習するだろうけれど、今は外ではやらない。部屋の中で出来ることを考えていかなくてはいけない。二日後の夕方前、雨はやんだ。いつも練習するコンクリートの駐車場には薄い水たまりがいくつかある。その水を、箒と塵取りですくってバケツに入れていく。ほどなくして水たまりのない駐車場に変わった。長男を呼んで、ボールを蹴る。

2015年4月9日　寺田潤史

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