長女が生活の中からいなくなって子供は四人になり、子供五人との差を感じている。一人いなくなっただけで、かなり余裕ができるのだ。洗濯物の量も違うので、雨続きのこの頃でも、少しの晴れ間で挽回ができる。連れ合いの仕込んだ自家製パンも、パン好きの長女がいないだけで長くもつし、三女の焼いたクッキーもそこそこ長持ちするのだ。

　いつも朝５時半に家を出て学校へ向かった長女に代わり、この頃は次女が６時に家を出ることが多くなった。１４ｋｍの道のりを、自転車で１時間かけて次女は高校へ通う。自転車を漕いで一年たって、少し逞しくなってきた次女は、朝、コンクール用の絵を描いているようだ。漫画家への道か、油絵か、まだ進路を決めかねているようだが、油絵を大学で学びたいという気持ちと、先生からの大学進学の勧めで、次女は受験の準備もしておきたいと思っている。連れ合いは就職を強く勧める。僕は、漫画家になるんじゃなかったのか？と何度も聞き直し、大学なら私立の学費無料の特待生か芸大しかないよ、といつもの答えだ。

　先日の雨風の強い日、僕は軽トラックで次女を学校まで迎えに行った。帰り道で次女と進路について話す。僕は強く言う。「漫画家でも芸大でも、どちらにしても今の生活じゃてんでダメだよ。せめてお姉(長女）のやっていたような時間の使い方をしなくちゃ。春休みに、雑誌の漫画応募した時のあの生活。明けても暮れても漫画を描いていた、あのおまえを見て、ようやくまともになったな、と思ったよ。それがなんだ？応募が終われば、ｉＰｈｏｎｅの時間は長いし、まったりとしている時間は多いし、それでは一番になんかなれないよ。もう、あと２年もないんだよ。まったく時間はないでしょ？」

　その会話のあとから、次女は早く学校へ向かうようになったのだった。子供は、子供のやりたいようにやればいい。楽して生きたい、というのもありだ。だが、このような道に行きたい、という強い願望がある場合には、その道で一番になるくらいの気概と練習の積み重ねが必要だから、厳しいことも言う。そのくらいの生活をしたって無理なことは無理であるかもしれない。長女は高校で頑張った生活をしたから、大学でもそのリズムから外れることはないと思う。

　一方で、三女である。パテシェールになりたい三女の進路に関しては、悩む。本人は、できればすぐにでも丁稚奉公のような形で、現場に入りたい、と思っている。連れ合いも僕も、高校へ行かないことに抵抗はない。しかし、身内筋からの反対は目に見えている。とりあえずは、相談を受け入れてくれるようなケーキ屋さんを探すほかはない。先日も、三女の誕生日に、市内のケーキ屋さんでケーキを買ってみた。ケーキって高いんだなぁ、ということはよくわかった。

　高校へ行って、卒業してケーキ屋に就職する、という手もある。だが、三女は、その時間がもったいないというか、早くケーキ修行をしたいのである。もう少し様子を見てみようと思う。情報を集めながら、人の流れを観察してみたいと思う。人の流れが予測できると、イマジネーションも自然と湧いてくるものである。今は情報が豊富なので、人の流れを把握しやすく、本人の意志を確認しながら居場所を見つけ出すこともできると思う。

2015年4月16日　寺田潤史

バックナンバーへ

ご意見、ご感想、お問い合わせは、下記よりどうぞお寄せください。

★　ひらく農園の野菜の入手方法

☆　このページの最初に戻る