業務日誌(2002年10月その1)

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10月10日 サラ金CMウオッチング:02秋

 株価、すごいことになっていますね。でも恐慌も起こらず結構平然とした世の中です。慢性病に慣れてしまった病人なのか、絶望しているだけなのか、それともタフになったのか、日本人。まあ私は私にできることをやるだけです。

 そういう前フリとはほとんど関係がありませんが、しばらくやってなかったサラ金CMの個人的批評です。

○アイフル
 「どーする?アイフル♪」という路線で来ましたが、今回の犬編は、まあCMの作り自体としてはそこはかとなくリアリティが感じられて、サラ金のCMにしては珍しくエグみがないものといえましょう。
 ただ、やはりペットを買うためにお金を借りるのは本末転倒だと思いますよ。

○武富士
 何も変わりません。永遠のワンパターンの王道。

○アコム
 今一番許せん。
 カワイイ系のタレントに、女子社員の制服着せて歌わせればいいのか?
 ならば「取り立て」も全部そのカワイイタレントにやらせて見ろ、と言いたい。

○プロミス
 バカ殿&姫シリーズが一段落して、なぜか動物キャラ。
 「ねえ、ねえ、聞いてよ。どうして恋の悩みは相談できるのにお金の悩みは誰も聞いてくれないの?」
 だって、お金の悩みを親身になって聞いてあげて、それで解決するのでしょうか、あなたは。
 要は貸せってことでしょう?語るに落ちてます。
 プロミスがこのCMどおり、新規訪問者に親身になって話を聞いて、「借りなくて頑張る方法」を伝授して返してあげるって言うのなら応援しますが。

○レイク
 相変わらず意味不明のレイク号。
 今まではレイクのビルから飛び立つフリをしていて(必ずこける落ちでしたが)、お金を借りたい人のところに飛んでいく物体なのかと思っていたら、今回は湖の中から現れて、お客を見捨てて飛んでいってしまう(お客は携帯で融資を申し込んでいる?)。うーむ、謎だ。

○東京三菱キャッシュワン
 オヤジが若者に媚びるとこういうCMになる、という典型のような感じ。
 天下の銀行が「たまにはババンと!」と借金で海外旅行させて多重債務者を作ろうとするのが悲しいです。




10月9日 高松出張(再)

高松地・高裁
 なんか、最近日誌がほとんど3日に一遍になりつつあります。うーむ、ゆゆしき事態。なかなか忙しく、家に帰ってパソコンにゆっくり向かっている暇がありません。

 さて、5月20日にも出張した高松ですが、その後7月と続いて本日また行って参りました。

 羽田から飛行機で行かねばならない地方の場合、なかなか飛行機の時間がどんぴしゃりと合いません。

 というのは、平日の飛行機のダイヤは出張ビジネスマンに合わせているらしく、早朝から午前9時ころまでは出発便が集中しますが、その後日中はあまりなく、夕方から夜にかけてまた便が集中するようなのです。

 すると私のように、5分で終わってしまう裁判のために来る者にとっては非常に使いづらい。

 前回、7月の場合がまさにこれで、10時に裁判を入れてしまったため、朝8時ころの出発便に乗らねばならず、眠いことこの上ない(朝早いだけあってか、すいていましたが)状態でした。

 そのくせ、同じ航空会社の帰りの便は3時にならないとありません。まあ、いいか、観光でもしていこうかと思いきや、その日は土砂降りの雨。重い荷物を抱えて観光どころではなく、仕方なく高松市内の商店街のスターバックスで時間をつぶす羽目になりました。

 今回は前回のテツは踏むまいと、裁判を11時にしてもらい、朝の便を1時間遅らせるとともに、帰りが1時35分発と、昼食を挟めばほぼロスのないダイヤが組めました。これなら帰ってからさらに事務所で一仕事可能です。

 しかし、マーフィーの法則というものか、こういうときに限って高松は天気で、時間があれば観光したくなるような暑からず寒からずのいい気候でした。




10月6日 国選弁護の報酬(3)

 9月25日30日の日誌に続く第3編です

 国選弁護の報酬は、建前としては被告人に負担させることになっていますが、事情により(被告人の困窮等)負担させないという判決も多く、また負担させる判決も実効性が100%というわけではないため、残りは税金の持ち出しとなります。

 だから「悪い奴を弁護するのに税金が使われること自体おかしい」と言われてしまったり、最高裁も、国選弁護報酬の引き上げを要求する日弁連に対し「刑事被告人にこれ以上税金をつぎ込むことには国民の理解が得られない」という反論をよくするそうです。

 さらに進んで、知らない人に世間話をしていて、私が何かの拍子に弁護士だと判明した際に、かなりの頻度で出てくる反応が「何で弁護士は、悪い奴なのに弁護するんだい?」というものです。

 こうした素朴な疑問を根本的に解決したくて私は法教育に関与していたりもするわけですが、とりあえずの反応としては、

「だってね、被告人が弁護人を頼む権利は憲法で保障されているんだよ。だからどんな悪い奴だって弁護人がつかなくちゃならない。弁護士が弁護をするのは憲法で決まっている任務なんだ。別に弁護士が好きで悪人の弁護をしている訳じゃない。それが気に入らないのなら、憲法を改正してくださいよ。」

 実際には「好きで」刑事弁護をしている人もいますし、憲法を実際改正するとなれば、私自身は当然反対の側に回りますがね。

 それでも不服そうな人にはここまで言います。

「犯罪者が憎いからといって、任務で弁護をしている弁護人を悪く言うのは、うんこが臭いからといって、バキュームカーの運転手に文句を言うのと同レベルじゃないですか?」(運転手の方、引き合いに出してすいません)。

 ここまで言うとさすがにあまり反論はないようです。

 国選弁護の報酬も同じ論法で考えて欲しいです。

 弁護士は任務でやってます。その意味では破産管財人と同じ立場です。ですから同程度の待遇は保障されていいのではないか、と。

 まあ、弁護士の報酬全般が高すぎると言われてしまうと、それ以前の問題ですが。




10月3日 元福岡地検次席検事の入会

 昨年新聞を賑わした福岡高裁の古川元判事の事件で、「敵方」でありながら古川元判事に弁護士を紹介し、また捜査情報を漏洩した疑いがもたれた元福岡地検次席検事の方が、宮崎県弁護士会に入会が認められ、弁護士登録されました。

 司法試験に合格し、司法修習を終えた者は、誰でも弁護士となりうる資格を持っています。ですから裁判官、検察官に任官した人も、退職後弁護士となる道は開かれています(いわゆる「ヤメ判」「ヤメ検」)。

 しかし、弁護士としての業務は、どこかの弁護士会に登録しなければ行うことができません。そして誰を登録させるかは、弁護士会が審査すると定められています。

弁護士法第12条
 弁護士会は、弁護士会の秩序若しくは信用を害する虞がある者又は左の場合に該当し弁護士の職務を行わせることがその適正を欠く虞がある者について、資格審査会の議決に基き、登録又は登録換の請求の進達を拒絶することができる。
 一  心身に故障があるとき。
 二  第六条第三号にあたる者が、除名、業務禁止、登録まつ消又は免職の処分を受けた日から三年を経過して請求したとき。
 

 さて、宮崎県弁護士会は、元次席検事の入会(登録)を認めた理由について、「漏えい問題については本人が深く反省しており、弁護士として誠実に職務に専念することを確約した」としているそうです。

 さーて、それでいいのでしょうか?

 以前も日誌に書いたのですが、私は古川元判事の事件は、裁判所と検察の構造的癒着を示す重大な問題をはらんでいると思っています。古川元判事が裁判所の信用を失墜させたと同じく、元次席検事も検察の信用を失墜させたはずです。失墜させたからこそ辞任せざるを得なかったのではないでしょうか。

 それをわずか1年で復活させてあげる、というのは法曹界の身内のかばい合い以外の何者でもないような気がするのですが。こんなことをやっているから弁護士自治に理解が得られないのではないでしょうか?