業務日誌(2003年7月その1)

 7月2日 7月5日 7月8日 7月9日  一つ前へ 一つ後へ  日付順目次へ 分野別目次へ トップページへ


7月9日 プチ日誌

 おかげさまでホームページ開設2周年を迎えることができました。最近は日誌も2.5日に一度くらいのペースがやっとですが、それでも生まれついてこの方日記が1週間以上続いたことのない私としては、驚異的な記録です(笑)。
 カウンタも24000が間近のところまで来ており、この種のHPとしてはまあまあの数字になりました。ありがとうございます。
 昨年と全く同じで実に芸がないですが、一応また記念企画(無料法律相談)を立てましたので、よろしくご利用下さい。





7月8日 報酬の自由化

 現在、弁護士の報酬は、弁護士法によって、「弁護士会が基準を定める」とされており、日弁連及び各弁護士会が報酬基準を定めています。

 ところが、最近各専門士業の報酬基準が「独禁法上問題がある」と、公正取引委員会に問題にされ、次々と自由化されつつあり、弁護士の世界も例外ではなく、近々自由化されそうです。

 まず困るのが我々弁護士で、弁護士報酬基準がないと、全部一から自分で報酬の基準を考えなくてはなりません。たぶん、当面はほとんどの弁護士が事実上、旧報酬基準を使い続けることでしょう。

 では利用者たる依頼者から見てどうか。報酬が自由化されることで、自由競争が起き、コストダウンが図られると言う展開ならいいのかも知れませんが、実際には報酬を自由化した他士業では、かえって値上げ現象が起きているところもあるようです。

 弁護士等の仕事の性質上、個性のある事件が中心で、事件ごとの値段の客観的比較ができにくいこと、弁護士倫理上も、他の弁護士から事件を奪うことは問題とされていることから、自由競争というものはなかなか起きないかも知れません(大企業等は、いくつかの弁護士に見積もりをさせて発注するというやり方を取っているところも既にあるようですが)。

 あと、誤解を恐れずに言えば、「安けりゃいいのか?」ということです。弁護士に依頼する事件は、弁護士との二人三脚で取り組まなければ満足のいく解決は期待できないものが多いわけですから、信頼関係が重要です。弁護士の側も薄利多売を売りにする人が増えるのかも知れませんが、薄利多売でしかも十分な信頼関係を維持することはなかなか困難です。リーズナブルでかつ良心的な弁護士をみつけるためには、報酬の多寡だけにとらわれないでいただきたいものです。




7月5日 ディスプレイ

緑道
 事務所の会議室で打ち合わせ用に設置してあった液晶ディスプレイが壊れてしまいました。

 最初、バックライトが片側だけ点灯せず、おかしいなあと思いながらも一度直ったりしたので使っていたら、ある日突然電源さえも入らなくなってしまいました。突然死です。

 パソコンの液晶ではこのような症状に遭遇したことがないため、びっくりしましたが、まあどうせ修理しようにも液晶ユニット全体の交換になり、要は「ガワ」しか残らないわけですから、あきらめて新品を注文しました(写真のIBM 541H)。

 最近は17インチSXGAも相当安くなっているようですが、会議室では手元のパソコン(ThinkPadX20)につないで本体と液晶ディスプレイとに同時表示にして使いますので、手元のパソコン以上に解像度があっても意味がないため、再び15インチXGAモデルを注文。最近のIBMは、何でも「Think」ブランドに統一しつつあって、ディスプレイも「ThinkVision」などという名称に改めつつありますが、15インチはまだ旧来の数字しかないモデル名です。





7月2日 ヤミ金規制法

 ヤミ金融規制法(貸金業法の改正)が国会で成立する見込みだそうですが、内容的には中途半端なものだと言わざるを得ません。

 特に問題なのが、「年利109.5%を超える貸金契約については利息部分の約定を無効とする」という規定です。要は年利2000%とか3000%で貸しているヤミ金に対しては、金利の返済義務はないということです。

 これだけ聞くと、もっともな対策のように聞こえますが、とんでもない。実は逆効果のおそれがあります。

 そもそも出資法違反の金利を取った場合には、出資法で罰則がありますから、現行法だって違法なのです。そして刑事罰を科されるような内容の契約は、民事上も公序良俗(民法90条)に反して無効とする考え方が主流です。従って、利息契約自体の無効は既に裁判上も定着しつつあります。

 問題は、元金の方です。刑事罰を科されるような高金利で貸し付けた元金は、不法原因給付(民法708条)として、返還を求めることができない=ヤミ金に対しては、元本も返さない、というのが弁護士会の主張です。

 これに対しては、国会議員の間でも「元本も返さなくていいとなると、モラルハザードを招く」という抵抗感が強かったそうです。

 確かに、私自身、1年ほど前に「元本も返さない」という弁護士会の方針が固まった際には、やはり相当疑問を感じており、会内のメーリングリストでそのような意見をぶつけたこともあります。

 しかし、その後のヤミ金のますますの氾濫の中で事件処理を行ううちに、私自身の考え方も変わってきました。ヤミ金の収益のほとんどは暴力団に流れています。ヤミ金産業はその意味では、覚醒剤の密売組織とほとんど変わりません。ヤミ金の債務者の小さなモラルを守るために、なけなしの収入からヤミ金に元本を返済しても、そのお金は暴力団を肥え太らせ、新たなヤミ金の資金源となって被害者を増やすだけであり、社会全体としてはちっともモラルに貢献しません。

 例えば、覚醒剤の売人が、買いに来た人に覚醒剤を手渡し、さあお金をもらおうという段になった瞬間に張り込んでいた警察に逮捕されてしまった場合を考えてみて下さい(実際、こんな場面があるのかどうかは疑問ですが)。この売人が、「確かに違法な売買だが、商品を渡したのは事実だ」と主張して、あとで買い主に覚醒剤の代金を請求した場合、買い主は代金を支払う義務を負っているでしょうか?ヤミ金に元金を払うかどうかと言うのも同じ問題といえます。

 だいたい、弁護士が受任しても、ヤミ金は必ずしもおとなしく引き下がるわけではなく、何もかまわず本人に取り立て行為を続ける場合が多々あります。特に元金を一銭も返していないと、ヤミ金の方も当然強硬になります。債務者にとっては、元金を返さずに耐える方が大変なのです。だから私は、債務者に対して「ヤミ金には元金も返さなくていい」ではなく、「ヤミ金には元金も返してはいけない。返さない方があなたはつらい立場に置かれるかも知れない。しかし、あなたが返せばそのお金は巡り巡って新たな被害者を生む。だからあなたは耐えなくてはならない。それがあなたにとってのけじめの付け方だ」と説明するようにしています。

 今、国会に提出されようとしている法案では、逆に「元金は返すべきだ」ということになりかねず、ヤミ金業も、少なくとも元は取れてしまいます。ヤミ金業の撲滅には、元が取れない商売にするしかないのですが。