業務日誌(2003年8月その2)

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8月25日 現実から目を背けても

 週末にかけて伊豆は修善寺で行われた日本泳法大会に参加していました。昨日は帰りに東名の事故渋滞に引っかかってしまい、疲れた疲れた(^^;

 それはそうと、最近立て続けに、状況をうかがう限り、自己破産が一番ベストな解決であるのに、なかなか踏ん切りがつかずに、現実から逃避(?)しようとされる方の相談を受けましたので、一言。

 弁護士が「任意整理」が可能か、「自己破産」(あるいは個人再生)しかないか、を判断する基準は比較的簡単です。要は現在の収入をベースにして、そこから生活費を控除して、無理をせずに返済に充てられる額を算出し、その額で総債務額を割ってみて、その商がどのくらいになるのか、というものです。これが36以内(=元金を3年で返せる)のであれば、任意整理は可能。逆に60を超える(=元金だけで5年以上かかる)のであれば、任意整理はまず不可能と思われます。

 ま、任意整理が不可能でも個人再生という手がありますが、職業柄破産はできるだけ避けたい方以外は、自己破産の方がよほど合理的だという場合が多いものです。

 しかし、破産というドラスティックな選択肢に難色を示し、何とか任意整理的な方法で凌げないかという方が相変わらず多いようです。

 気持ちはわからないではありません。しかし、現実問題として、任意整理は無理だから破産を勧めているのです。それでも任意整理にこだわる方の考える方法というものは、単に現実を冷静に分析することから逃げているだけか、あるいは一見考えているように見えても実際には債権者の平等を害する(例えば「うるさいところだけ先に返す」方法など)ものとして、多くの場合弁護士としてはとてもお勧めできないものです。

 現実から目を背けても、物事は解決しません。弁護士は問題の解決のために存在します。解決になる見込みもなく、債権者に対する矢面に立つわけには行きません。




8月20日 プチ日誌

 お盆明けからMSブラスター騒ぎで大変でしたが、私の仕事&モバイル用PCのX20(X31への引っ越しは未だに終わっていない………)も、3日前から妙に挙動が変でした。無線LANへの接続が時々不能になってしまうのです。ウイルスチェックをしても何もないし。
 ひょっとしたら………と思い、無線LANカードを事務所にある別のと交換してみたら、案の定嘘のように不調が収まりました。無線LANカードが壊れかけだったらしいです。そういえばこのカード、結構持ち歩いて歪んでたもんなあ(^^;




8月18日 弁護士会役員の有給制

 東京弁護士会の会長・副会長等の役員に、会から給料が支給されるようになる方向だそうです。

 会から、と言っても、会財政の大部分は我々会員たる弁護士の会費(月数万円)で支えられているわけですから、実質的には会員が大勢で役員の給料を払うことになる、というわけです。

 自治組織たる弁護士会の役員に、「給料」なんて話が出てきた背景には、不況のあおりを食らって、弁護士会も深刻な人材難にあえいでいるという現実があります。

 バブルのころまでは、東京の弁護士会の役員というのは、結構名誉職的な部分があり、功成り名遂げたベテラン弁護士が最後に狙う「叙勲への近道」でもありました。

 功成り名遂げている訳なので、お金なぞ不要。名誉があれば十分だったのですね。

 しかし、時代は変わり、司法改革の荒波の中で、弁護士会の対応が一歩遅れれば、改革の方向性が弁護士にとってとんでもないものになりかねないという緊迫感あふれる状況です。弁護士会の役員が「名誉職」だと言って安穏と構えていられる時代ではなく、常に機敏な対応と結果責任が問われる時代になりました。

 おまけにバブル崩壊以後、どの世代も等しく弁護士の世界も「楽して儲かる」事件は激減し、(当たり前と言えば当たり前ですが!)額に汗して時間をかけねばお金をもらえない時代になっています。

 こうした状況下で、弁護士会の役員に就任するというのは、当該弁護士にとっては死活問題です。東京のような大弁護士会では、会長、副会長は「専従」を要求されるため、自分の業務は1年間ほとんどできません。事務所のイソ弁に任せきり、ということになります。当然、長年かけて培ったお客さんも逃げていき、1年経つころには手持ち事件もなくなって経済的には2,3年大きなダメージを受けることになります。

 従って、最近では、特に副会長がなり手が激減し、派閥が候補者を絞り込むどころか候補者をいかにして説得して立候補させるかということに頭を悩ましている次第です。

 役員有給制は、こうした悩みに少しでも対応しようという案なのでしょうが、個人的にはあまり賛成できませんでした。

 というのは、私には、そもそも役員の「専従制」が歪んでいるようにしか見えないからです。地方の小規模弁護士会の会長・副会長は、みなさん手弁当で自分の事件も抱えながら頑張っています。

 東京は、確かに役員の仕事量も多いのでしょうが、でしたら副会長の人数を増員するなどすれば、自分の事件も遂行することができるのではないでしょうか。このような意見を唱えてみたのですが、既に会内の意見の集約は進んでいて結論は動きませんでした。