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1月19日 弁護士像の変化(2)−他業界へ 8日の日誌の続きです。 私が東京弁護士会の常議員を勤めたほんの数年前、議題の一つに上がるのが「弁護士の営業許可」の問題でした。 弁護士が、営利企業の取締役に就任するのには、弁護士会の許可が必要だったのです。そして、この許可不許可の基準として「弁護士の品位を害さないこと」というものがあり、例えばパチンコ台製造会社への取締役就任を巡って、けっこう真剣に「品位を害する」と主張する人もいたりして、議論になりました。 しかし、今では弁護士の営業職就任は基本的に届け出制になり、こうした議論の出る幕はほとんどなくなりました。そればかりか、例えばサービサー(債権回収会社)については逆に弁護士の取締役就任が義務づけられる等、「弁護士の進出を制限して弁護士の品位を守る」という考え方から、「弁護士を他業種に進出させて法的コントロールを及ぼす」という考え方に、発想が180度変わったように思います。 まあ、何でもかんでも弁護士が出て行けば問題が解決する、というものでもないでしょうし、こうした考え方の変化の背景には、規制緩和の流れや、さらにいえば弁護士増員により、今まで見たいな高尚なことは言っていられなくなったということもあるため、このような流れが全ていいものかはわかりません。 しかし、インサイダーとしての弁護士が増加していくことは、今後避けられないのだと思われます。そうした場合、弁護士としての判断の独立性や客観性をいかに保っていくのかが問われることになるのでしょう。 1月15日 戸籍売買 最近立て続けに相談を受けたのが、「実は知らない人と養子縁組しちゃったんですけれどどうしよう?」というものです。 それも、ごく普通の方が、ヤミ金に嵌ったり、ちょっとした金欲しさを暴力団につけ込まれて、大した罪悪感もなく、戸籍を売っちゃうんですよね。 でもって、縁組みしてしまってから後悔して弁護士の所に駆け込んでくる。縁組み相手が連絡が付いて離縁に応じてくれればいいけれど、そうでなければ裁判が必要で、非常にしんどい話になるということを聞いて、初めてことの重大さに気づくという展開です。 なぜ暴力団が見せかけの養子縁組をさせるのか?縁組により、養子役は新たな姓名を得るわけですから、既にブラックリストに載っていても、借金もできてしまうし、携帯電話も契約できるようになるからです。 こうして、新たな借り入れをさせたり、携帯電話の契約をさせて少額の報酬と引き替えに電話機自体は暴力団が預かり、ヤミ金の取り立てに使われたりしているのですね(もちろん、使用しているヤミ金にとっては他人名義の携帯電話で、自分が請求を受けるわけではありませんから、使用料金など最初から支払うつもりもなく、使用停止になるまで使い倒すのです)。 それにしても、こうして戸籍を売り、携帯電話の契約をさせられたりした方に「あなたが預けた携帯電話はいったい何に使われていると思いますか?」と聞いても「わからない」という答えが多いのには呆れます。推理力、想像力がない、というのではなくて、最初から推理も想像もするつもりがないようです。 1月13日 全件付添人制度 つい10数年ほど前に始まった当番弁護派遣制度は、司法改革の中で、不完全ながらも被疑者公選弁護制度に結実しました。 次に唱えられているのは、少年事件の被疑者が家庭裁判所に送致された段階で、全件に付添人を付けようという、「全件付添人」制度です(少年事件の家裁における弁護人を「付添人」という)。特に子どもの人権関係の事件を熱心に行われている弁護士を中心に、声が上がっています。 こういう制度については、結局は弁護士の手弁当によるスタートとならざるを得ないため、弁護士の少ない地方より先に大都市で先行して始め、実績を積みつつ地方へ広げるということを考えるのだそうです(成年の刑事被疑者に対する当番弁護士制度も、例えば私の修習した岩手県の全件に適用範囲が広がったのはつい最近のことだそうです)。 そんなわけで、まず東京で全件付添人制度を!という話だそうですが、現状では第一に予算が足らず、第二に人手が足りないのだとか。 予算(扶助協会の予算=弁護士会の援助=我々の会費)の点はともかく、弁護士が9000人もいる東京でなぜ人手が足りないかというと、単に少年事件を扱える弁護士が足らないからです。 実際、少年事件は成年の刑事事件と異なり、家裁の手続きに乗ってしまうと、3週間程度の短期間のうちに集中的な活動を行う必要があるため、弁護士においては非常にしんどい事件になります。 問題は、こうした制度の導入について、検討する中核の世代の大部分が、実は少年事件にあまりイメージを持っていないのではないかということです。本日も、とある会合で、東京弁護士会で成年の刑事事件の当番弁護士とは別に少年事件専門の当番弁護士のローテーションがあることすら知らないといった議論がまかり通っていました。 そのようなレベルで、全件付添人制度の是非を論じられても、実際に導入されて働くのは我々です。特定の弁護士に負担が偏らず、かつ良質な付添人活動を提供できるような弁護士会のバックアップ体制が絶対に必要な分野ではないかと考えます。 |