業務日誌(2004年3月その2)

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3月18日 プチ日誌

 昨日、GEコンシューマー・ファイナンス(レイク)相手に起こした過払い請求訴訟判決で完全勝訴の判決をもらいました。弁護士のメーリングリストに報告したところ、ファクスで送れとの依頼が殺到し、事務局は仕事が増えて困り顔。。。

週刊文春出版差し止め仮処分
 マスコミとしては戸惑い一色の報道ですね。特に週刊誌なんか、今回の記事レベルの記事は相当あるから、認められ出すと発禁続きになるかもしれないと怯えているのでしょう。
 仮処分って単独裁判官で決定されるから、裁判官のポリシーが強く出るからなあ。個人的にはやはり、差し止めという劇薬を使う場合だったのかどうかは疑問な所ではありますが。




3月16日 セーフティネット


生活保護支給停止は違法、最高裁判決
 「近時においては,ほとんどの者が高等学校に進学する状況であり,高等学校に進学することが自立のために有用であるとも考えられるところであって,生活保護の実務においても,前記のとおり,世帯内修学を認める運用がされるようになってきているというのであるから,被保護世帯において,最低限度の生活を維持しつつ,子弟の高等学校修学のための費用を蓄える努力をすることは,同法の趣旨目的に反するものではないというべきである。」

 平成2年当時に高校進学のための貯蓄すら認めないという運用は確かに行き過ぎでしょう。

 この事件を見て痛感するのが、最後のセーフティネットたるべき生活保護制度の運用の難しさです。

 仕事柄、法律扶助協会の相談で、生活保護世帯の方の債務整理の相談を受けることも多いのですが(もちろん生活保護を受けている以上、債務整理の選択肢としては破産しかありませんが)、一口に生活保護世帯といっても千差万別であり、また同じような境遇でもなぜか支給金額に結構差があったりします。

 役所の側も当然なにがしかの基準があるのでしょうが、それを具体的なケースにどう当てはめるのかについては、担当者の裁量は相当大きいものがあるようです。

 この裁量権が適切に行使されていればいいですが、行き過ぎて杓子定規な運用をされると、今回の最高裁判決のような問題例が生じてしまうのでしょう。

 問題は、生活保護世帯は、生活の全てを国に頼っている以上、今回のような不当な扱いを受けても司法的救済を求める勇気を持つことが非常に困難であり、また勇気を持てたとしても、採算性度外視でサポートしてくれる弁護士を捜すのにも困難が伴うことです。さらに、今回の事例でも最高裁判決まで何と14年!麻原裁判どころではありません。こんなに救済が遅いのでは、当事者の解決にはつながりません。




3月14日 更生を信じる社会になれるか


神戸児童殺傷事件加害者仮退院
 少年法改正のきっかけとまでなった事件ですが、あれから7年、少年法が改正されてよりよい社会になったでしょうか。
 
 あまりに戦慄すべき事件であったため、加害少年はまるでモンスターのような扱いで報道され、その流れで、少年法改正の際にも何となく「社会からの異物の排除」というような底流があったような気がします。

 しかし、誰もが通る少年時代を敵視するかのような政策をとっても、見返りは何も得られなかったのではないでしょうか。昨今次々と明らかになった児童虐待事件(それも乳幼児ではなく少年を死に追いやるという)をみても、少年がおかしくなったわけではなく、社会の側が育てる能力を失ってしまったのではないかという危惧を覚えます。

 どんなに「異物を排除」しようとしても、死刑制度の適用がない以上、加害少年はまた社会に戻ってきます(だから死刑制度を少年にも適用する、という法改正までされる状態までいきつくのでしたら、それはそれで話が別ですが)。社会に戻ってくる日がある以上、その日に向けて、彼の更生のために最大限の努力をしなければなりません。

 それと同時に、社会の側も、彼を再び迎え入れる態勢を用意する必要があります。法務省が加害者の少年院仮退院を発表したことは、現行法上疑問ではありますが、「社会の側に準備をさせる」との観点からは必要やむを得ないものだったのではないかと理解しています(お、今回ばかりはやけに法務省に理解が深いな>俺)。

 少年であるにせよ、成年であるにせよ、一度犯罪を犯してしまった人が再び犯罪を犯すことなく更生していくかどうかは、実際には誰にも保障できません。それは、これまで何ら間違いを犯さず生きてきた人が、これからも犯罪を犯さず生きていくかどうかは誰も保障できないのと同じです。あとは可能性の程度の問題です。

 彼の更生を信じることができる社会になれるか、というのは、自分を信じられるか、ということと同義のような気がします。