業務日誌(2004年10月その1)

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10月10日 F1観戦


 タイトルどおりですが、とあるツテで、券が手に入ったので、鈴鹿に行ってきました。

 「券が手に入った」といっても、純粋な入場券ではなく、「佐藤琢磨応援ツアー」というものに組み込まれての参加だったのですが、このツアー、土曜日夜の宿泊がなんと多治見市のビジネスホテルでした(^^;

 要するに、浦和スタジアムの試合を見るために平塚あたりに泊まるようなものでしょうか。鈴鹿はおろか、名古屋のホテルすら満員で確保できなかったということのようで、これでかつてオリンピックを誘致しようとしていたと思うと、名古屋圏の宿泊キャパにはがっくりきました。

 さて、最初の予定だと、土曜日の早朝に名古屋に集合して、バスに乗り込み予選を見に行くということだったので、余裕を見て金曜夜から名古屋に前泊したのですが、ご存じのとおりの台風で、あっさり土曜日の予選は中止。おかげで土曜日は全くやることがなくなり、大雨の名古屋市内で地下街をうろうろし、時間つぶしにボウリングなぞやってしまいました。

 おまけにツアーは土曜日夜に招集がかかったものの、新幹線が止まってしまったために、半数ほどの人が夜の段階で集合できず、宿での立食パーティーも、閑散としてしまいました。

 そして、日曜日。渋滞を見込んで朝5時40分に宿を出てバスに乗り込んだものの、予想以上の渋滞で、座席に着けたのは10時過ぎ。かろうじて琢磨の予選タイムアタックに間に合いました。

 生まれて初めて見るF1は、予想以上にすごい迫力で、琢磨が表彰台に上れなかった結果は残念ではありましたが、まあ久々にお祭りに参加したような気分でした。




10月7日 利益相反

 最近気になった弁護士関係のニュースを二つ。

 一つは週刊誌等でもけっこう取り上げられている、今をときめくプロ野球選手会の代理人が、ライブドアの球界参入のための代理人を務めていたとされる話。

 弁護士の守るべき弁護士倫理の最たるものに、「利益相反の委任を受けてはならない」というものがあります。具体的に禁止されているのは「受任している事件の相手方から依頼を受けてはならない」というものです。当然ながら、利害の相反する双方の立場を同時に代弁することは不可能であり、依頼者の利益を損ね、弁護士に対する信頼を失わせることから禁止されているわけです。

 どんぴしゃりでこのような「双方代理」の事件を受けるような弁護士はまずいませんが、きわどい場面には結構遭遇します。例えばよくある遺産分割に絡む相続争いの事件。特定の相続人を相手取って、複数の相続人から依頼を受けること自体はよくあることですが、この複数の相続人同士が途中で仲違いしてしまうと弁護士は大変困ります。最悪の場合、利益相反を避けるためには全員について辞任しなければならない可能性もあるわけです。

 さて、選手会とライブドア。別段現時点では紛争の相手方になっているわけではないし、新規参入を求める現状の立場ではむしろ一致するものですから、双方から依頼が来ること自体は不思議ではないでしょうね(こういうスポーツ界紛争に関しては、まだまだ特定の弁護士に依頼が集中しやすいようです)。

 しかし、本来ライブドアは経営者側、選手会は労働者側です。本質的には将来利害が対立する可能性のある、けっこうハイリスクな組み合わせであると思われます。

 もう一つは、三菱自動車の社内調査チームの弁護士13人のうち、9人が元役員の刑事事件の弁護人を務めているという話。

 これはかなり?です。確かに社内調査担当弁護士は、三菱自動車の代理人そのものではありません。しかし、依頼者は三菱自動車であり、究極的には真相を明らかにすることを通じて、長い目で見ての三菱自動車の(信頼回復という)利益を図るための立場を有しているはずです。この真相解明作業と、元役員についての刑事弁護人としての立場が衝突する可能性は必ずあります。

 弁護士倫理の趣旨からは、相当問題あり、ではないでしょうか?何でも依頼を受けてしまうことが、結果として弁護士に対する信頼を失わせてしまわないように、祈るばかりです。




10月3日 お引っ越し(1)

 トップに書いてありますように、近々事務所の移転があります。

 そうなると欠かせないのが挨拶状の発送。発送のために欠かせないのが住所録の整理。いつもは年末の年賀状シーズンまでメンテナンスをさぼっているので、時ならぬ整理に追われ、印刷とラベル貼りに追われる週末でした。




10月1日 ケンカのやり方


 何だか物騒なタイトルで申し訳ありませんが(笑)。

 弁護士のところへ依頼が持ち込まれる相談事というのは、たいてい既にトラブルに発展しているもの、つまり依頼者にとっては既に相手と戦争状態であるか、あるいは一触即発状態であるものが多いものです。

 弁護士から見れば、そこまで事態が悪化する前に相談に来てくれたら、もっと言えば当初から相談の上ことを進めてくれたらそこまでひどい状態にはなるまい、と思えるようなトラブルが多いわけで、そうしたトラブルを未然に防ぐのも弁護士の役目です。

 アメリカのような高度の契約社会では、紛争予防のために弁護士が企業等の社会経済活動の中核まで入り込んでおり、弁護士の仕事も訴訟より契約交渉等の訴訟外活動の方が中心になっています。

 日本はまだそこまでの状況には達してはおらず(銀行の合併の基本合意に違約金条項を入れ忘れるような、まだまだのどかな社会ですので)、まだまだ弁護士の活動領域はアメリカに比べると狭いと思われますが、それでも急速に、訴訟活動より訴訟外活動を専門にすることを標榜する弁護士が増加しつつあるようです。

 このような流れ自体は否定しませんが、「裁判をしない」弁護士が増えることには、多少の違和感を感じるのも事実です。

 弁護士にとっても、裁判という場面は究極の修羅場であり、互いが本音と利害をむき出しにしてぶつかる場でもあります。ここでの経験が、裁判に発展してしまうトラブルとはどのようなものか、どうしたらそのようなトラブルを少しでも未然に防げるか、という観点につながって、予防法学でも実践的な成果に結びつくのではないかと思われるのです。

 これが、裁判までいかない解決のみしか経験のない弁護士ですと、結局はぎりぎりの踏ん張りどころと押しどころを間違えることにつながりかねないような気がします。

 要は、ケンカのやり方がわかっていない弁護士にケンカを予防することはできるのか、という問題です。