業務日誌(2004年9月その2)

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9月29日 破産法改正研修

 来年1月に改正法が施行される新破産法の研修を受けてきました。東京地裁破産部の部長が講師で、主に東京地裁での今後の運用を語るものです。

 はっきりいって、東京地裁は旧破産法下で、即日面接による即決破産宣告、少額の予納金による少額管財制度、簡易配当と、次々運用による改革を打ち出して破産手続の迅速化を図ってきており(裁判所のお役所体質には批判的な私ですが、破産部のドラスティックな対応だけは評価すべきだなあ、と思っています)、改正法自体、東京地裁が先行して実験してきた制度を法制化したものが多いため、東京地裁の運用は改正後もほとんど変わることはなさそうです。

 それにしても、弁護士会の講堂で行われたこの研修、出席者が殺到してすごい盛況でした。しかし、実際には破産申立件数は昨年をピークとして、今年は微減傾向にあり、破産管財事件はさらに減っているようです。従って、破産事件で食ってきた弁護士は、これから身の振り方を考えないといけないかも知れません。




9月25日 蒲田法律相談

 本日は法友全期会の法律相談企画の一環で、蒲田の相談会に行って参りました。

 既に八丈島相談企画等、定例化している企画がありますが、今般、蒲田の商店街のコミュニティセンターを借り切っての相談会を今月から毎月1回開催することにしたのです。

 こういう定例化した相談会を、弁護士会以外の弁護士有志が運営することはけっこう珍しいことなのですが、その理由は広報体制が組みにくいことにあります。この相談会の趣旨は、法律相談の機会の拡充を目指すとともに、市民のニーズと若手弁護士の職域の拡大を同時に目指すものですので、無料相談とすることはしていません。10分1000円と、弁護士会の標準(30分5000円)よりは割安にしていますが、無料ではないため、区報等の広報誌では掲載してもらえないようです。

 仕方なく、今回は商店街内にポスターを掲示してもらうとともに、駅貼りポスターによる広報を試みました。

 その結果、4件の相談者があり、滑り出しとしてはまずまずの成果を見ましたが、駅貼りポスターはやはりコストの面で、ずっと継続するには困難があるため、これからどうするかが課題です。




9月24日 自白を求めること


「警察から犯人扱いされた」長野・老人殺害で遺族が抗議

 松本サリン事件の際の河野さんの件のときも、事後にマスコミは大騒ぎしましたが、こうした事例は繰り返し起こります。

 なぜ、繰り返すのか?それは、「犯人なら自白を得るまでしつこく取り調べてかまわない」という発想が根底にあるからです。この新聞の見出しを見ても、やり玉に上げられているのは「取り調べをされた」ことではなく、「犯人扱いされた」ことです。「犯人」でないのに「犯人扱い」されたことが問題で、「犯人」なら「犯人扱い」=「しつこい取り調べで自白を迫られ」てもかまわない、という潜在意識があるとしか思えません。

 そろそろ、私達は、警察に犯人の自白を取ることを期待することをやめられないでしょうか。自白を得ることが捜査の獲得目標となっている限り、こうした悲劇は起こります。




9月21日 バツイチ受任?
 
 最近、立て続けに裁判途中の事件を引き受ける、という事態が生じました。

 一つは別な代理人がついていた件を途中から引き受けたもの、もう一つは本人訴訟で提訴された事件を途中から引き受けたものです。

 正直な話、こうした途中からの受任というのは、弁護士にとってもやりやすいものではありません。弁護士というものは、当初、事件を引き受ける際に、弁護士なりの解決の道筋と落としどころを予想して、そこから逆算する形で最前の法律構成なり、法的手段なりといった戦術を考えるものです(同じ事件でも、契約上の責任と不法行為責任とどちらも問える場合もありますし、法律構成が一つに定まることはむしろ少ないものです)。

 ところが、途中からの事件というものは、既に訴訟が進んでしまっている以上、一定の法的構成や法的手段が選択されてしまっているわけで、その選択された戦術が、私からみて最適ではないように思える場合、いかにしてこれを立て直し、軌道修正していくかについて頭を悩ましてしまうことになるからです(途中までと違う方針をとる場合、たいてい裁判官は非常に嫌な顔をしますし)。

 もちろん、受けるからには、その時点で最善を尽くすことにはかわりありませんが、願わくは当初から悔いのないように、信頼できる弁護士を見つけて欲しいものです。




9月18日 ストライキ
 
 プロ野球選手会がいよいよストに突入だそうで、マスコミは大騒ぎですね。

 最近は、鉄道労組もストを打つことが滅多になくなり、いわゆる労使協調路線を取ることが普通になってますから、ストライキの決行自体が珍しいからではないかと思えます。しかし、この間の顛末を見ていると、経営側は、まあ何というか労使交渉のやり方としては愚の骨頂(いらぬ不規則発言をしてマスコミにはたたかれる、意図が見え見えのやり口を続ける、そして当事者能力がない)に近い状態であり、あまりにも資本の論理むき出しの方針ですから、ストという選択肢は当然ではないかと思っています。

 弁護士という商売をやっている者から見ると、ともあれぎりぎりまで喧嘩をするぞ、という気勢と覚悟を示さなければ、相手がこちらをなめきっていて、実りある交渉が期待できない場合は結構あるのですね。今回の選手会から見た球団側の対応は、まさにそのような事例かと思われます。