業務日誌(2004年11月その1)

 11月1日 11月3日 11月6日 11月9日  一つ前へ 一つ後へ  日付順目次へ 分野別目次へ トップページへ


11月9日 オレオレ詐欺?

 逮捕・勾留されている被疑者から弁護人につくことを頼まれたとき、一番頭を悩ませるのが、(下世話な話ですみませんが)弁護士費用をどうやってもらうか?という点です。

 何しろ当の本人は留置場の中で、費用を払おうにも払えないことが多い。出てきた後に………といっても、確実に払うだろう、とこちらが確信できるほどの方はなかなかいません(私が疑り深いだけかも知れませんが)。

 仕方なく、多くの場合は「どなたか弁護士費用を立て替えてくれる身内の方はいないですか?」と、被疑者に尋ねることになります。多くの場合、そういう関係の方は、配偶者であったり、親であったりです。

 さて、最近引き受けていた被疑者弁護の件で、同じような切り出し方をしたところ「郷里に両親がいますが、数年前に家を飛び出したきり、何の連絡も取ってません」という方がいました。

 うーむ、しかし、費用を取りっぱぐれるよりマシです。思い切って留置場の接見からの帰り、電話してみました。

 「もしもし、○○様のお宅ですか?」

 「はい、そうですが」

 「あのう、○○様には××さんというお子様がいらっしゃると思うのですが」

 「はあ」

 「実は私ですね、弁護士の豊崎と申しますが、その××さんが現在△△署に勾留されてまして、本日接見に行ったのですが、××さんから弁護人について欲しいと言われています。つきましては、あのう、だいぶ長い間ご両親には連絡を取っていないそうですが、ご両親に弁護士費用を立て替えてもらえないかどうか、頼んでみてくれと、本人から言われましたので………」

 ここまで話して、はっと気づきました。

 私の話って、ほとんどシチュエーションが「オレオレ詐欺」じゃん!

 話してる私が気づくくらいですから、相手の方も明らかにうさんくさそうな様子で、なかなか信じてくれません。悪いことに、かけているのは私の携帯電話からですので、さらに詐欺っぽいかも。

 まあ、いろいろ細かい話をしたり、「信じられないなら後で警察署に確認してくれ」とまで言って、翌日にはようやく本気にしてもらえましたが、私も別な意味で、オレオレ詐欺の被害者かもしれません(^^;




11月6日 アメリカの民主主義

 アメリカの大統領選が終わって、真っ二つに割れてしまったアメリカ世論について、マスコミは悲観的な論調が多いですが、私はそれでも、アメリカの民主主義にはまだ捨てたものではないような気がしました。

 それは、投票率。国論が真っ二つに割れた選挙で、投票率が10%も上がったというのは、ある意味当然でしょうが、有権者の関心がそのまま投票率に結びつかない日本から見ると、アメリカの有権者は日本人よりはよほど民主主義に対する意識は高いと言わざるを得ません。

 だいたい先に有権者登録をしないと、投票できないという面倒くさいシステムですから、アメリカの60%は、日本で言えば75%くらいの価値はあるのではないでしょうか。




11月3日 オリックスと楽天

 下馬評通り新規球団は楽天に決まったようですが、終わってみれば、12球団を維持するだけなら楽天に近鉄を譲渡すればよかったんじゃないでしょうか。何ともよくわからない決着の付き方です。

 そのよくわからない展開の引き金を引いた当事者であるオリックスの宮内オーナー、自らも10数年前は新興企業で新規参入側だったはずですが、いつの間にかパイの分け前を増やすために球団数を減らそうという側になってしまったわけです。この日も、朝日新聞によれば、同オーナーのコメントだけ、「両者についての資料を読んだが、『甘いなあ』という印象だ」と妙に辛気くさい。そんなに球団経営が大変でやっかいなものだとしたら、オリックスこそライブドアにでも売り渡したらいかがでしょうかね。

 かつてのベンチャー企業も、体制側に立つと守旧派になってしまう典型を見るような気がします。少なくとも宮内さんには今後は規制緩和や構造改革を論じては欲しくないですね。楽天が早々にベンチャー体質を失わないように、期待するばかりです。





11月1日 「追って指定」

 民事裁判で、審理が終結するとき(結審)には、判決期日が指定されるのが通例ですが、中には結審しても、判決期日は「追って指定」とされるときがあります。

 いちばんよくあるのが、裁判所が和解による解決を目指しているときで、判決期日は指定しないけれども、審理自体はもう終わっていて、いつでも判決は書けますよ、というやんわりしたムードで当事者に和解を促す、というものです。

 ところが現在当職の所属している入学金・授業料弁護団で係属中の事件で、7月に結審し、一度は9月に判決期日が指定されながら、その前日に期日指定が取り消され、それきり判決期日の指定がないという大変不思議な展開になっている事件があります。

 裁判所が一度指定した判決期日を、直前になって「延期」するのは、まま見られる事態で、これは裁判官も人間である以上、予定通りのスケジュールで仕事をこなせないことがあるのはやむを得ないと理解できます(弁護士の方だって、書面の提出が遅れて謝っていることはありますからね)。

 しかしながら、期日取消、指定もしないというのはかなりの異常事態です。たまりかねた弁護団のメンバーが問い合わせたところ「現在大きな事件にかかりきりで、この事件の判決まで手が回らない。いつになるかまだわからない」という回答だとか。

 これはいくら何でもひどい。弁護士の方も、自分の書面が遅れたとき「大きな案件を抱えてしまいまして」と言い訳をすることはありますが、だからといって「いつ出せるかわかりません」などと言ったら裁判所からは必ず大目玉を食います。裁判所の方はやってもいいなんて話はありません。事件の依頼者の立場はどうなるのでしょうか。

【後記】この後、12月半ばになってから、ようやく判決期日が再「指定」されました。