2005年夏 マウイ〜オアフ旅行記 天国の休日
Chapter 0 期待を乗せた渋滞
空が近い。
南の島に来てその景色を見渡すと、いつも真っ先に思うことだ。
自分が立っている地面と見上げた空までの距離なんて場所によって変わるわけじゃない。どこだって同じ筈だ。でも確かに空が近いと感じる。雲の上なんて、そう大して遠くないんじゃないの?
カフルイの空港に着いて、これから重くなるであろう大きなスーツケースと今はただ邪魔なだけなキャディバックをタクシーに積んでホテルへ向かう。タクシーの窓からの2年ぶりの景色が懐かしい。
海の色は深い青、反対の窓から見える山には雲がかかっている。山肌は赤土の色で、流れる雲の影を映している。
・・・ここにはなんでもあるなぁ。海と山が一緒の景色、それだけのことでそう思ってしまう。
写真は撮らなかった。撮りたいような景色はいっぱいあったけれど、走っている車の窓越しじゃ上手く撮れないだろうと思って、景色を目で楽しむだけにした。それはそれで、なんだか贅沢な気もする。
それにしても、道が込んでいる。
初めてマウイにも渋滞があるのだと知った。けれどよく考えてみれば、空港からラハイナ方面に向かう道は、海沿いのこの道に出てしまってからは他にないのかも知れない。道が1本しかなければ、確かに時には渋滞もあるだろう。
カフルイからラハイナまでは結構距離があるけれど、そろそろラハイナはそう遠くないあたりまで来たんじゃないだろうか。あと10分程度でホテルに着くんじゃないだろうか。
今回の旅行は3つのホテルに泊まることになっている。その最初がラハイナのプランテーション・インだ。
マウイとオアフ。旅行の計画はそこから始まった。そして毎回思うことだけれど、どうせ行くなら少しでも長く滞在したい。
今年の初め、仕事先のカレンダーを見て、これはもう、少し自主的に休むしかない、と思った。ゴールデンウィークは10連休だったけれど、習っているフラメンコの発表会があるので無理。夏休みは7連休だった。でも連休前の2日を休んでしまえば11連休になる。たかが2日だ。これはもう、休むしかないんじゃないだろうか。
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あっさり休暇を取ることに決定して次は旅行の日程を検討。最終的に9泊になったけれど、当初の予定は8泊だった。帰国後に休日を1日だけ残しておくつもりだったのだ。
8泊ならマウイ6泊オアフ2泊かな、となんとなく思った。オアフ2泊は短いような気もするけれど、マウイでゴルフをすることを考えるとゴルフだけで終わらせてしまわないために少しでもマウイ滞在を長くしたかった。
マウイではゴルフメインならカパルアかワイレア滞在だろう。カパルアは1番最近のマウイ滞在で2度続けてリッツ・カールトンに宿泊してるので、今回は久しぶりにワイレアにしようか。ワイレアのホテルならフォーシーズン、グランドワイレア、フェアモント・ケアラニのどれかだろう。フォーシーズンは大分前に1度泊まったことがあり、とても良かったけれど雑誌で見たケアラニの写真はとても綺麗だった。
色々考えて、マウイではケアラニ、オアフはハレクラニということに落ち着いた。
しかしワイレア6泊。ゆっくり出来ていいけど、なんだか欲張りたくなってきた。そしてふと、ラハイナ、と思った。ラハイナのプチホテルに泊まりたい。
ラハイナのプチホテルと言えば、
・パイオニア・イン
・ラハイナ・イン
・プランテーション・イン
この3つだ。
それぞれのホテルのホームページを見て、ラハイナ・インかプランテーション・インにしようと思った。単純に内装が可愛かったからだ(余談だけれどパイオニア・インのホームページのバーチャル・ツアーはラハイナ好きの私にはたまらない)。
先に確認したラハイナ・インは満室だった。プチホテルなので部屋数が少ない。そしてその割に人気があるのだ。プランテーション・インもダメかも知れないと覚悟していたが、あっさり予約出来てしまった。ガーデンスイートという部屋を予約したけれど、ケアラニより大分リーズナブルだ。
◆ ◆ ◆
Chapter 1 ラハイナ
1−1 ラハイナのプチ・ホテル
(プランテーション・インの白い塀)
初めてラハイナを訪れた時から、いつかラハイナのプチホテルに泊まりたいとずっと思っていた。朝起きて散歩に出掛けてもラハイナ、日が沈む頃ディナーに出掛けてもラハイナ。ディナーの後ぶらぶら歩いて帰るのもいい。そして可愛いプチホテルで眠るのだ。
プランテーション・インにはジェラーズというフレンチ・レストランがある。美味しいという評判だ。
そのジェラーズの横のパーキングの奥に、白く塗られた木造の塀があり、ホテルへの扉がある。
扉を開けると中庭になっていてプールがあった。あまり大きくはないけれど充分な大きさであるとも言える。プールサイドにはパラソルとテーブルと椅子がある。ここで朝食をとるのかも知れない。
そのうちの1つの椅子に1人のおじいちゃんが腰掛けていた。大荷物のKくんと私を見て、フロントはそっちだ、というようなことを教えてくれた。Kくんがチェックインする間、私はプールサイドで荷物の番をしていた。
プランテーション・インのプールサイドのテーブル
私達の部屋は8号室だった。ちょうどジェラーズの真上の部屋だ。
ドアを入るとベッドルームがあり、リビングとつながっている。リビングにも廊下へのドアがあり、ジェラーズへ直接降りて行ける階段がすぐそこにある。それぞれの部屋はあまり広くはないけれど二人ならちょうどいい感じだ。そしてリビングの先のラナイが思いのほか広い。見下ろすと、ピンクのクロスがかかったジェラーズのテーブルが並んでいる。
ガーデンスイートのベッドルーム
ガーデンスイートのラナイ
ラナイから見下ろしたジェラーズ
私たちはフロントで受け取った“Aloha And Welcome”と書かれた封筒と、その封筒とは別に渡された便箋に書かれた内容を確認した。
まず封筒の方。中には二つ折りのカードが入っており、そこには挨拶の文章などの他に次のことが書かれていた。
・Daily breakfast served poolside (7:30-9:30am)
・Outdoor swimming pool open from 8am-10pm daily (pool towels are available at the Front Desk)
・Daily maid service
・All rooms are designnated non-smoking
・Coin-operated laundry (located on the second floor,above Gerard's Restrant)
・In-room safe (key rentalsavailable at the Front Desk)
朝食のことなどについては大体わかっていたので特に何も思わなかったけれど、コインランドリーがあるのは知らなかった。しかも“located on the second floor,above Gerard's Restrant”ということは自分たちの部屋の相当近くなんじゃないだろうか。そう思って廊下に出てみると、ベッドルームのドアを出た向かいに小さな部屋があり、洗濯機と乾燥機があった。これは案外有難いかも知れない。
もう一つの便箋の方には何が書いてあるのだろうか。便箋は三つ折にされ、“The Plantation Inn”と大きく書かれた下に“Maui’s Premier Bed & Breakfast”と小さく書かれたシールで封されていた。シールをそっとはがして中を見ると、滞在中のジェラーズでのディナーを$50割引するというようなことが書かれていた。
◆ ◆ ◆
1−2 “NO KA OI”
(釣りに出掛ける二人)
とにかく体内時計がめちゃくちゃだ。
日本を出てからホテルに到着するまで、機内食や空港での軽食で食事のタイミングがよくわからなくなっていた。
しかも毎度のことながら時差ボケで眠い。こんな時はとにかく行動するしかない。着いた早々のんびりしてしまったら、時差ボケはますますひどくなる。部屋を出て、少ししたら早めの夕食を取って、朝までゆっくり眠るのだ。
私たちは着いたばかりのホテルを後にした。とりあえず散歩。そして少し疲れたところでチーズバーガー・イン・パラダイスかハードロック・カフェで早めの夕食。最初からその予定だった。
外へ出て、プランテーション・インはとても立地がいいな、と思った。
ホテルの前をぶらぶら歩いてゆくとすぐにフロント・ストリートに出る。ちょうどいい距離感だ。
フロント・ストリートに出たらとりあえずバニヤン・ツリーの辺りまで歩こうと思った。ただそれだけでいいのだ。それだけでいいと言いつつ、途中で“Maui Tropix”と前回来た時にはなかった“Billabong”に寄った。買い物はしなかった。買いたい物はまた明日にでも買いに来れば良いと思っていた。ラハイナ滞在の気楽なところだ。
パイオニア・インの前の港をうろついたあたりでKくんが空腹を主張し始めた。私たちはまたぶらぶらと来た道を戻り始めた。
夕暮れ時のチーズバーガー・イン・パラダイスは混んでいる。海に日が沈むのが見られるからだ。美味しいチーズバーガーを食べながらラハイナでサンセットを見るというのは確かに悪くない。悪くないどころかすごくいいかも知れない。だけど今日は初日ということもあり、ハードロック・カフェに行った。
ハードロック・カフェではフロント・ストリートに面した窓際の席だった。窓は網戸のようになっていて外の景色が見えた。フロント・ストリートは、傾き始めた日の光の中、サンセット目当ての人が増えて来ていた。
ハードロック・カフェの窓からの風景
ハンバーガーを食べ終えて外へ出ると、ちょうど間もなく日が沈む頃と思われた。私たちもサンセットを待つ人たちに混じることにした。
多くの人たちが写真を撮っていた。私とKくんも、何人かに夕日をバックに写真を撮って欲しいと頼まれた。外国の人たちには何と声を掛けながらシャッターを押すべきか考えながらも快く引き受けた。
ラハイナのサンセット
日が沈んでしまうと私たちはまた港の方に歩き出した。
ラハイナには近代的な建物がない。条例で禁止されているからだ。そのラハイナの夕暮れ時は、なんとも言えず可愛らしくいい雰囲気だった。
私たちはバニヤン・ツリーの下まで行き、そこで引き返し、ABCに寄ってホテルの部屋に戻った。
夕方のチーズバーガー・イン・パラダイス
夜のラハイナ
夜のバニヤン・ツリー
バニヤン・ツリーの下から見た夜のラハイナ
2日目。この日も天気は良かった。
ホテルのプールサイドで朝食を食べた私たちはまた町へ出た。
今日は少し買い物をしようかと思っている。と言っても、本格的な買い物はオアフに行ってからいくらでもやってしまうだろうから、とりあえずマウイでしか買えそうにない(多分)Maui Tropixで何か買っておきたい。
結局、ラハイナ・センター内のバナリパと、昨日覗いたMaui Tropix、Billabongで買い物をした。
バナリパで何故か店員さんに「Where are you from?California?」と聞かれた。
なぜ私がカリフォルニアから来たと思うのか、疑問に思いながら「No,I’m from Japan.」と答えると、「Oh!私日本語少シダケ喋レマス!」と日本語で言って来た。なぜ私がカリフォルニアから来たと思ったのか。それも日本語を話せるあなたが。謎はますます深まったが、結局それは未だ持って謎のままだ。私かKくんのどちらかにカリフォルニアから来た人間の特徴と共通のものがあったのだろうけれど、それを聞いておけば良かったと後悔している。
彼(その店員)はシカゴから来たらしかった。「マウイへは以前にも来たことがあるか」と聞かれた私は、多分6回目くらいだと思う、と答えた。彼は少し驚いたようだったけれど、すぐに納得したように頷きながら「Maui is beautiful.」と呟いた。
ラハイナのフロント・ストリートは以前来た時とあまり変わらなかった。新しい店が出来たり、以前あった店がなくなったりということ自体があまりない。
オアフに限らずマウイでも場所によってはどんどん変わってしまうのに、ラハイナは変わらない。私はなんだかそれが嬉しかった。
“MAUI NO KA OI”というマウイでよく聞くフレーズがある。とりわけラハイナではよく聞いたり目にしたりするような気がする。「マウイが一番!」とか「マウイが最高!」とかいう意味だ。
「What does mean “NO KA OI”?」
すれ違った観光客らしい家族連れにそう聞かれ、思わず「最高!」と元気に日本語で答えてしまい、照れ笑いした。
“NO KA OI”と書かれた門(?)
◆ ◆ ◆
1−3 ジェラーズ
(ジェラーズのテーブル)
お昼はチーズバーガー・イン・パラダイスで食べた。いつものことながらお店は混んでいた。2日続けてハンバーガーを食べているけれど、それでも美味しく感じた。ハワイで食べるハンバーガーは美味しいのだ。
そして散歩。
もしもこっちに住んでいたとしても、よほどひどい天気でない限り毎日、もしかしたら毎食後必ずぶらぶらと散歩してしまうような気がする。
チーズバーガー・イン・パラダイス
ラハイナの海沿いの風景
ラハイナには2泊だけだから、2日目にして早くも“ラハイナ最後の夜”だ。最後の夜だからという訳ではないけれど、せっかくプランテーション・インに泊まっているのだからジェラーズでディナーを、ということになった。
夜、私とKくんは部屋のドアを出てすぐの階段から直接ジェラーズへ降りて行った。
前菜とスープは1つずつ頼み、2人用にシェアしてもらった。メインとデザートはそれぞれ2人分頼んだ(正直、あまり美味しいとは思わなかったけれど、多分私がフランス料理を食べなれていないせいだと思う)。
店内はほぼ満席で、奥の部屋に8人くらいの日本人のグループがいた。年配の夫婦が4組(多分)で、観光客なのかも知れないけれど、観光客っぽい雰囲気がなかった。もしかするとマウイに住んでいる人たちなのかも知れない。そういえば、それぞれ別々に店にやって来たような気がするし、お久しぶりとか言っているのも確かに聞こえた。
全員揃ったあたりでジェラーズの店員さんに写真撮影を頼んでいた。「・・・One,Two,Three,Alo〜ha!」そんな掛け声で店員さんはシャッターを押した。私は成る程、と思った。そんなふうに言えばいいのか。
レストラン“ジェラーズ”
ジェラーズのテーブル(上から)
◆ ◆ ◆
1−4 フロント・ストリートの裏道
(裏道からのぞくラハイナの海)
3日目。今日はラハイナを離れ、ワイレアへ移動する日だ。
朝食を食べてからチェックアウトするまでにはまだ間があるので、私とKくんはまたしても散歩に出掛けた。いつものようにフロント・ストリートを歩き、バニヤン・ツリーの前を通り過ぎると、帰りはフロント・ストリートの1本裏の道をホテルまで歩いた。
裏道と言ってもたった1本で、時々海だって隙間から見えるのに、人は誰も歩いていなかった。現地の人しか通らないんじゃないだろうかと思った。人はいないけれど「寂しい」という感じはなく、何故だか懐かしいような気がした。子供の頃に迷子になって知らない道に出てしまった時のような、すぐ近くによく知っている道があるはずでおそらくすぐに戻れるはずなのにその道がわからなくて、でもそれほど不安でもない。そういう感じに似ていた。
続いている真っ直ぐな道
涼しそうな木陰
フロント・ストリートと海が少しだけ見える
散歩から帰りホテルの部屋へ戻った。いよいよラハイナとの別れが近づいてきていた。
ラハイナは、次に訪れる時も変わらないで私を迎えてくれるだろうか?
「Chapter 2 ワイレア」へ続く。
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