本書では、ゲノム解読とその周辺に絞って、多少の解説を加えつつ、それが
我々の生活をどう変えるのかという企業や国ではなく庶民の立場からの視点で
述べてみたい。また、極力、身近な事例を取り上げることによって、バイオテク
ノロジーが一般庶民の生活をどう変えるのか、どんなよいことが起きるのか、ど
んなことに注意しなければならないのか述べてみたい。筆者の真の願いは、本
書によってバイオテクノロジーを啓蒙することではなくて、バイオテクノロジーを
正しく理解することにより、他の生物の命、他人の命をおろそかにする人類の
奢った心を糾し、人類が生命への畏敬の念を深め、21世紀を「いのちの時代」
として幸せに生きる知恵に気づいて頂くことである。それこそが、ゲノム解読の
最大のインパクトだと思うからである。
ドラフトが発表された翌年の2003年に、『そこが知りたい!ポストゲノム』(か
んき出版)を刊行した。あれから20年の間にポストゲノム研究はどのように進
み、我々の生活にどう役立っているのだろうか。意外とゲノム解読、ポストゲノ
ム研究が、どのように我々の生活の役に立っているか知らないという方も多い
のではないだろうか。
ヒトゲノムの内、解読困難箇所として残っていた配列の8%も解読され、まさ
に全ヒトゲノムが完全に解読されたのを機に、ゲノム解読の成果を補筆し、『そ
こが知りたい!ポストゲノム』の補完版として、『そこが知りたい!ポストゲノム
U』を、Kindleの電子書籍として刊行することにした。やはり本は紙でないとい
う方のために、ペーパーバックとしても刊行することにした。 |