とうとう出てきた日産セフィーロ・・・は古いな。とうとう出てきた『忠さんのスプーン人生』です。常見忠さんがいままで書いてきた雑誌や新聞の記事、単行本、未発表原稿などから編み上げたベスト盤のような本です。後ろに見えているのは、そのために作った雑誌や単行本、原稿のコピーを綴じて構成を検討したときのものです。その後、選んだものを私が打ち込んでデータ化しました。あらゆるものを入れたり省いたりしたので、実際本にした原稿の2倍くらいテキストデータができました。 (2012/11/10)

 突然ですが、来たる11月11日は私の誕生日です。だからどうしたという人がいそうですが、実はこの日は常見忠さんの誕生日でもあるのです。なんと運命的なことでしょうか。

 巻末「解説」にも書いてあるのですが、この本のルーツは9年前の2003年に遡ります。私は、ひょんなことで忠さんから、本にする原稿を書き上げたところなのだが出版するところはないだろうかと相談を受けました。当時付き合っていた週刊釣りサンデーをはじめとしてあちこち聞いたのですが、私の稚拙な売込みで本はできませんでした。その原稿は同年『ギジー』にて「伝説のヘッドウォーター」のタイトルで連載が始まりました。しかし、なぜか2003年原稿すべては使われないまま終わってしまいました。

 書籍化の話が再び動き出したのは、2011年5月のことでした。前年に地球丸『ロッドアンドリール』で連載した「Let's inner spool !」をきっかけに私のリール話をまとめた本の計画ができ、計画は未定ながら釣り場写真を撮れる季節に撮ろうということで、地球丸稲葉氏が岐阜を訪れました。そのとき、移動中のクルマの中で「忠さんの人生をまとめた本はどうだろう」といってみたのが始まりです。

 その後のことは「解説」のとおりなのですが、なんとも不思議な運命のめぐり合わせを感じます。

 もっともっと話を遡れば、忠さんを知ったのは高校のころ『ルアー野郎の秘密釣法』を買ったのが最初なのですが、私は常見忠さんが誰か知らず、リールの手入れについて書いてあるくだりを見てこの本を買ったのでした。当時からちょっとでもリールのことが書いてあると本や雑誌を買うヘンタイだったのです。私くらいの世代だと、忠さんをシマノの釣り番組やバンタムのコマーシャルで知ったという人が多いようですが、当時中部地方にテレビ東京系の局はなく、見たことはありませんでした。

 その後ブランクスプーン(この誕生についても本に収録しています)の通信販売時に同封した手紙でやりとりが始まります。初めて直接お会いしたのは2001年のこと、「忠さんに会いに行く」のとおりです。

 思えば、このとき私が「自由に動ける」ようになったのは勤めていた会社(シマノではない)の社長に暴言を吐いてクビになったからだったのですが、それがなければ、『忠さんのスプーン人生』はできなかったはずです。「Let's inner spool !」があのタイミングで始まっていなければ、やはりこの本はできなかったはずです。これらを含み、30年前忠さんをロクに知らずに『ルアー野郎の秘密釣法』を買ってしまったことから始まるさまざまなめぐり合わせで『忠さんのスプーン人生』はできました。誕生日が同じだったことといい、私はこの本を作るためにこの世界に呼ばれたのかもしれないと思ったりします。

 なにぶん釣りの本は発行部数が少なくて、大きめの書店や釣り具店でないと手に入りにくいようですが、ネットでも買えますし、ぜひとも読んでいただきたいと思います。

 こないだ、仕事机の前に貼ってある『フライの雑誌』のカレンダーを眺めていたときのことです。10月の10と2012という数字が並んでいるのを見て、ふと10ステラを連想しました。こういうところでまでリールを思い出すのがヘンタイのヘンタイたるゆえんなのですが、突然大変なことに気がつきました。10年から12年になるには3年もかからないということです。うわ、『ソルトウォーター』12月号に「今年3年ごとのモデルチェンジを見送った10ステラ」と書いちまったじゃああありませんか。まだ3年経ってないじゃないか。あわわ。 (2012/11/2)

 こういう間違いってよくありますよね。2010年が1年目ということは一の位の0が1年目だから1足して考えないといけないから12年が3年目でモデルチェンジだって思っちゃうでしょ? ないか。

 いつこの勘違いをしたのかなあと記憶をたどってみると、たしか2月の大阪フィッシングショーから帰ってきてフィッシングショーについて書いているブログなんかを拾い読みしていたら、ステラはモデルチェンジしないみたいなことを書いているところがあったんじゃなかったかしら。(このサイトがいい例ですが)ネットのタダ情報なんて間違いだらけですから、鵜呑みにしちゃいかんのですが、私は常々3年のモデルサイクルは短いと思っていたので「そらみろワシの言ったとおりになったじゃないか」と、“10ステラは3年のモデルチェンジを見送ってロングリリーフ的にヴァンキッシュが出た”というストーリーが頭の中で固まってしまったのですな。

 あほをさらしている『ソルトウォーター』誌は絶賛発売中なので、お買い上げの方は該当箇所を敗戦後の国定教科書のごとく墨塗りしてからご使用ください(シマノからクレームとか来んのやろか)。

 そんなわけで年が明けてステラが新しくなるかどうかは知りませんが、案外私の思い込みのようになってしまうような気がしないでもありません。ヴァンキッシュは「パラシュート」だからです。

 これは25年前島野工業の会社説明会で聞いた話ですが、シマノ製品は自転車も釣り具も最初に高いのを出して、そのイメージで下のモデルを売っていく方針なのだそうです。これを「パラシュート作戦」というのだと、人事課の人がいってました。

 実際ステラを思い出してみると、初代92が回転バランス、95がSHIP、98がスーパーSHIP、(00と)01がスーパースローオシュレーション、04がワンピースベール、07がAR-Cスプール、10がX-SHIPを売りにしていて、いずれもアルテグラやその下のシリーズまで展開されているのですね(うーんこれだけのことを資料も見ずにそらで書けるあたり我ながらすごいな・・・というおごりが勘違いを生む)。

 そう考えると、ヴァンキッシュは今までのツインパワーMgとは明らかに違って、軽量ローターによる回転レスポンスで「パラシュート作戦」をやっているのがわかります。だから、本当に13ステラが出ない可能性もなくはないのではないかと思いますが、記述が違っとるのは変わりませんわな・・・。

 しかしまあ、本当に1年先送りしたいくらい悩んでるかもしれませんよね。ちょっと考えただけでも、次どうするか難しいですよ。ボディ材料と防水機構を考えただけでも頭痛くなるでしょう。

 イグジストはカーボンになりましたが、違いを出すためにMgボディのままにしたら、なにやら変な話になります。いまのカーボンボディがMg同等の剛性(たわみにくさ)ならば、わざわざMgボディにして防錆処理などにコストをかけるのにどういう意味があるのかということです。ムダな部分に金をかけてこそ高級品じゃといっても、どうせかけるなら他の部分にかけたほうがいいでしょう。かといって、カーボンにしたらしたで、これも頭が痛い。ラインナップの序列がつかなくなります(なんとなくダイワリールもそういうきらいがないでもないような気がする)。ステラをカーボンにしたら、まさかツインパワーをアルミにするわけにはいきませんから、カーボンしかないでしょう。そうなると、ステラからレアニウムまで何が違うのかということになりそうです。

 防水はいまもステラには付いているわけで、マグシールドと違って接触式だといっても、ステラの回転が悪いなんて誰も思ってないわけですから、うちは昔からやってるよといえばよさそうです(私はそう思う)。でも、それで市場が納得するかどうかは分かりません。ツインパワー以下のモデルをどうするかも難しいでしょう。

 もっとも、私なんかの想像を超えたモノ凄いものがあっさり出てくるのかもしれません。足し算もできん人間に先の予測などできるはずもありませんからな。

 上の写真は、問題の記事のために各社から借用した広報リールです。集合写真は誌面には使いませんでしたが、もったいないので撮っておきました。実はこの中に、なんだか欲しくなってナチュラムでポチってしまったリールがあります。真ん中の一番奥・・・日本メーカーのほうができがいいのに。つくづくヘンタイ。

 2012年10月27日、霞埠頭のシーバス(笑)です。いわゆるソルトのベイトフィネスを体験してみようと行ってきました。最初はアジかメバルが来ないかと外向き部分で投げていたのですが、風が強く退散、以前シーバス狙いで通ったことのある内側の水路に行きました。内側にメバル・アジの類はいないだろうと最初ハードルアーを投げていましたが無反応だったので、メバルワームに替えたら一発でヒットしました。ここは20回近く通ってクロダイとメッキを各1匹釣っただけで、シーバスはいないのかと思っていましたが、いたのですね、このサイズなら。当時使っていたのはカウントダウンラパラの7センチ一本やり。そら釣れんわ。 (2012/10/28)

 それ以前にシーバスイコールカウントダウンラパラというのが古すぎへんか。

 リールは2500Cにアベイルのスプールとマグネットブレーキを組み込んだものです。トラウトの釣りに使った感じでは2gを超えるルアーならスピニングと互角という感じでしたが、ソルトでも同じでした。写真は2.2gのジグヘッドで、これくらいあれば普通に投げられます。おそらくワーム込みで3g弱、ワームの空気抵抗を考えたら、こんなもんでしょう。

 ラインはフロロカーボンの6Lb(1.5号)を50m巻いています。フロロカーボンはスピニングで使うと3Lb(0.8号)くらいでも軽いジグヘッドを巻くとライントラブルが出がちです。6Lbフロロで軽いジグヘッドを使えるのはベイトのメリットといえるのではないでしょうか。

 ロッドは渡辺つり具店のフレックスULスピンのブランクで作った6フィートベイトロッド。足場の低い内側水路なら十分でした。ただ、足場の高い外側では全長が短いのに加え、たぶんこれは私だけだと思いますが、キャストの瞬間にロッドを放してしまったらどうしようと、キャストがおっかなびっくりになってしまいました。

 私はいつも足より水面が高い釣りばかりしているせいか、高い堤防からの釣りが苦手です。ロッドを落としたら終わりだなあと思ってしまい、キャストが思い切ってできません。これが、セパレートグリップだと後ろのグリップに左手をひっかけるように添えられる分、安心して投げられます。もしかして、セパレートが流行っているのは、そういう理由・・・なわけはないか。

 海は魚の写真に困ります。本当は上のような撮り方はいけないと思うのですが、たいてい人工の岸壁なので渓流のような写真はまず不可能です。海で使うルアーもすべてバーブレスにしていますが、これじゃあ本末転倒です。ポケットから出した瞬間に1m四方の板になる透明な軟質樹脂シートとか、ないですかね・・・。

忠さんに会いに行く
 2001年の常見忠氏訪問記および「忠さんのスプーン人生」など諸々です。

 2012年10月16日、忠類川のチャムサーモンです。川に入ってとりあえず分流の浅瀬にスプーンを流してみたら一発で来ました。いきなり釣れたのでさっと写真を撮って今日は何匹釣れるのかと思ったら、それっきり。またまたスミイチでした。 (2012/10/22)

 海外って北海道じゃねえかって? 本州の外だもん。海外でしょう。

 リールはバンタム1000SG。実はこのリールは自分で買ったものではなく、S社在職中、ポリバケツ事件で手に入れたものです。

 ある釣り具店に怪しい男がポリバケツを持ってきました。バケツといっても雑巾がけに使うようなバケツではなく、飲食店の裏で生ゴミを入れてあるような巨大なやつです。その中にはバンタム1000SGと200SGがゴロゴロと入っていました。男はこれを1万円で買ってくれといいました。

 釣り具店はバケツごと買い取ったものの、これは怪しいとS社の営業マンに連絡、営業マンが本社に引き取ってきたのでした。

 当時私のいた部署はリールをテストするところだったので、テストで不合格にしたリールをちゃんとつぶさずに捨てて、それが何らかのルートで流れたのだろうということになり、バケツごとうちの部署に返されてきました(品管というのはだいたい製造や営業の流れを妨げる仕事だから煙たがられてこういう風にいじめられるのだな)。

 だから、もう一度徹底的に破壊して捨てることになったのですが、もったいないので1台いただいてきたのが写真のリールです。無造作にバケツに叩き込んであったため傷だらけですが、中身は新品未使用でした。

 それにしても謎なのは、なぜそんなことが起きたかです。不良品としてハネたにしては、どこも悪くありません。テストに使用した形跡もありません。実際こうして20年以上経っても動いています。

 1000SGは100のカシメフレームをワンピースアルミダイキャストにして軽量化した高級品でしたが、発売すぐマグネットブレーキのブームが来たため、あまり売れなかったはずです。200SGは100でさえスプールが重くてバックラッシュしがちだったものをさらにワイドスプールにしたのですから、これもあまり売れなかったのではないかと思います。だからといって、売れ残りを捨てるくらいなら価格を下げてでも売り払ってしまいそうなもの・・・やっぱり謎です。

 いずれにせよ、いったん闇に流れかけて回収され、スクラップにされるはずだったリールが、20年余後にこうしてサケを釣ったわけで。運命的な1台であります。

 今月売りの『SALT WATER』にてリール特集があります。ここ数回はメーカーの持っているデジタル写真データをもらって記事を作っていたのですが、あまりにワンパターンなので今回は現品を借りて撮影しました。で、一部分解もしたのですが、新イグジスト・ルビアスのマグシールドはヤバイだろうなあと、代打で私物セルテートのローターを外してみました。ローターを外せば磁性オイルの写真が撮れるだろうと思ったのですが、その段階で磁性オイルが飛んでしまいました。殉職・・・。 (2012/10/11)

 しかし、そんなことは想定内、これを機会に前々からやってみたいと思っていたフリームスのフェルトパッキンの移植をやってみたのが上の写真です(いうまでもありませんが撮影用に借りたフリームスから移植したのではありません・・・)。

 ムダにプレス金型を起こすはずはないし、他のモデルへの展開を考えたら当然互換性はあるだろうと思っていたのですが、はたして取り寄せたパーツはぴったり合いました。

 世の中には、マグシールド採用機種をバラして磁性オイルを飛ばしてしまったものの、釣り具店に出したら店のおじさんに「お客さんねえ、説明書にバラすなって書いてあるでしょ?」と延々説教されるのではないかとか、グローブライドから電話がかかってきて叱られるのではないかとちゅうちょしている人がいるかもしれません。でもこれなら大丈夫です。

 フェルトに浸み込ませるオイルは、アブ・ガルシアのシリコートにしました。フリームスの説明に「特殊シリコンオイル」と書いてあるからシリコンオイルのこれにした・・・のではなく、リールオイルの中でいちばん粘度が高そうだったからです。

 「シリコート」というのはガルシアがアブ・ガルシアになる前から使っている商品名ですし、いまのはガルシア単独時代のものとは変わっているので、シリコンオイルかどうかは不明です(それ以前にシリコンオイルだと何がどうなのか私は特に知らんのだが)。現在の「シリコート」グリス・オイルはボトルやチューブにも印刷してあるとおり(いまはしてないかも)米国のシンコー(Synco)のものです。

 昔々S社で他社のグリスをアメリカからたくさん取り寄せてテストしたことがあります。そのときシンコーのスーパールーブもいっしょに見ました。いまシリコートといっているものはそのときのと同じものに見えます。グリスはちょっとネバリが強くて回転が重くなるものの、磨耗防止性は良かったので、グリスもオイルも信用していいものだと思っています。

 そのときグリスを集めた米国販社の担当者はスーパールーブを採用できないかといってきたものです。理由は担当のお姉ちゃんがかわいいからやといっておりました。アブ・ガルシアが採用しているのもこれが理由かもしれません。

  私のセルテートは、フェルトパッキンにしても回転はまったく重くなりませんでした。かえって回転が軽くなった気がするくらいです。磁石よりフェルトのほうが軽いから自重も1gか2g軽くなったはず(わかるわけないけど)。費用は100円のワッシャー3枚で、税込みたったの315円ですし、自分でリールをさわりたい人にはいいんじゃないでしょうか。

 ところで私は、今週末から来週いっぱい海外逃亡する予定です。ヒグマに撲殺されるといけないので、いま書いておきますと、『忠さんのスプーン人生』はすべて作業が終わってあとは印刷・製本のみとなっております。11月はじめ地球丸から本体価格1800円で店頭に並ぶ予定です。よろしく。

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