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    「温かいもの」

 人間は火を使う生き物である。玉葱をふんだんに使ったスパゲティ入りのスープを食して、ふとそう思いました。「冷えますねぇ」という挨拶の似合う夜の配達を終えて部屋に戻り、かえり(しらす)とキムチと子供の食べ残しのキャベツの炒め物をつまみに、賀茂泉(広島県西条市産)を一合の半分ほど含んだ後に、恭さんが盛り付けてくれた一品を食した時の想いです。冷えた足腰をコタツで温め、暖かいスープをいただいても、やっぱり「温かいものはいいなぁ」と心底思ってしまう、このことはいったいなんだろう?と巡らしたのです。

 「温かいものはいいなぁ」と口をついて出ることの出所が、深くて遠いところにあるように感じます。体が冷え切ったところで温かいものをいただくという感じとはまた違い、体が温まった上に、すいたおなかもひと段落したところで口にする「温かいもの」、そこから連想するものは遠くさかのぼって、火を使うこととお米を食べるようになったこのアジアの人々の原初の広がりです。

 例えばこの国では、大陸から伝えられたであろう稲作が拡がっていく中で、誰もが感じたと想像できる「温かいご飯」(そのころは皆玄米だろうけれど)のありがたさがその原動力となり、稲作から発展して雑穀、豆類、野菜の栽培へと進化していく文化の広がりがあります。これらのものは手のかかる食材であっても、安定した食生活とその美味しさで浸透していったのではないでしょうか。我がこととして手を加えるということが文化だとも言えますが、そのもっとも身近なものが食であることは世界中変わらないことでしょう。どのように火を使って食材を生かすかということは、今も昔も生活の中心であり、元気の源を紡ぎ出す作業であるのです。

 自然界にあるものだけをいただく狩猟採集の生活では、夜明けを告げる太陽こそが神であっても不思議はないと感じます。稲作定住の社会になって、太陽のありがたさとともに、水のありがたさ、季節のありがたさ、海、山河のありがたさなどから自然発生的に生まれたのではないかと想像できる、森羅万象を神とする心が千年二千年と受け継がれてきました。心を受け継ぐには具体が必要です。誰にもわかりやすい具体の象徴が「温かいもの」であったと言うのは強引に過ぎますが、そうでないこともないかなぁ、と玉葱をふんだんに使ったスパゲティ入りのスープを食して感じたのでありました。

2002年2月7日 寺田潤史

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