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 「大根の不思議」


 昨秋、熟畑が無くなって、作付けの制限された畑の中で、家の東のとーと畑に植え付けた九月九日播きの大根の収穫が皆無だったことを報告しました。確かに十月から十二月の半ばまで、大根を届けることができなくなりました。ところが、九月二十九日に種を播いた一月二月獲りの大根が、一転して上作となりました。十二月半ばから収穫し始めて、今もみずみずしい大根が収穫されています。

 いったい、どうしたということでしょう?同じように耕して、元肥は施さないで、高畝に二条で種を播いて(畝幅140センチ)、タフベル(不織布)で覆って、追肥を一回という具合で異なるのは、時期と品種と肥料です。

 時期が違うことで、少しの差が出るのは当然ともいえます。しかし、ここまで収穫皆無と上作とはっきり違いが出るのは、今までになかったことです。間引いた葉大根の味や口ざわりからして、まるで違うものでした。品種は、九月九日播きが、方領大根、宮重大長大根、自家採種の宮重大根と在来種ばかりでした。九月二十九日播きはF1(一代交配)の耐病総太り大根です。本来は在来種のほうが虫には強いことが多いのですが、九月九日播きのほうは明らかに虫害が主原因であり、逆の結果になっています。

 問題は肥料にあるのでしょうか?九月九日播きの肥料には、市販の有機百%のぼかし肥料を使いました。ぼかしと言って発酵させてあるので、追肥してからサッと耕して肥料に土をかぶせました。九月二十九日播きのほうは、鰹節の粕の粉末を生のまま播いて、米ぬかをその上からやはり生のまままいておいただけで土はかぶせませんでした。大根だけでなく、発酵させていない生の有機物は、土の上に置いていくだけがよく、それが虫害防止になります。未熟な有機物を土の中に入れると、ガスを発生させて虫を大量に発生させる原因となるのです。大根は種を播いてすぐに根を伸ばしますから、根に肥料分が直接当たらないようにして根が障害を受けないように肥料やりには充分神経を使います。

 畑の前作にも左右されます。九月九日播きのほうの前作は、じゃがいもです。じゃがいもを収穫してから二ヶ月あまりの休耕期間をおきました。九月二十九日播きのほうは、前作がレタスとズッキーニです。どちらも葉が良く茂り、大量の残渣を土中にすき込んでいます。この収穫残渣のすき込みを繰り返すことで、畑が熟していくと考えています。ですから、今後の作付けの輪作体系によっても、畑の熟するまでの期間が左右されることになるでしょう。「大根の不思議」は、今までの熟畑以上の虫害の少ない太った大根の産出へと進み、今後の展開に大きな励みを僕たちにもたらしたのです。

2002年2月14日 寺田潤史

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