「週刊てーて」ひらく農園からバックナンバー バックナンバーと検索

草子の演奏は草子ドットネットへお入りください。草子ドットネット

雑事とレシピと掲示板「いどばたけ」 いどばたけ

サイトスさんの野菜を使った「レシピ集」レシピ

このサイトについてひらく農園の紹介

リンク集リンク集

最新版の「週刊てーて」はこちらからどうぞ。

週刊てーて ひらく農園から

 「器量よしの工夫」


 野菜の多品種作付けをしていると、必然的に野菜の食べ方の話題に花が咲きます。旬の野菜と、保存できる野菜だけを届けていますから、ワンパターンになることをよしとしない料理の現場の声が聞かれます。

 冬の風は強いが温暖なこの地方は、地元の方と、東京よりの方、関西方面の方、遠方出身の方に大きく分けられる人の流れがあるように感じます。このことが野菜の食べ方に大きく影響していることは、野菜を買ってくれている皆さんのお話を聞くにつれてわかってきました。地元出身でない方が長年この地方に住むことによって、ある限定された野菜の食べ方に変っていくということもあるようです。具体例を挙げると、その代表はなんといっても「水菜」です。

 お正月のお雑煮の具として、この「水菜」はこの地方では絶対的な地位にあります。京野菜として有名なこの細い葉を千本も出しているような「水菜」にもいろいろな食べ方があって、定番の塩漬け、おひたし、サラダ、煮びたしなど、その歯ざわりと相まって、実に美味繊細きわまりないことこの上です。ところが、この地方では、お正月だけにしか「水菜」を食べない家庭が多いのです。この不思議さは、変化は好むけれど、自分から進んで変化の中に入っていくことは好まないというこの地方の保守的な性質に関係しているのでしょうか?

 関西出身の方から「水菜おいしいねぇ、おひたしに凝ってるの」と聞くと、「おー、わかってくれますか!」と嬉しくなります。ほかの関西出身の方の「壬生菜がおいしくて」という声も伝わってきます。特に京野菜を推進しているわけではありません。いろいろな野菜のいろいろの食べ方によって、子供が育ち、家庭が育ち、何よりも自分が育っていくのです。食が薬であるとしても、同じ野菜を違う調理で食べることによって、滋養に変化も出てきます。旬の野菜の意味はそこにもあるのです。

 夕べは、水菜のおひたしを酢味噌(材料は自家製味噌、しょうゆ、酢、胡麻油、キムチの残り汁、すり胡麻)でいただきました。我が家では、野菜のくずがいくらでも出ますから、特に子供たちが食べなくてもいいような一品も多く食卓に上ります。水菜のおひたしも子供たちは誰も手を出さずに、自家製シューマイにばかり箸が伸びていました。先日の一品、大根のスティックでは、予想に反して、子供たちがすすんで味噌につけて食べていました。それでよいと思っています。寒い地方では、季節の料理の基本が保存食に置かれると聞きますが、それこそワンパターンの極みでしょう?「ワンパターンの中から個性が出てきてこそ、器量よしと言えるのだ」と、この頃は恭さんにあずけてとんと料理をしなくなった僕の感想です。

2002年2月21日 寺田潤史

週刊てーて最新版へ

このページの最初に 戻る