週刊てーて ひらく農園から
「アカシヤの季節」
一本の草も生えていない「とーと畑」に、ギンバアカシヤの苗を植えたのは、一九九五年の十一月三日のことでした。「とーと畑」の開墾に着手したばかりの頃で、カチンカチンの土に瓦礫がたくさん眠っているという状態でした。「たーた畑」もいくらかはましという状態でしたので、土壌を豊かにすべく、肥料木のアカシヤの苗を農協に頼んだところ、「ギンバアカシヤ」の苗が信州方面から百本届いたのでした。それを、「たーた畑」と「とーと畑」に分散して植えたのです。
アカシヤという木は早い成長を示す木で、三年目くらいから大きくなりだしてあっという間に背丈を越えるようになりましたが、土のせいか根が下にまっすぐ伸びないらしく、その成長した地上部を支えきれなくなって、アカシヤは次々に倒れて枯れていくようになりました。そして、今では「とーと畑」に残る四本だけとなってしまいました。
この「ギンバアカシヤ」の花が、この時期に「とーと畑」を黄色く彩ってくれます。冬から春への希望を渡すこの黄色い花は、その緑に銀をまぶしたような葉とともに、僕たちに勇気をあずけてくれます。遠目に観ても、壮観な黄色のエネルギーを感じることができます。枝を折って部屋に咲かせば、こんな時代にも春は巡ってきてくれていることを漂わせます。
この時期はジャガイモの植え付け期でもあります。親父の命日である二月二十三日 には、「とーと畑」の一番北側に男爵とメークインを植えました。去年は親父の死でジャガイモの植え付けが寸断して、葬儀の翌日に植え付けを再開したと、農業日誌に記されています。「もう一年か」という思いにため息をつき、その後の相続等のことを思い返して、「親父、これでよかったのけ?」と、仏壇を後にしながら思わずつぶやいてしまいました。
とーと畑に立ち、アカシヤの黄色は、前を向いていくほかはないことを、再確認してくれているようです。
二〇〇二年二月二十八日 寺田潤史
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