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週刊てーて ひらく農園から

 「春はいいもの」


 花桃の花も満開を過ぎて、一輪咲きの春は遠い昔の話のようです。こんなに暖かくなることがいとおしいなんて、年を重ねるということはうれしいことなんだと、新しい発見です。

 とーと畑の苗床では、胡瓜やインゲンの芽も出て、トマトやナス、ピーマン、葉もの類の群れにひとつながりに並んでいます。この苗床は、苗の並んだトレーを地面から十五センチほど浮かしてあって、虫除け用の寒冷紗で覆われ、その上に保温用のビニールがあって、トンネル状になっています。気温や天気にもよりますが、朝の十時頃にビニールをはずして(数十個の洗濯バサミを使って止めてあります)、十一時には動力噴霧器で水を散布します。午後にもう一度水をやって、三時ごろビニールを閉め切ります。この水の加減と(湿度で苗を育てる)上がり過ぎず下がり過ぎない温度を見守ることが、苗を育てるということでしょうか?

 女心と秋の空というけれど、春は秋以上に天気の具合が変わり、温度変化も大きいのです。秋の苗は、ビニールトンネルは必要とせずに寒冷紗だけでよいけれど、春の苗というものは、外は寒いけれど高温要求の強いものが多くて、されど三十度以上にはしたくないという苗の生理上、結果的に苗を育てることに僕の時間は多く割かれることになります。ですから、日曜日なんかに朝から晩まで家を空けるということが、二月から四月までは困難になります。そのこと自体は何の苦もないのでけれど、大体において必ず何か行事が入ることが多かったり、例えば距離の離れた水窪のお茶畑に肥料やりに行かなければならないということに対して、天気と相談しながら腐心することもまた、春の縁起のようなものでしょう。

 苗が育ってきてくれるこの時期には、畑のほうでも草が伸び始め、ぐんと勢いづいた玉葱畑の玉葱の葉と競争です。暖かくなると、自分の体も自然と軽やかになっていることにも気づき、草や野菜と同じ次元に生きていることを思い出させてくれます。草取りをするにも収穫をするにも、できるだけ軍手をはめないで素手のままでいることでも、春は自分のものに感じられます。七年前、奈良の大倭紫陽花村に今は亡くなられた矢追日聖さんを訪ねたときに、「畑仕事はできるだけ素手のままやるのがいい」といわれたことを思い出します。四季の中に春があるということ、それはまぎれもなく自分の中に春があることだと実感しています。

      2002年3月7日 寺田潤史

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↑胡瓜の芽

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↑トマトの苗

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↑インゲンの芽の出はじめ

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