週刊てーて ひらく農園から
「縁をかたちに」
貯蔵用の玉葱の種播き週間が終わりました。日の長さと成長の関わりが顕著な玉葱は、その播種時期が限定されます。九月の二十三日と二十五日、二十八日、十月の一日、この三年間まったく同じ日に種をまいております。一日一品種でトレー三十五枚、約一万粒の種をまき、播いて五日目に苗床の地面にトレーを密着させていきます。トレーを並べておいて、畑の土をトレーの高さまで寄せ、まるで地面にトレーが埋まっているかのような状態で育苗します。種をばらばらと播くのではなく、トレーのセル(ます)一つに一つずつ播いて、根だけは大地に深く根付かせ無限のエネルギーをいただくのです。
玉葱の畑への定植作業に機械を導入して四年目になりますが、この育苗方法がとても気に入っています。この方法を考えたのは、ヤンマー農機の研究者です。最初の年の暮れの休養旅行では、その研究所に出向いていろいろ教えていただきました。そのまま淡路島と香川県の三豊平野に足を伸ばして玉葱産地を見学に行っています。その一連の流れは、現在の玉葱への愛着のようなものへと形になって、日々の作業のイメージを膨らませてくれています。
通年のようにお彼岸が来て、台風が雨の日々を連れ去り、日一日と冬へと向かう、子供たちの大騒ぎをお茶碗を洗って夜に沈め、僕達はどこへも向かうことなく、なんとかこの一日をしのいだ充足を噛み締めます。その充足の中には、季節の通りにだけ育つという、玉葱の種播きを終えたことが大きく含まれています。
昨夜、偶然に出会ったというひらく農園のホームページを見ての暖かいお便りがありました。その方のお便りから、一つ大きな気付きをいただきました。僕が帰農して十三年、いつも頭を掠めていたことに、農と音楽の境界線がない、ということがあります。農には生活のすべてがあり、音楽には詩も曲も過去や未来の記憶も含まれます。それらは、自分というフィルターでしかイメージできません。ところがそのイメージというものは、自分が出会ったすべてのものの縁という形の結果なのだと気付かされました。そのイメージを具体化する作業が、日常であるのです。やはり境界などないのです。玉葱への愛着があるとすれば、それは今まで生きてきたすべてのことへの愛着であり、先達からの継承として未来へと解き放つ具体と言っていいかもしれません。
2002年10月3日 寺田潤史
↑芽の出かかったもみじ3号播種後5日目 |
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↑芽の出揃ったターザン、播種後八日目 |
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芽を天へと伸ばし始めた七宝早生7号、播種後十日目 |
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今週の野菜
野菜 玉葱 |
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品種 七宝甘70スーパーグリーンベルト 味九条 遠州早生 黒種衣笠 黒潮 スターライト オデッセイ ウェルカム 京みどり つばきグリーン 自家採種 セニョリータ 男爵 寿 |
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