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週刊てーて ひらく農園から

「オスの名古屋コーチン」

 鶏小屋に、名古屋コーチンのオスがやってきました。ブラウンのメス四十八羽に対して二羽のオスです。鶏糞もみ殻堆肥を4tダンプに山盛り一杯積んだその上に、籠に入れえられたオスの名古屋コーチン二羽を積んで、ロープで縛り付けて移動してきたのでした。

 移動中、おびえた名古屋コーチンは、くちばしも動かさないで、鳴きもせず、ただうずくまってじっとしていました。こんなことで、あのかしましいメスたちの中でやっていけるのだろうか、と心配になるくらいでした。

 夕暮れ、あと三十分で日没かと思われる時期を選んで、籠に入った名古屋コーチンを鶏舎に入れました。暗さに対して目の効かない鶏の性質、よそ者をいじめようとする鶏の性質を考えてのことです。籠から出た名古屋コーチンのその雄姿は、それは見事なものでした。体も大きいのですが、長く伸びた尾っぽの黒がとても凛々しく、すっと背筋を伸ばして悠然とたたずむ様は、高貴さすら感じさせます。よそ者のメスが入ってくればすぐにメスがメスを突付きまわすのに、今回は違いました。そして、今までいじめられて隔離していたメス二羽も鶏舎に戻しました。こちらも大丈夫でした。

 今回のオスの仲間入りに際して、餌もたくさんの量を餌箱に入れておいて、ストレスのない環境を配慮しました。名古屋コーチンは最初、えさを口にしませんでした。新しい環境を観察していたのでしょうか?しばらくして水を飲み始めました。木酢液や魚液、にんにく、とうがらし、びわなどを混合して作った自家製自然液肥が入った水です。今まで飲んでいた水とは感触が違うはずです。違うと感じているのかどうかはわかりませんが。そして、近くにいたメスに交尾一発、次の瞬間にはえさ箱の餌を食べ始めていました。

 オスがたった二羽入っただけで、鶏舎の中の雰囲気が少し変わりました。相変わらずに小さないじめは続いていますが、いじめられる側の逃げ方もすばやいので大きな問題ではなく、少し落ち着いた風情が鶏舎全体を包んでいます。オスは、新しく餌を持って僕が鶏舎の中に入ると、逃げ回ります。メスは僕に寄ってくるばかりです。人間の世界でも、威張っている男性ほど臆病な面を併せ持っていることが多いと思いますが、鶏も変わらないようです。メスは、オスが入ることで一層したたかな一面が協調されます。「卵を産むのは私たちなんだからね」と言わんばかりに餌を我先にと食べています。オスのあの悠然としたたたずまいは、人間の世界の男性もこうでなくっちゃね、と思わせてしまいます。性別という、本来の役割分担が、男女平等の名の下に、その能力を削がれて奇妙な動物へと進化している現状を教えてくれるかのようです。

2003年6月12日 寺田潤史

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↑名古屋コーチンのオスは尾っぽに特徴がある↓
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↑ブラウンのメスと比べてこんなに大きい

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