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「朝ごはん」

  子供の通っている小学校からは、朝ごはんを食べてきたかどうかを調べるアンケートやチラシが配られてくることがよくある。試しに、インターネットで「朝食 給食 小学校」と入力して検索してみると、2,870件の表示があった。育ち盛りの小学生が学校生活での給食というスタイルの中で、朝ごはんとの関係を指摘している人が多いということであろう。

 先日ある方から、「朝ごはんって食べるものなんですか?」という母親の発言を載せた新聞記事を見せていただいた。その母親は、朝ごはんを食べないで育ってきたのだ、と理解できる発言である。その母親が食べないで育ってきたということは、そのまた親も朝ごはんを食べない習慣があったと理解するべきだろう。ただし、成長を遂げた大人が、朝ごはんを食べなければならない、ということはない。そこには、いろいろな考え方があり、職業上の違いからくる生活習慣の違いもあるだろう。大事なことは、育ち盛りの年代に朝食は重要な要素である、ということだ。その上で、親の背中を見て育つ子供に親もまた朝食をとる姿を見せないと、子供のほうが納得しないという事実を腑に落としてみることだろう。

 僕たち夫婦も子供が保育所に通う前までは、朝食は農作業を一仕事終えてから、自家製のパンで摂っていたことを思い出す。子供が保育所に通い始めて、目に見えないお昼の給食は給食として受け入れ、朝食は玄米ご飯と味噌汁で土台を作っておく、というスタイルに切り替えたのだ。そのために、朝の仕事は取りやめて子供たちと朝ごはんを食べることにした。仕事のスタイルを替えられるのは、農に従事するものの強みではあるが。

 東京の八王子の私立の中学高校一貫校では、朝の給食も提供しているとのことだ。その是非はともかくとして、子供たちの中から、家庭の色合いが褪せてきている事実が、給食の中に見てとれるように思う。多数の中の一人として生きる術を、結果的に給食というスタイルが身につけさせてはいるのだが、いざ家庭で、あるいは社会から隔離した状態になると、安定性が失われるということは無いだろうか?この頃の凄惨な事件を、即給食と結びつける気はないが、個の確立は家庭の中で土台が築かれるのだと考えると、食事の重要性ははずせない要素だ。働く親にとって、子供の給食は便利なものではある。少し視点を変えて、弁当の日を増やすなどすると、親は大変にはなるが確実に親と子は近くなるように思う。

 「穂乃香は今日のお弁当を全部食べちゃったね、えらかったねぇ」「朱里はシューマイとレンコンを残してきて、玉子焼きと沢庵しか食べてないじゃないの!」 これは、次女と三女が昨日の保育園の遠足にもっていった弁当箱の中身を見ての恭さんの言葉だ。これらの言葉が聞かれるうちは、子供と親は近い存在である。これらのことは、朝ごはんに何を食べたかもよくわかったうえでの発言であり、朝ごはんとお昼ご飯は連動しているといえる。子供たちが荒れているのならば、親の世代が荒れているのであるから、親も学校も変わらなければならない。親が変われば、子供たちも変わるのである。

2003年11月6日 寺田潤史


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