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週刊てーて ひらく農園から

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「2003年十津川休養湯治紀行」

 ひらく農園にとっての毎年の重要な行事となっている十二月の休養旅行が、無事終わった。これで心身ともにひと区切りをつけて、新たな気持ちで畑に出ようとしてみたが、最初の一歩を踏み出す時になって、頭の中が真っ白な状態であることに気がついた。頭の左の後方が空白な感じであるのだ。畑のことを考えなくてよい一週間は、畑作業のストレスから完全に解き放たれていたということだろうか。後で聞いてみると、恭さんも、同じような感じを持ったということだ。

 七泊中、最初の日と最後の日は、ほぼ車での移動だけであった。子供たちが一緒であるから、途中で公園に寄るなどして気分転換をはかったのは言うまでもないが、高速道路をほとんど使わない道中は、たとえば帰り道での峠に雪を見た子供たちの歓声に代表されるように、その目で知らない地域を目の当たりにするよい機会でもある。そして、外食は今年も、最終日のラーメン屋での夕食のみであったが、これが、湯治宿で自炊できることの利点の一つである。

 湯治中は、日に四度の入浴で、そのほとんどが家族全員での入浴だ。露天風呂を含めて四箇所の家族風呂を利用した。三年間同じ宿であるから、子供たちは飽きが来るかもしれないと覚悟していたのだが、意外なことに「外のお風呂に行こう」コールが連日幾度となく続いたのだ。外のお風呂とは露天風呂のことで、外気のおかげでぬるめとなったお湯と広々として小さなプールのような印象が、子供たちを飽きさせない理由のようだ。湯治三日目になって、僕の腰が思った以上に重症であることがわかった。毎年思うことだが、だいたい五日目になって体が回復してくる感じを持つ。今年は、六日目になってようやく腰が楽になってきた。恭さんのほうも、湯治前の咳がひどかったのが、かなり治まってきていたが、最終日になっても若干の咳が出ていた。むしろ、湯治から戻ったあとになってからほとんどでなくなったような感じだ。

 湯治中に、近くの公園へ一度、新宮方面に二度出かけた。新宮市の街中を走るのは初めてで、まず徐福公園を見つけた。徐福の墓が祀られていた。全国にいる中国人や中国本国、あるいは日本人の有志によって作られたらしい。はるか昔、秦の始皇帝の時代だったか、日本に来た徐福を思い浮かべてみる。太地町にも足を伸ばした。磯を望む崖の上の公園から見た海辺の景色が美しい。海の水が透明だった。新宮市では、神倉神社の急勾配の石段を子供たちも登った。降りる時、長女の妃袈里が途中から数えた石段の数は、九〇六段だったというから、千段以上であろう。奉られた岩倉の大きなこと、神倉の名にふさわしい。熊野大社本宮は毎年行っているが、今年はお守りを売るのに、キャラクターの絵入りで子供の目を引き付けていた。日本サッカー協会のシンボルマークとなった八咫烏も有名になりすぎたかな?徐福公園の近くの魚屋で、さんまの丸干しが吊り下げられていたので、買って宿で焼いて食べもした。

 畑では、休んだ分だけ仕事がたまっている。体が軽いのでついついいろいろ作業してしまうと、子供たちといる時間が少なくなることに気がつく。湯治期間中、子供たちは親とずっと一緒だったから、子供たち同士の喧嘩以外はすねることが少なかった。普段、子供たちにしわ寄せがいっているのだということがよくわかった気がする

2003年12月18日 寺田潤史

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↑新宮市(南に太平洋、西に熊野川)
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↑↓神倉神社
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↑熊野大社本宮

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