週刊てーて ひらく農園から
「無農薬無化学肥料で多品目野菜を育てることとは?その二」
先週、無農薬であることを大雑把に三つに分けて、除草剤、殺虫剤、殺菌剤という視点から逆説的に見てみた。農薬を使わないということは、人間にとって危ない薬品を野菜と一緒に口に入れないということではなく、野菜の育つ環境、つまり土そのものの環境を左右する最大の功労者である微生物にとって最高の状態を保つための手段といえるだろう。そして、化学肥料ではなく有機物を土に施すことも、同じ理由によるのである。
無化学肥料で野菜を育てる場合、普通に考えるのが化学肥料の代わりとして有機肥料を使うということだ。ところが、僕はそうした発想から出発していない。農学部の大学に行ったわけでもないので、チッソ、リンサン、カリという成分で土の相を見ず、微生物がどのように動いているのだろうか?というところからはじめた。土を観察するという意味で十五年前の今は使えなくなった「てーて畑」での鍬とつるはしによる開墾は非常に役立っている。今では、補足的にチッソ、リンサン、カリという側面をみたようなふりもするが、土はやっぱり土であり、そこにある野菜の相、そこにある草の相で土の中を想像しているのである。
化学肥料を使わないで、堆肥を使っているのだが、不思議なことに堆肥だけを使う場合は無肥料栽培という定義になるようだ。僕にとっては堆肥も立派な肥料であるし、成分のバランスも大きく崩れることはありえない。玉葱を例にとって見る。堆肥を散布して畝を立て、玉葱を植えて、しばらくしてその玉葱の植わった畝の上にまた堆肥をどかどかと散布する。PHの安定していない畑であると石灰ではなくて牡蠣ガラの粉末をまく。貯蔵用の玉葱の場合は三月上旬までに灰をまく。後は草取りをするだけである。古くからの玉葱農家は「初期のリンサン、後期のカリ」という言葉をつかっていたようだが、それを堆肥で行っているに過ぎない。カリとして灰をまくけれど、カリをまいているという気分はなく灰はやはり灰だ。堆肥にも種類はいろいろあるが、ここ数年は鶏糞籾殻堆肥を使っている。チッソ、リンサン、カリは2対1対1の割合でバランスよく含まれているだろう。ここでもチッソ、リンサン、カリをまいているという気分はなく、愛知県まで4tダンプをレンタルして一日二往復してとりに行ったあそこの鶏糞籾殻堆肥で、どのくらい寝かしてあるかということしか頭にない。あとは、土と水と空気と微生物にお任せだ。ただし冬は特に微生物の働きが低温と乾燥のために鈍るので、木酢液をまく。にんにくや唐辛子の入った自家製天然自然液肥というかたちで。
微生物を農薬で皆殺しにしていないので、微生物が動いてくれたならば、堆肥の中の肥料成分も野菜の根に吸収されやすくなるし、妙な病気にも抵抗力がつくと考えている。無農薬であり無化学肥料であることが微生物にとっては最大の快適環境になるのだ。化学でつくられた化学肥料や農薬ではなく、素性の知れた有機物であるならば微生物に対しても胸を張ってどうぞと言える。ただ、その有機物の施し方は微生物と相談しながら十分な配慮が必要になるのである。そこが一番難しいところで、頭だけで考えることと実際家としての無理のない方法とでは違いが出てくるが、答えはいつだって野菜と草が教えてくれている。
2004年2月26日 寺田潤史
  | 野菜 | 品種 | 科 | 播種日 |
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