「無農薬無化学肥料で多品目野菜を育てることとは?その四」
多品目野菜の性質で、無農薬野菜を食べ続けている人にだけわかるものがある。新しく野菜が出てくると、たとえば小松菜を例にとれば、柔らかく小さめの葉っぱのついた小松菜が食べられる。そして週に一度買っている人ならば翌週には柔らかさに繊維質の感じられる硬さが加わることになる。その翌週にはかなり硬い感じの葉っぱになる場合もある。つまり、一つの畝で育った小松菜は、何週かに分けてその成長過程を食すことになるわけだ。このことは、通常スーパーで売られている慣行栽培の小松菜とは明らかに異なる点だ。慣行栽培の小松菜は、ハウスで軟弱に育ったものが規格に合った具合に成長した時に一斉に収穫されて出荷されているはずだ。ハウスで育ったものは時間がたてばとろけてしまう。露地のものはたとえネットがかけてあろうとなかろうと、雨をいただき、風を受けて、太陽光線の色濃く、繊維質のしっかりしたものになる。
無農薬無化学肥料での多品目栽培では、一斉に収穫されるものはイモ類や玉葱など貯蔵することの出来るものに限られる。一斉に収穫されないものは、ひと畝丸ごと収穫が終わるまで待たなければならない。ゆえに、葉ねぎのように栽培期間のある程度長いものと葉もののように栽培期間の短いものとでは同じ畝に植えつけないほうがよい。葉ものの中心はアブラナ科にある。小松菜、水菜、しろな、壬生菜、チンゲンサイ、ロケットなどのアブラナ科は続けて作付けてしまうと、虫の集中を起こすことになる場合が多い。もう一つの葉ものの柱である法蓮草(アカザ科)と組んで輪作するのが単純であるし、キク科のレタス類や春菊と組むのもよいと思う。2,3回葉ものが連続したら、まったく色合いの違うイモ類や豆類、ナス科やウリの実もの類などと環境を変えるのがよい。十品目程度であれば、イネ科作物にはじまってマメ科作物、葉菜、果菜、根菜などと続けるのもよいが、五十品目もあればそれは現実的ではない。
十年も無農薬無化学肥料を続ければ熟畑となってしまうので、何でも育つ畑になる。開墾当初の頃の大変さを思えば極楽だ。今の時期はホトケノザ中心の草になる。病気もやはり出てくる。畑を休ませなければならないが、休ませるとは、畑を耕して何も作付けないこととは違う。僕の場合は草を生えるにまかせる。草は、その大地に必要なものが必ず芽を出してくる。昔から、草の種を落とすことはタブーとされてきたが、草の種など気にせずに落とす。大地の浄化は大地に任すに限る。もう一つ方法がある。簡易的な不耕起栽培だ。たとえば、オクラを作付けたあとに耕さないでエンドウを植え、支柱を立てて、エンドウの終わったあとにそのまま堆肥をたっぷり載せて胡瓜を植え、さらに秋に葉ねぎを植えて堆肥を追加し、翌春にはそのままトマトを植えつけるという具合だ。野菜の種類は連作しないように組み合わせれば何でもよい。耕さないということは、地下に水道(みずみち)ができたまま残すということにつながるので、排水はよくなるし、土の相が壊されないので微生物に自由を与える格好になるのだと思う。微好気性微生物が、土の表層の堆肥などの有機物のところに上がってきては土の中に戻っていくという光景を勝手に想像して楽しんでいる。耕さないので大規模栽培には不適だが、多品目野菜には向いているといえるし、何よりも安定的な方法のひとつであると思う。次回「その四」では苗作りについてを書くつもりだ。
2004年3月11日 寺田潤史