「旬を食べる、旬を育てる その十六」
夏を乗り越えたと思ったが、まだまだ台風は乗り越えなければならないようだ。今年は何度台風を意識したことだろう?そのたびに、風に揺れる野菜たちの姿があった。インゲンなどは、その被害の最たるもので、順調な収穫が六月中に中断された。葉っぱが再生したと思うと、また台風がやってくるのである。葉っぱが散れじれになったなら、これはもうお手上げなのだ。この亜熱帯の地方では、夏の暑さを乗り切ることだけでも大変なのに、台風が来たならばインゲンはもう、なすすべがない。
旬の収穫物が極端に減ってきた。いわゆる端境期ではある。貯蔵ものの玉葱やジャガイモやニンニク、南瓜も底をついてきた。植えたばかりの葉ものを、あとどれくらいで収穫に入ることができるかにかかっている。畑に種をまいた法蓮草や大根の芽は出てはいるが、この暑さの中でどれほどに虫に食われないで成長していけるか、例年のことを考えれば期待を大きくするわけにはいかない。葉ねぎなどは定植適期には程遠いが、若苗というか幼苗の葉ねぎを恭さんがもう畑に植え付けている。葉ねぎを切らさないために、無理を承知で畑に植え付けているのだ。あまりに苗が若いと、それだけ虫にも食べられやすいのだ。不耕起で植えつけているので、虫に食べられにくいとはいえ、葉が貧弱であるから心配だ。でも、成長は植え付けが早いほうがだいたいよい。
今日は、恭さんがニンニクの種球をばらばらにしている。極早生のニンニク「遠州早生」の植え付け準備だ。極早生種は、植え付けが早ければ早いほど収穫も早くできる。九月になれば植えつけてよいくらいだ。上海早生ニンニクなどは九月下旬から十月にかけて植え付ければよいが、遠州早生はなんと言ってもこの地方の品種なので、適応性が高く無理が利く。この遠州早生ニンニク、収穫できる球根は小ぶりだが、香気はめっぽう強い。有機栽培では更に強い。ニンニク好きにはたまらない品種だ。疲れたときは、素揚げにして恭さんが食卓に出してくれる。ニンニク醤油もおいしいし、今ならナスの炒め物などをニンニクをすって醤油に入れてつけて食べると旨い。また、春にはニンニクの芽を一瞬楽しむことが出来る。これも遠州早生ならそれだけはやく食べられるというわけだ。
ここに来て、夏の疲れか、腰にまた来ている。夏を倒れないで乗り切ったのは久しぶりだから、疲れがどこかで出ないとおかしいくらいだ。だいたいの仕事はまあ進んでいるといえるので、ちょっと一休みだ。野菜が端境期で若干一休みなのだから、体もあわせて休んでおくに越した事はない。無理をすれば体は動かせるが、体は動きたくないといっている。腰に来ると本当に動く気力が失われる。乳飲み子の四女のそばにいても、なかなかあやすことができない。足の疲れも取れないし、肩も腕も凝り固まっている。幸い、恭さんが二日連続で枇杷の葉温灸をやってくれたので、大事に至ってはいない。熱も上がらない。仕分けや配達も休んではいない。何もかも、作業が進んでいるという状態が一番危ないということか?一年中、旬を追いかけていると、旬とは体との釣り合いのことだと思ってしまう。気候と体のバランスというべきか?とすれば、休むこともまた、季節の一員ということになるのかな?
2004年9月9日 寺田潤史