「地球の懐に抱かれて その五」
暖かい神無月のままに、師走を迎えようとしている。これは助かる。豪雨続きの影響で植え遅れた葉ものなどをせっせと手植えしているのだから、暖かいうちに少しでも成長してくれることはありがたい。気温十度を下回ることなしに、さつまいもも掘り取ることが出来た。
畑がだいぶ乾いてきたので、さつまいものツルをフレールモアで粉砕して、トラクターに芋掘りアタッチメントを装着した。九月から収穫し始めていたさつまいもは、出荷する分だけをスコップで掘っていたので、掘り取りに労力も時間も費やしていた。ツルだって鎌で刈って除去していたのだ。機械が使えるということは、仕事が進むということである。芋掘りアタッチメントで芋の下の土をごっそりさらうと、掘り取りがとても楽になる。寒さもあまり感じないから、ストレスも少ない。二日ですべて掘り終え、納屋に収納できた。さつまいもは寒さに弱いので、十度以下に放っておくと、腐りやすくなる。できれば十三度くらいがよい。だいたいこの地方の人は、通常十月下旬から十一月初旬にはさつまいもを掘りあげる。さつまいもが大きく肥大するのを待つが、貯蔵性のよい状態には気温が必要になるから、その時期がよい塩梅となるのだ。それが今年は、十一月末になっても暖かい。
それにしても、フレールモアの威力は甚大だ。去年まで、さつまいものツルを畑にすき込むのには苦労していた。しばらく時間を置いて乾かさないとすき込めないし、あのツルは結構束になると重い。それが、地下のさつまいもを傷つけることなく、一瞬にして粉々である。粉々であるということは、掘り取りもスムーズに作業できるということに加えて、収穫後にすぐに畑を耕して、次の作付けの準備に入ることができるということでもあるのだ。モロヘイヤなどは、茎が木質化して後始末が手ごわい野菜の一つなのであるが、一往復半つまり三回フレールモアを通すことでやはり完全に粉々になる。豪雨続きの影響で畑が乾きにくい時、地上部の草や収穫残渣を粉砕できると、太陽の光も土に直接当たって畑の乾きも早くなるというわけだ。天候不順と多品目野菜の綱渡り栽培には、もう機械は欠かせなくなってしまった。豪雨と豪雨のあいだをすり抜けるようにして畑作業を進める、という綱渡り栽培は、機械を使ったスピードと手作業を組み合わせてようやく、季節どおりの作業をまっとうできる。
いよいよ、玉葱の植え付け準備に入る。一月植えの玉葱は別として、とりあえず六百メートル分の畝を用意しなければならない。四条植えでざっと二万四千本を収穫の合間に十日あまりのうちに植えつける予定だ。堆肥を散布し、畝立てをしてマルチを張って、それから機械移植という工程だ。玉葱苗の剪葉もしなければならないし、苗の根切りもやって馴化しておく必要がある。幸い、苗だけは素晴らしくよく育っている。僕の咳はほぼ出なくなって体力が戻りつつあるが、病み上がりには違いないから、疲れやすいし無理も出来ない。またしても綱渡りであるが、なるようにしかならないので、天に運を任せてもいる。地球の懐に根を張っている玉葱の苗を、同じく地球の懐に植え付けていくだけのことだが、されど玉葱である。できうるならば、晴天が続くことを祈っている。
2004年11月25日 寺田潤史