週刊てーて ひらく農園から
「薄皮の威力」
ねぎの調整をしていて、毎回驚かされることがあります。
ねぎが虫にやられた場合に、表皮をむいてむいて、虫に食われていないところまでむいていきます。これは、玉葱でも白菜でもキャベツ、レタスでも同じことで、立派な収穫物がとっても小さな野菜に変わる瞬間でもあります。白菜、キャベツ、レタスの場合は、虫のうんちが腐敗のもとになりますから、虫のうんちの無いところまで葉を取り除いていきます。これらの葉は一枚が厚いので、虫は時間をかけないとなかなか中に進んでいけません.
ねぎはもともと厚みのある野菜でないために、虫は茎というか葉の根元の白い部分を直角に食害すると、ねぎにとって致命傷になります(販売できないという農家にとっての致命傷が正解)。僕たちは無農薬野菜の対面販売のために、少しくらいの形状の悪さは許していただいていますが、ねぎのように虫食いが味に直接影響するものについては徹底的に調整します。少しづつ表皮をむいて虫食いの無いところでストップします。これはひどい虫食いだなあと思って諦めかけても、ねぎの葉の薄皮一枚で虫食いが止まっていることがよくあります。あの、半透明の向こう側が透けて見えそうな薄皮です。ねぎの葉肉は食べられてもあの薄皮一枚で虫から守られているのです。
これは玉葱についても同じです。去年の貯蔵玉葱は外側の傷みかけた部分をむいて販売していましたが、やはり傷みは薄皮一枚で守られていたということがよくありました。ねぎや玉葱は何枚も葉を重ねて成長していきます。中から新葉が出てきて、外側の葉が新葉を守っているようです。そして、その葉自体にも薄皮というもう一つのシステムがあって機能するように、長い年月をかけて淘汰を繰り返す中でできあがってきたと推察されます。無農薬であるということは、薄皮の威力を目の当たりにすることができる媒体であると同時に、長い年月を想像できるというリアリストにもロマンティストにもマッチした媒体なのです。
2001年8月9日 寺田潤史
↑葉ねぎの薄皮 |
↑玉葱の薄皮 |
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