週刊てーて ひらく農園から
「荒谷仁美さんよりの無農薬野菜についての質問」
僕たちの育てた野菜を食べていてくれる一人である荒谷仁美さん(磐田北小五年生)より、八月二十七日に夏休みの研究の一つとして「無農薬野菜についての質問」をファックスで頂きました。さっそく答えとして、八月二十八日にファックスで送りましたが、この質問と答えを今週の「週刊てーて」とさせていただきます。
荒谷仁美さんよりの無農薬野菜についての質問と寺田潤史の答え
質問1、無農薬野菜で、一番たいへんなのはなんですか?
答 虫のつかないような栽培方法を、十年単位で整えていくことが大変です。
質問2、虫はどのくらいつきますか?
答 土の状態によって違いますが、まったく虫のつかない場合と、野菜の影も形もないほどに虫に食べられる場合もあります。
質問3、土作りは、どうやってるんですか?
答 畑の土に繊維質を補給しバランスをとるために、牛糞バーク堆肥や鶏糞もみがら堆肥、ぼかし肥料、米ぬか、牡蠣ガラ粉末、草木灰などを畑の外から持ち込みます。畑の中では、牧草などを栽培して穂の出始めの頃に土の中にすき込む緑肥や、雑草をはやして土の中にすき込む雑草緑肥、収穫残渣すき込みといった方法で、繊維質、ミネラル、カルシウムなどなど天然に近い状態を利用して土作りをしていきます。
質問4、種は、どこからかってますか?
答 種屋さんにカタログを見て注文します。場合によっては、種苗会社を訪ねて直接種を購入することもあります。
質問5、いい野菜を作るための工夫はどんなのですか?
答 苗を育ててから畑に植え付ける場合は、苗を厳しい環境のもとで育てます(水分を常に少なめにして、肥料分のあまり入っていない自家製培土で)。種を畑に直接播く場合には、たとえば大根では、無肥料で種を播いて少しづつ追肥していくというようにして、根を大事にしながら野菜そのものの力を発揮してもらうように、環境を整えます。
質問6、どうして無農薬の野菜を作るようになったんですか?
答 二十九才まで東京で音楽をやっていて、音楽とは何か?と考えるようになると、人間とは何か?へと結びつき、農というものが、現代の人間のひとつの源であると考えました。農という世界に身を置いて、音楽をもう一度考え直してみようということが出発になりましたが、どういうわけか、最初から無農薬であることしか頭にありませんでした。
質問7、何種類の野菜を作っていますか?
答 年間五十品目、百五十品種くらいだと思います。
質問8、何時ごろから仕事を始めるんですか?
答 いろいろです。天候しだいで作業が変わりますので。たとえば昨日は、天気予報が雨はしばらくないと変更になりましたから、畑への野菜の植付け準備はやめて、早く播かなければならない種を播くことにしました。夕方で中断して、バンドの録音を三時間ほどやってから、夕飯を食べて、夜中の十二時半頃まで納屋で種を播いていました。こんな時は翌朝七時から収穫作業、出荷となりますから昼寝をするわけです。
質問9、主にどんな仕事をしていますか?
答 種まき、水やり、育苗、畑を耕す、堆肥や肥料の散布、草取り、収穫、調整、仕分け、配達、ホームページ更新、帳簿などあげたらきりが無いほどです。
質問10、無農薬野菜を作っていてうれしい時はどんな時ですか?
答 順調に育っている姿を見ることが、一番嬉しいです。あとはやっぱり収穫がたっぷりあるとわかった時も嬉しいのだけれど、次の瞬間には、たとえば玉葱なら、どうやってこんなにたくさん貯蔵しようかと頭の中が一杯になっています。
質問11、一番、作りやすい野菜はなんですか?
答 手をかけた野菜が育てやすい野菜です。
質問12、無農薬野菜は、長持ちすると聞きましたがどうしてですか?
答 実際に顕微鏡で見たわけではありませんが、細胞の数に関係しているのではないでしょうか。化学肥料と農薬はセットになっていると考えてよいと思います。化学肥料は細胞自体を肥大させるようで、いわゆる水ぶくれ状態を早く作り出すことに適しているのでしょう。有機質肥料はその効き目も緩慢で、細胞を少しづつ増やしていきます。僕の経験では、ある状態までくると、どっと細胞が増えるような気がします。ただし、これはあくまで仮説であって、そのような文献があれば教えてほしいですし、そのような研究をされる方が出てきてほしいと思います。僕がやれば一番いいのだけれど。うぬぼれでなく、確かにうちの野菜は長持ちします。新聞紙を湿らせて野菜をくるみ、ビニール袋に入れて冷蔵庫へ置けば一ヶ月くらい平気でもってしまうので、うちでは古い野菜ばかり食べさせられています。
質問13、虫がつかないようにする工夫は何ですか?
答 土作りが最良の工夫です。そのほかに、自家製の自然液肥を仕込んで、薄めて散布しています。これは、木酢液に魚液、にんにくなどを混ぜてねかしたもので、植物体の生命力を発揮してもらって、虫に強くなるというしくみで、虫を殺すためのものではありません。
2001年8月28日 寺田潤史
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