白菜
週刊てーて ひらく農園から
「育ち盛りの秋風の密度」
あの夏の暑気はどこへ行ってしまったのかと、秋風のそよぐ先を探してみても、冬への気配ばかりが漂っています。一年で一番早く過ぎ去ってしまう農繁期と言える九月は、気候が凝縮されたこの国ならではの季節です。
この地方ではこのひと月のうちに、白菜や大根、冬の菜っ葉類、玉葱の種まきから、白菜、キャベツ、ブロッコリーなどの畑への定植までいっきにやり終えなければならなくて、月末には稲刈りの予定もあります。お彼岸頃を境に温度が急激に下がるために、野菜の土台ともいうべき、人間で言えば〇才から十才にあたるこの時期は、根の伸長、外葉の形成と、地温のあるうちに確実に生育しておくと言う意味で重要な時です。その人間の例で言えば、十月が十才から十五才、十一月は十五才から十八才と当てはめられるかもしれません。十二月のはじめの初霜の頃が、世の中に出て行く洗礼のようなもので、霜にあたって風味が出てくる年内が二十五才くらいまでと大雑把に言ってしまえるでしょうか?
育ち盛りの凝縮されたこの時期は、二十度から二十五度の気温で、多くの野菜の最適な生育温度です。人間にも過ごしやすいのですから、野菜にも虫にも、そして微生物にも快適なのでしょう。先週植えた葉もの類や早出しの白菜、キャベツはネットの中で気持ちよさそうに育っていて、日一日と、わずかながら葉を伸ばしていく姿を見ることができます。この秋風のそよぐ畑で、こんな野菜の葉を見て喜んでいるということは、収穫への期待感があってのことですが、ふと立ち止まって考えてみると、
「確かに仕事として畑に出ているけれど、本当は季節の一員としての仕事をさせられているのかな」
と思い至ります。前述した、人間でいうところの〇才から二十五才くらいまでをイメージしてこの九月の畑仕事があるということすら、秋風の密度の一部なのではないかとさえ思ってしまうのです。季節の一員として仕事をしていくと考えたなら、重い荷物を背負い込むことなく、無理なく泰然としていられるような気にもなります。
2001年9月6日 寺田潤史
↑ネットの中の小松菜(播種後18日で定植して一週間) ↓サニーレタス(播種後17日で若苗定植して三日目) |
↑ネットをはずしてみた小松菜 ↓左から芽の出たばかりのミニ大根(裸畝)、白菜、 ↓キャベツ、葉もの類 |
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