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「玉葱の季節」

 8月末の超極早生「白」玉葱の播種が、最初の玉葱の仕事になりましたが、このお彼岸からの種まきが本格的な玉葱の季節の始まりと言えるでしょう。

 今出荷している「七宝甘七十」と、次に出荷を控える「ターザン」、そして四月まで貯蔵できるという「もみじ三号」に加えて、今年は「七宝早生七号」という品種を選びました。九月二十三日から十月一日にかけてこの四品種を、トレー三十五枚づつ種を播きます。このトレーは三十p×六十pのサイズに二百八十八の穴があいていて、自家製の培土を詰めて種を一粒づつ播く訳です。水やりをして日陰に積み重ね、四〜五日で発芽してくるので苗床に移します。トレーごと土の上に密着させ、ネットをかぶせて毎日水やりをしていきます。播種後五十五日して畑へと定植するまでには、葉っぱを切る剪葉作業や虫取りなどがあって、苗を育てるのが一大事です。苗半作どころか苗八部作くらいの気持ちで、玉葱と向き合います。

 「狂牛病」の表面化で、はっきりと見えてきたものがあります。この食べ物は大丈夫だと言えるものは、当たり前だけれど、顔の見える関係の中で生まれたものだけなんだと。そして、不安があれば出どころをオープンにしていくほかはないわけで、子どもたちに伝えることのすべてがそこにある、と言ってもいいくらいのものです。

 玉葱の季節に戻りますと、僕は全力で玉葱を育てるのみです。もちろん、白菜の季節でもありますし、葉ものの季節でもあります。
「この玉葱はこのようにして育ったんですよ。」
「ああ、ここの土の草はイネ科が多いなぁ、あっちはイヌビユが多くて蛾だらけだ。」
「あっちの畑は土が疲れているから、草をはやしたままにしておこう。」
などと、土との無言の会話も含めて伝えていくことを積み重ねていくばかりです。堆肥播き、畝立て、植付けの繰り返しが、毎日の収穫、仕分け、配達の隙間を縫ってなされていく煩雑さの中で、一つ一つの作業を確実に丁寧にしていくことが、伝えるということに繋がっていくと信じます。

2001年9月27日  寺田潤史

種播きトレー 土を入れて種播き後のトレー
288穴トレー

播種、水やり後、積み重ねられたトレー



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