「中学の同窓会」

　もう時間が経ってしまったけれど、今年の正月過ぎに、中学三年のクラスの同窓会が三〇年ぶりに行われた。ここ二年ほど、高校の同窓生と交流する機会が増えてきて、同窓会というものに慣れてきたところだから、躊躇することなく出席した。同窓会でなくても、ずっと付き合いのある同級生が三人いるので、特別な思いはなかったのだが…。

　３５年前のクラスは４５人ほどがひとクラスで、そのうち２０人が出席した。恩師のＹ先生は７５歳で健在で、出席してくれた。男女の比率は６対４くらいだった。高校の同級生と違って、小学校時代からの友達も多く、加えて中学２年と３年はクラス替えがなかったので、とても近い関係だな、というのが久しぶりに会って感じた印象だ。男の顔はほとんど最初に理解できた。２０歳のときにやった同窓会以来なので、３０年ぶりに会った男が多いのだが、変わらないものだね。個性というものは、中学の時には確立されているものなんだな、という思いがある。女性は、ほとんど顔がわからなかった。たぶん、３０年間、彼女たちには誰一人会っていないだろう。

　あまりに久しぶりなので、自己紹介をするよう提案して、ようやくひと通り誰が誰だかを認識した。その頃には、すでにお酒も進んでいたので、記憶として今はあまり思い出せないが…。きっとまた、後日同級生がその時のことを思い出させてくれるだろう。この頃は、こういった宴席での記憶が、ほとんど消えてしまうことが多い。断片的に印象に残った顔などが、記憶として日常のあちらこちらに出没する。点で記憶することができなくて、面で記憶するのが同窓会の味であろう。

　同級生の中に、ＫＴ君という３月末生まれの彼がいた。彼は、その誕生日の性質で、小学校低学年の頃は、学年の中でもひ弱な印象を漂わせていた。ひ弱といっても、病弱という意味ではない。それが、小学校高学年から中学生になると、からだも大きくなってきて、３月生まれという小学校低学年においてのハンデのようなものを感じさせなくなったと同時に、ひ弱なイメージから乱暴なイメージに変化しつつあった。それまでの優しい彼とは違うイメージを持ったことを覚えている。その後、愛知県の大学に進学したことは聞いていたが、ずっと音信不通だった。

　その彼は、今、中国から商品を輸入して販売する会社を経営している。彼にはお兄さんがいたから、実家に住んでいないものと思っていたのだが、お兄さんが外に出て、彼が実家に住んでいるということだった。会社経営者の顔を色濃くしていたが、あの乱暴になりそうな気配が消え、小学校の頃のような人当たりの良い雰囲気を取り戻していた。この３０年という歳月は、人を複雑に変化させるものだ。

　宴の終わり頃、複数の同級生の前で、僕は何かを尋ねられ、僕の苦い経験を話していた。これは、１昨年の高校の同窓会で、３０年ぶりに会った僕に現在の心情を吐露した彼と同じシチュエーションだな、とあとで感じた。同窓会のマジックは、ここにあるのだろう。同窓会は、過去を振り返るだけのものではない。必死に生きてきた数十年を一瞬のうちにさらけ出し、今現在を報告してこれからを考える勇気をもらう機会でもあるのだ。

2011年2月17日　寺田潤史

トマトの芽が出始めた

苗床での発泡スチロールから安納芋の芽が出始めた

バックナンバーへ

ご意見、ご感想、お問い合わせは、下記よりどうぞお寄せください。

★　ひらく農園の野菜の入手方法

☆　このページの最初に戻る