「５１歳　その２」

　先週、５１歳になったことを書いたが、その僕の誕生日に再婚の届け出を済ませた友人がいたことを知らされた。その友人は、僕の誕生日を知らなかったわけだが、こうなったらしっかりと幸せになってくれなければ困る。何かあって誕生日のせいにされたらかなわないからね。それはさておき、５１歳と言っても、これまた人それぞれ、さまざまな人生がある。同じような人生を送っている人は存在しない、くらいにいろいろな５１年間を皆が持っているのだろう。

　先週末、高校時代から付き合いのある友人Ｓの住むマンションで、飲み会があった。この街を出て飲みに出かけるのも久しぶりだが、浜松の街中へ行ったのも久しぶりだった。浜松の駅からほど近いマンションの８階に住むＳは、単身赴任中である。単身赴任でさびしくてしょうがないから、よく同級生と飲んでいるらしい。僕の仕事は相変わらず忙しいのだけれど、何とか夕方５時で切り上げて、ギターを持って飲みに出かけた。車を出してくれた同級生Ｎもギターを持ってきた。高校時代にドラムスをやっていたのん兵衛のＭも同乗している。いや、のん兵衛でない奴はいないかな。めったに一緒に飲んだことがないＳＯも来るらしい。

　飲みだせば、いつもの飲み会と変わらない。ただ、外で飲むのが久しぶりの僕は、タガがだんだん外れていったのかもしれない。よくＳとは、２０代の頃、喧々諤々の議論をし合った。あの頃、Ｓは僕にいろいろなことを教えてくれた。僕には欠落した部分があまりに多すぎた。灰谷健次郎さんの本を薦めてくれたりしたＳは、人を集めて議論をするのが好きだった。テーマは「友情」という感じだった、と言うとちょっと違うような違わないような…。

　Ｏと僕でギターを弾き始めた。皆で古い唄を歌ったのは覚えているが、はて何を歌ったのか、すぐに思い出せない。Ｍは何かをリクエストしてきた。テンポが違う、もっと早く、と何度も言われたような気がする。確か、チューリップの唄だった、と思う。「サボテンの花」だったかな？Ｍの唄の伴奏をするのは初めてのような気がした。同級生の集まりでは定番のかぐや姫も歌ったと思う。「あの人の手紙」はきっと、声もギターも大きかったのだろうな。

　途中でＭやＳＯが帰り、Ｏは眠ってしまった。Ｓと話していたが、何の話をしたかをよく覚えていない。そこへ、「ピンポーン」と音がした。こんな夜中に誰かが来たのだ。警察官だった。どうやら、近所迷惑と苦情があったらしい。Ｓは平謝りだった。悪いことをした。昔、僕たちは、東京の阿佐ヶ谷で、いつも騒いでいた。苦情は数知れず、苦情に対して開き直ることも少なくなかった。江戸川区に住んだ時には、荒川沿いの堤防で飲んで歌って、やっぱり警察官がきた。あの頃と、やることが全く変わっていないのだ。進歩がないのではなくて、あの頃に戻ってしまった夜だった、というべきか。進歩がないのかな、やっぱり…。あるとすれば、謝ることか？

　今も酒を飲むことは好きだが、飲みすぎた自分は大嫌いだ。大抵誰かに迷惑をかける。うちで宴会する時には、セーブする。外に出ると、ごくごくたまにだから余計にタガが外れる。次の日のからだはひどい状態だ。酒で得た友達のようなものだが、３５年のうちに染みついた無色透明の絆のようなものは、単なるガキの集まりに置き換えられるか？

2011年6月9日　寺田潤史

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