「卓球」

　夏休みに入って、ややこしい日々になった。小学生は暇そうに家にいることが多いし、遊びに出かけるにしても何やかや手がかかることが多い。子猫狂想曲で子猫を死なせて猫をあきらめたはずの三女は、新しく三カ月ほどの子猫を拾ってきて、野良猫として育てはじめている。その三女が、友達に誘われて卓球クラブに通い始めた。

　８月一杯はお試し期間中だそうで、その間に卓球クラブに入会するかどうかを決める。問題は、親の僕たちのほうである。週に２日あるクラブの練習に、たまに当番として親も出なければいけないようだ。僕たちは仕事で出られないことがほとんどである。そこを無理するとなると、それは相当な覚悟をもって卓球クラブに入ってもらう必要がある。覚悟を決めた人間には、覚悟を決めて立ち向かわなければいけない。そこで、早速、ホームセンターに行って、コンパネを３枚買ってきた。卓球台を作るのだ。

　草取りをしなければいけないな、と思っていた庭の一角を指さして、三女に「ここの草をきれいにしいや、卓球台を作るから」と伝えた。通常なら、草取りなど絶対にしない三女だが、卓球クラブに入る友達といっしょに草取りを始めた。インターネットで、卓球台の国際規格を調べた。長さ２７４ｃｍ×巾１５２．５ｃｍ×高さ７６ｃｍ、結構な大きさである。ホームセンターでコンパネを買って戻ってきた頃には、草取りも終り、すっかりきれいになっていた。してやったり、である。

　長さは、コンパネの幅９０ｃｍを３枚で、４ｃｍ不足は我慢した。巾１５２．５ｃｍは、電動のこぎりで切り取ってＯＫ．高さは、コンテナを重ねて角材をはさんでほぼＯＫである。角材とコンパネを釘で打ち付けて固定。これで完成である。２５０００円も出せば出来合いの卓球台を買うことができるが、さすがに外に置くわけにはいかない。屋内で卓球台を置くことのできる場所は、今のところない。安易な手作り卓球台を、外に設置したまま、カバーをかけておけばいいだろう。格安の卓球ラケットやボール、ネットを購入して準備完了だ。

　僕の魂胆は、先の草取りをやらせるだけではない。卓球をこの夏休みに毎日やらせて、飽きるのを待つ、という作戦である。もちろん、毎日やったらますます本気になった、そういうことなら親も応援することになる。中途半端を、ふるいにかけるわけだ。ついでに、長女や次女などの、運動不足の連中に運動させることも想定する。そしてまた、卓球が年に三回ある同級生との飲み会の余興になれば、それも楽しいだろう。一石四丁という魂胆である。

　とにかく、子供というものは手のかかるものだ。夏休みを、親が受け手になっていたらかなわない。親が動けば、子も動く。こちらから攻めて、ぐうたらの夏休みを見ることを回避したい。僕の子供の頃の夏休みもぐうたらだったが、毎日壁に向かって野球のボールを投げていた。運動することと一人で遊ぶことをやっていたから、子供たちにもその素質がないわけではないだろう。球技は、楽しく体を動かすことができるという利点がわかりやすいし、僕たちも畑の収穫から戻ってそのまま卓球をする、ことになりそうで楽しそうだ。

2011年7月28日　寺田潤史

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