「高校受験　その６」

　この夏最後のオープンスクールは、長女にとっても初めての私立高校である。日程を調整して、僕も一緒に参加してきた。記憶にはあまり残っていないが、確か僕の高校時代（３０年以上前）に一度学園祭に行ったことがあると思う。どうして行ったのか、知り合いもいないし、友達に誘われて行ったのであろうか？今では、新しい校舎もできて、校名すら変わっている。

　連れ合いの実家から車で１０分程度のところにあるので、ついでに次女と四女と長男も同乗して朝から街中へ。実家に車を置かせてもらって、僕と長女は、お義父さんに学校まで送ってもらった。じりじりと照りつける太陽と、街中特有の暑さが加わっているが、仕事じゃないから遊びに行ったようなものだ。

　小さなホールのような大きな教室に案内された。その場所で、学校の説明や、在校生の演奏などが披露された。専門外の楽器の演奏は、クラシック音楽であることも手伝って、長女も僕もどうしても眠くなる。技術的に素晴らしいと思えるものでも、少し時間がたつと眠くなる。そこまでは、まあ、こういう高校なんだな、という印象で、ただ一つ、ポピュラー音楽の歴史も学ぶ学科があるのにはびっくりであった。しかも、楽器メーカーとタイアップのような形で資格取得のために学ぶ部分を併せ持つというところは、今までの高校の常識からは考えられないくらいで、うらやましいなと感じた。

　そのあと、簡単な面接が五分程度あったが、特になにも質問するようなこともなく終わった。そして、肝心のホルンのレッスン。この学校は、練習室がたくさんある。案内された部屋には、古いシングルホルンが飾ってあって、まさにホルンの先生の部屋、といった感じである。レッスンが始まると、状況は一変した。バイタリティあふれる先生で、次から次へと、娘のホルンを聴いて課題を出してくれる。それに対して、ある程度応えることのできる娘は、短期間ではあるが師匠に教わっているおかげで反応が早い。

　有意義な３０分だった。外に出て、お義父さんに電話して迎えを待つ間、長女と話す。「おまえにはやっぱり、厳しい先生が合いそうだな」と言うと、「そうだね」と娘。「私の周りはよい先生ばかり」とも言う。３か月前には考えられなかった状況になりつつある。

　問題は、学費と距離である。一人娘ならなんとでもなるが、あとに４人が控える。大学のことまで考えると、学費は重要な問題だ。距離は、まあ、何とかなるが、チャリ電チャリという方法が一番安上がりだろう。３０分自転車に乗って、電車で１０分、もう一度自転車で１５分と言ったところだろう。公立高校ならば、自転車で１時間強だから、通勤費はたまの送り迎えのガソリン代だけになる。学費は比較するまでもない。しかも、高校無償化も消え去ろうとしている。

　ある野菜のお客さんが話した言葉がよみがえる。「チャンスを子供が生かせるようになればいいけれど、なかなかねー。親は見ているだけだけど、チャンスの芽を摘み取るようなことはしちゃいかんよ、ね」と。痛い言葉である。親がチャンスの芽を摘み取ってしまうかもしれない、その決断を数ヵ月後に控えている。高校受験は、親の問題か？

2011年8月18日　寺田潤史

バックナンバーへ

ご意見、ご感想、お問い合わせは、下記よりどうぞお寄せください。

★　ひらく農園の野菜の入手方法

☆　このページの最初に戻る